一年で終わるはずの契約結婚でした 〜離婚まであと一か月、夫が私を離しません〜
「……実は、そうなんだ。」

その一言に、胸が跳ねた。

「想いを寄せている女性がいてね。今、口説いてはいるんだが……上手くいかなくて。」

胸の奥が、ちくりと痛む。

——社長、好きな人、いたんだ。

これまで一度もそんな素振りを見せなかったのに。

仕事以外の話をほとんどしない人なのに。

それでも、社長だって一人の男で、恋をするのだと、今さらのように突きつけられる。

「結婚も、考えているんだが……断られてしまってね。」

——結婚。

その言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になった。

社長が、結婚してしまう。私の知らない誰かと。

意識が、少し遠のく。

それでも秘書として、平静を装わなければならない。

「……なんて、断られたんですか?」

ほとんど反射的だった。

秘書としての、決まり文句のような問い。

本当は——知りたくなんて、なかったのに。
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