一年で終わるはずの契約結婚でした 〜離婚まであと一か月、夫が私を離しません〜
「あまり、言い過ぎるのも……どうかと思います。」

 そう口にすると、社長は少し意外そうに眉を上げた。

「なぜ?」

「軽い気持ちで言われているのかと……思ってしまうんです。」

社長は何も言わず、椅子をくるりと回して、私に背を向けた。

その背中が、いつもより大きく見えた。

「社長……?」

「……難しいな。人の気持ちっていうのは。」

低く、独り言のような声。

落ち込んでいるのが、痛いほど分かる。

それでも私は、言葉を飲み込まなかった。

「……でも、私は。」

一瞬、間を置いてから、続ける。

「そんな社長を、魅力的だと思います。」

仕事に真剣で、不器用で、傷ついても誠実でいようとする人。

私は、そういうところに惹かれてしまったのだから。

社長はゆっくりと振り返り、ほんの少しだけ——微笑んだ。

その表情に、胸の奥が、静かに熱を帯びていく。
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