一年で終わるはずの契約結婚でした 〜離婚まであと一か月、夫が私を離しません〜
「……だが、君の利益はどこにある?」

不意に投げかけられた言葉に、息が詰まった。

「えっ?」

「君が得をしないなら、俺だけが救われるなんて、意味がないだろう。」

その言葉に、胸がきゅっと締めつけられる。

「社長……」

「曲がりなりにも結婚するんだ。君のお父さんにも、嘘をつくことになる。」

真剣な声だった。

この人は、どこまでも誠実で、だからこそ残酷だ。

私は、ぎゅっと唇を噛む。

本当の理由なんて、言えない。

——好きだから、なんて。

「……一度でいいから。」

意を決して、言葉を選ぶ。

「社長夫人に、なってみたいんです。」

社長は、何も言わない。

沈黙が、重く落ちる。

「私も……結婚したいんです。」

視線を逸らさず、続けた。

「バツイチになっても、いいから。」

それは嘘ではなかった。

でも、全部でもなかった。
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