一年で終わるはずの契約結婚でした 〜離婚まであと一か月、夫が私を離しません〜
私は、ぎゅっと手に持っているファイルを胸に押し当てた。

それでも——恋はしている。

目の前にいる、相馬社長に。

いつの間にか、冷静沈着で隙のないその横顔が、どこか寂しげに見えるようになっていた。

放っておけない、なんて思ってしまうほどに。

「……恋愛事で、お困りごとなんですか。」

言葉にした瞬間、胸がひくりと鳴った。

もしかして、彼女とのこと?

そう考えただけで、胸の奥がちくりと痛む。

社長は、女性の影を感じさせるような素振りを、これまで一度も見せたことがない。

仕事以外の話をすることもほとんどなく、私生活は徹底して見えないままだった。

それなのに——

この沈黙は、何かを抱えている人のものだ。

私は秘書として、社長の一番近くにいる。

けれど同時に、一人の女として、

この人の心に触れてはいけない場所に、手を伸ばそうとしている。
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