一年で終わるはずの契約結婚でした 〜離婚まであと一か月、夫が私を離しません〜
「それに……三十五歳でしたら、一番モテる時期じゃないですか。」

そう言うと、社長はふっと、力の抜けたような笑みを浮かべた。

「そうなのか?」

「そうですよ。年上の女性にも、年下の女性にも、いちばん選ばれる年齢です。」

「……年上からも、か。」

その声は、どこか自嘲気味で、社長はまた小さく笑った。

その笑顔が、ひどく弱々しく見えて、胸がきゅっと締めつけられる。

——もしかして。

社長が想っている女性は、年上の人なんだろうか。

そう考えた途端、胸の奥が切なくなった。

私は、知らず知らずのうちに、踏み込んではいけない領域に足を踏み入れている。

「……お相手は、独身なんですか。」

自分でも驚くほど、平静を装った声だった。

秘書としての、ただの確認。そう言い聞かせる。

「ああ。独身だよ。」

その答えを聞いた瞬間、ほっとしてしまった自分が、少し怖かった。

独身。

それだけで、まだ何かが残っているような気がしてしまうから。
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