いい加減こっち見ろよ!〜見た目だけだとフラれ続ける私は、どうやら幼馴染の執着愛に気づいていなかったようです。〜
一章【私の中身はそんなにダメですか?】

1. 外見と中身の相違

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「別れよう」

 秋も深まって、黄色や赤に色づいた葉っぱがはらはらと舞い落ち始めた頃。冷たい空気に無防備な頬を撫でられながら聞いた言葉は、その空気にも劣らぬ冷えたものだった。

 思わずぎゅっと身を縮こめて、耳を疑った。
 あまり気は進まないが、言葉が言葉なだけにもう一度確認しなければなるまい。私は、現在進行形でお付き合いしている彼に、おずおずと聞き返した。

「....今、なんて?」

「....ごめん。八重は、俺なんかよりもっといい相手がいると思う」

 けれど、やっぱり聞き間違いではなく。本当の本当に、今、自分は別れ話を切り出されていた。

「なに、言ってるの?そんなことないわよ。やだ、変な冗談やめてよ」

 はは、と渇いた笑いを浮かべる。
 今度こそ。次の相手こそ、真実(ほんもの)だと思ったのにーー。

「...冗談じゃなくて、本気で」

「.....本気って....な、なんで?この間まで、可愛い可愛いって言ってくれてたじゃない。急に意味わかんないよ」

「....あー、もうめんどくせぇな」

「え....」

 現実が受け入れられず食い下がると、ついに彼から本音がこぼれ落ちた。さっきまでしゅんと申し訳なさげに下がっていた眉は、今度はこちらをバカにするみたいに歪んだ線を描く。

「だから、八重の見た目は確かに可愛いよ。俺の好みど真ん中だし。でもさぁ....」

「...........」

「その見た目で、その中身って....それじゃ、まるで詐欺じゃん?想像してたイメージと違いすぎて、戸惑うっていうか、冷めるっていうか。とにかく、誰だって八重の性格知ったら、外見と落差ありすぎて引くって」

「引く....」

 あまりの衝撃に、言葉を繰り返してしまった。

「....そ。まぁ、そういうことだから。ごめん、俺、もっと控えめで女の子らしい子が好みなんだわ。....じゃ、元気でな」

 去っていく背中を呆然と見つめる。
 走馬灯のように浮かんでくるのは、今言われた言葉の数々と、またもや同じ結果に終わった今までの恋愛の終幕場面だった。

「.....ふ、ふふふ。《《また》》か」

 私の見た目はいいらしい。今まで染めたことのない背中まで伸びるストレートの髪の毛は艶々指通りが良く、ぱつんと切られた前髪からのぞく優しげな眉に、長いまつげに覆われた少し垂れた上品な目元、黒い瞳。鼻筋の通った鼻、ふっくらさくらんぼみたいな赤い唇。肌はつるりと白く綺麗で、外見だけ見ると儚く清楚に見えてしまう。
 服装は、パンツスタイルだったり、ワンピースだったり。その日によって違うし、赤色の小物や鞄がお気に入りで、紺や白を好みそうな清楚系かと言われると違っているのに。
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