二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 彼が黒い悪魔と呼んでいた馬のいた場所はからっぽだった。荒れ狂った雄牛に乗るために使うというズボンを着込んだくらいだから、当然、ダグラスはその馬に乗って出ていったはずだ。

 乗馬って、どのくらいの時間するものなんだろう……?
 二時間も帰ってこないのは普通なの?

 ただ単に存在を忘れられた可能性もあるが、仕事を頼んだ素人を二時間も厩舎に放っておくものだろうか?

(もし……事故とかだったら? 落馬して怪我をしたとか……なにか凶暴な野獣に遭遇したとか?)

 その可能性を慮ると、乃亜は居ても立ってもいられなくなった。
 つい二時間前、当のダグラス本人に火器を持っていない限り危険に近寄るなと注意されたのも忘れて、乃亜はダグラスが出ていった厩舎の裏口から外へ出た。

 熱い日光が地面を焦がすように降り注いでいる。

 コロラドは、たとえばテキサスのような最南部に比べれば、だいぶ涼しいと聞いた。なんといっても冬はスキーリゾートもあるのだ。
 東京と比べても湿度が低いぶん、過ごしやすいかもしれない。

 でも、あらためてひとり大地に立つと、目の前に広がる広大な牧場の風景に息を飲んだ。
 天と地をふたつに割ったような、はっきりとした地形。足がすくむほど広大な土地。
 遠くに浮かぶように見える山々は日本のものとはまったく違う。
 もっと横に広くて、シンプルで、自然の豊かさや恵みよりも、神への畏怖を抱かせるような迫力を放つもの。

 もし運命が違っていたら、曾祖母がウィリアムと暮らすべきだった場所……。

 しばらく立ち尽くしていると、ひと粒の涙が乃亜の頬をゆっくりと伝った。
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