きっと、夏のこと

それからの一日、私の心臓はせわしなかった。


急に自分のまわりから音が消えたみたいに、カンカンとうるさいチョークの音まで私の鼓動に吸い取られていった。


初めての感覚だった。







昼休みの彼女とイヤホン分け合って、お気に入りの曲を聴く時間。


「今日はスマホ忘れちゃった」


なんてごまかして、二日連続で彼女のお気に入りの曲を聴いた。





まったく何も聞こえてこない気がした。


落ちサビに入って、突然聞こえたフレーズ。


ささやくみたいに





『ずっと前の思い出は、そこに置いたままで。


もう一度は生き返れない。 


ばいばい』







その言葉に、一生懸命知らないふりをした。


歌の世界の話は、私には当てはまらないって信じた。
< 27 / 89 >

この作品をシェア

pagetop