きっと、夏のこと
第一話 高校二年生
高校二年生の初日。
新しいネクタイ。
クラス替え。
張り替えられた座席表と、形だけの係決め。
浮かれる声が教室を満たしていく中で、私の名前だけが、まだどこにも居場所を見つけられずにいた。
黒板に向かって立つ、見覚えのない担任。
チョークが擦れる音が、
この一年の長さを、先に教えられたみたいで、やけに長く続く。
その音を聞きながら、私はなぜか、
「また一年が始まる」という事実よりも、「また何も起こらない一年かもしれない」
という予感のほうを先に思ってしまった。
私の席は、前から三番目の窓側だった。
教室の真ん中でも、端でもない。
先生の声はちゃんと届くけど、窓の外の空も、同じくらい近い。
片耳だけイヤホンをつける。
音楽が流れ始めると、教室のざわめきは少しだけ遠くなる。
そのときはまだ、この席から始まる夏が、
私の時間を、あんなふうに変えるなんて知らなかった。