いい加減こっち見ろよ!〜見た目だけだとフラれ続ける私は、どうやら幼馴染の執着愛に気づいていなかったようです。〜

4. イルミナージュ

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 カランカラン。

「いらっしゃいませ~。あら?一生君に、八重ちゃん。今日も来てくれたのね。嬉しいわ~」

 オレンジ色のあかりが漏れるドアをくぐって中に入ると、古風な鐘の音と耳馴染みのある明るい声が迎えてくれた。

「磯村さん、こんばんは」

「こんばんは...」

 先に入った一生に手を引かれて中に入る。
 よく見たら泣いていたのがバレてしまいそうなぐちゃぐちゃな顔を、一生の背中に半分隠しながらペコリと挨拶した。

「ふふ、二人はいつも仲良しね~。どうぞ、いつもの席空いてるわよ~」

 嬉しそうに店内を指し示して、水やおしぼりを準備し始めたのは、店長の磯村さん。

 特徴的な話し方をしているけれど男性で、体つきはどちらかというとゴツい感じ。服を着ていてもわかる厚い胸板に、ムキムキの筋肉がついた太い腕。だからなのか、暑がりなのかはわからないが、いつも半袖なのもトレードマーク。もちろん、寒い冬でもだ。
 キリッとした目元や凛々しい眉と、涼しげなイケメンさんで、肩までの茶色い髪を後ろでひとつにまとめている。

「何にするか決まったら呼んでね~」

「ありがとうございます」

 いつもの席、お店の一番奥のテーブル席に腰を下ろす。すぐにメニュー表やおしぼりなどを持ってきてくれた磯村さんは、にっこりしてから離れていった。

 俯けていた顔をまじまじと見られることもなく、少しホッとした。笑うような人じゃないけれど、顔馴染みの人物に泣いてメイクが崩れた顔を見られるのは、恥ずかしい。もちろん一生ならいいってわけじゃないけれど、もう幾度となく見られているし、今更感があって気にしなくなった。

「ん。今月のパフェ、めっちゃ美味しそうだぞ」

「えっ、どれどれ?」

 さっとメニューを開いた一生が、私が食べたいと言っていたパフェのページをめくってくれた。

「うっわ~、やばい!これ、絶対私の大好きなやつだ~。これにする!」

「はは、よし。これ頼むか。他はいいのか?」

「うーん、パフェ食べてから、ごはんも食べたくなるかも....」

「だな。じゃ、とりあえずパフェ頼んで、その後食べられそうなら好きなの注文するか」

「うん!」

「めっちゃ元気だな。パフェパワーおそるべし」

「えへへ~」

 早速、磯村さんにパフェを二人分注文して、私は視線を周りへと滑らせる。

 ここは、私たちが高校生の頃から通う個人経営のファミレス・『イルミナージュ』だ。

 大手のチェーン店と違って、テーブル席が7席ほどとこじんまりした店内は、どこか懐かしいレトロな雰囲気。

 アンティーク調のランプや味のある木のテーブルや椅子、深緑色の壁紙。全体的に茶色や落ち着いた色味でまとめられているが、暗さは一切なく、むしろあたたかみが溢れている。

 窓の上部がステンドグラスになっていて、昼間は外から差し込む陽が床にカラフルな光を落としていたり。静かな音量で常に流れている柔らかな音楽も、そのあたたかみを彩っているのかもしれない。

 あとは、店長やスタッフさんの人柄。スタッフさんは数人いるけど、いつも居るのは店長の磯村さんと、アルバイトの小野村 琴美ちゃんの二人で、だいたい夜は磯村さんがひとりで回していたりする。「うち、私一人でも回せるくらい、夜はお客さんが少ないのよね~」と、この間、笑いながら言っていた。
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