きっと、夏のこと

「先生に呼ばれたから言ってくる」






彼女が去ってから私はLINEを開いて久しぶりにあの名前を探した。


まるで埃が当たったかのような偶然さを装って初めてのトーク画面を開く。


牧田さんの声が今にも聞こえてくるような気がした。









何度も何度も書き直して、


書いては消した。


『お久しぶりです。学部の選択に悩んでいて、もしよければアドバイスいただきたいです。』



あの時の牧田さんの言葉をまるで偶然思い出したみたいに。


そんな’偶然’を私は一番信じていた。


ちょっと無機質な気がして、ビックリマークを急いでつけた。








返信なんて何でもよかった。








牧田さんとの距離が、あの日みたいに近くなった気がして、


急に恥ずかしくなって急いでスマホをしまった。


お待たせって帰ってきた彼女は、いつもよりピンと伸びた私の背筋に気づかなかった。
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