お兄ちゃんがアイドルとか知りません!!
お兄ちゃんの夢
「…アイドル?」
先に声を発したのは、お母さん。
あまりにも素っ頓狂な声だけど、誰も笑わない。
「アイドルって、あの…」
「うん。歌って踊って、誰かを虜にする、あの」
お兄ちゃんは事前に用意していたらしいスマホを開いて、慣れた手つきでサイトを開く。
毎週金曜日に眺めている画面と、一致している。
「Winter Snow───NEXT ENTERTAINMENTの、新グループです」
流石にふたりも、ネクプロは知っているそうで。
そういえばお母さんなんて、一時期ネクプロのアイドルにハマっていた…気もしなくもない。
「「ネクプロ!?」」
お父さんとお母さんの声が重なる。
「アイドルって…静流…」
「…夢、叶ったんだな」
お兄ちゃんは、アイドルになることが夢だったらしい。
ダンス部にも所属しているし、放課後は毎日のようにカラオケで練習してたとか。
大会での優勝実績だとか、そういうのがないのに…お兄ちゃんは独学でここまで上り詰めた。
「本名でやらないで、『SHIZUKU』って名前で芸能活動していくつもり。
…それでな、伊乃莉。伊乃莉にも話があって」
大人の話だ、とどこか他人事のように思っていた私は、唐突に話しかけられて思わずびっくりする。
「お前も、東京に来ないか?」
…えぇっ!?
…え?