お兄ちゃんがアイドルとか知りません!!
お兄ちゃん、襲来!
「おー伊乃莉、1ヶ月ぶりだな」
頭を撫でられる。
いつものことなのに、一挙一動が気になって仕方がない。
心なしか、いつもよりかっこいい気がするし。
心なしか、わたしの気分も上昇している気がする。
顔がなんとなく熱い。…まるで恋する乙女だ。
「…うん、お正月ぶりだね」
俯きながら笑うと、お兄ちゃんは首を傾げ、「いつもの伊乃莉じゃないじゃん」と呟く。
ああ、嘘も演技もへたっぴだ…。
「立ち話もなんだし、座ってよ。今あったかい紅茶持ってくるし!」
お父さんに会話をパスする。なんとか生き延びた(?)。
ポットに水を注いで、スイッチを入れる。
数分もしないうちにぽこぽこと中で泡が暴れて、熱々のお湯をカップに注いだ。
そういえばお兄ちゃん、この紅茶好きだったんだ…と思いながら、お兄ちゃんのことをあまり覚えていなくてびっくりした。
「はい、どう……」
なにこの、重い空気。
カップを落としそうになるくらい、お父さんとお兄ちゃんは見つめあっている。
ピリッと空気が、また重くなった気がした。
「ごめん、俺言いたいことがあって───」
進路を決める時よりもずっと、真面目な顔をしていた。
いよいよだ、と、ぎゅっと目を瞑る。
お父さんも、その隣にいるお母さんも、どういう表情をしているのだろう。
「俺、アイドルになった」