きっと、夏のこと
プロローグ
大学4年の卒業式。
式の後、私は思い出の場所へ向かった。
外壁だけ建て替えられた旧教育棟の一角。
白く新しい壁の中で、そこだけが取り残されたみたいに古かった。
錆びた扉。
取っ手の塗装は剥がれ、何度も触られた跡が残っている。
入ってもないのに少し埃っぽい空気を感じて身震いをする。
タバコと、甘い香水が混じった、あの匂い。
ふっと笑いながら、私はその前を通り過ぎた。
晴天のなか、私の足取りは軽かった。