婚約者にバカにされ続けた侯爵令嬢が「ざまぁ」するに至るまで
「すぐには、ね。でもまあ大丈夫。少なくともオリン公爵家には大ダメージだ」

「別にオリン公爵に恨みはございませんけれど」

「恨んだ方がいい」

「そうなんですの?」


 エースは肩を竦めて遠くを見た。

 ミラジェーンが視線を追うと、その先には黄色い百合が咲いていた。


「自身の監督不行き届きの尻拭いをきみにさせようとしたのだからね。挙げ句、息子のこの有様を止められず、オリン公爵家の評判を失墜させた。公爵家当主としての資質が問われる。誰が問わずとも、この俺が問う」

「殿下」

「なんだい」

「お怒りでいらっしゃいますの?」

「怒っているよ、とてもね」


 ミラジェーンは目を細めてエースを見つめた。

 エースは今までと違うミラジェーンの反応に目を見開いた。

 しかし彼女は何も言わずに立ち上がった。


「ところで、今は何時でしょうか」

「そろそろおやつ時でございます」


 秘書官が告げると、ミラジェーンは顔を青くした。


「まあ、わたくし、午後の仕事を失念しておりましたわ」

「大丈夫です、お嬢様」


 ミラジェーンの侍女が微笑んだ。


「先ほどお茶をお持ちした際に時間がかかると財務官様方にお伝えしてあります」

「ありがとう。さすがだわ」

「とんでもない。話もまとまったようですし、お茶とお菓子をお持ちしましょう」

「そうしよう」


 エースも立ち上がった。


「軽く作戦会議でもしてから仕事に戻ってくれ。ある程度方針を固めないと、仕事にも手がつかないだろう?」

「ありがとうございます。そうさせてください」


 ミラジェーンは来たときよりもずっと軽い足取りで、温室の入り口にあるテーブルへ向かった。

***

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