婚約者にバカにされ続けた侯爵令嬢が「ざまぁ」するに至るまで
 デザートを食べ終えたあと、ミラジェーンはエースにエスコートされて執務室へと向かった。

 その途中、オリン公爵と遭遇した。


「オリン公爵様、ご無沙汰しております」


 ミラジェーンはエースの腕から手を離そうとしたが、エースはそれを掴んで離さなかった。


「……これはこれは、エース殿下、ミラ嬢。ずいぶん親しくしていらっしゃるのだね」

「ええ」


 エースは一歩前へ出て、ミラジェーンを背にかばった。


「俺は、有能な人物を蔑ろにするような愚かな教育は受けておりませんので」

「それは……どうも、誤解が生じているようですな」

「卿のおっしゃる『誤解』が、どちらにとっての誤解であるかは確認が必要かと。いずれにせよ、俺はニーズヘッグの血を引く者ですので」

「で、殿下……?」


 ミラジェーンは話についていけず、落ち着かない様子でエースの腕を引いた。


「ああ、すまないね、ミラ。午後も仕事が山積みだろう? また夕方に菓子を持っていくよ。では公爵、忙しいのでこれで失礼するよ」

「失礼いたします」


 エースはオリン公爵の返事を待たずに歩き出した。

 ミラジェーンは慌てて会釈だけして、エースについて行った。

 執務室の扉の前で、エースはようやく立ち止まった。


「じゃあまた、午後も頑張って」

「はあ……殿下、オリン公爵と何かありましたの?」

「んー、公爵とではないのだけど……秘密」


 エースは執務室の扉を開けるとミラジェーンを中に入れ、笑顔で手を振りながら扉を閉めた。

 またもやミラジェーンは取り残され、呆然とするしかなかった。
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