きっと、夏のこと
ガラッと開いた扉、思わず後ろを向く。
甘い匂いがふわっと香って、牧田さんだって確信した。
「おまたせ、遅くなってごめんね」
「全然待ってないです!」
「4限に振替授業入っちゃってさ。3限の時間だけなんだけど、」
なんて申し訳なさそうにいう牧田さん。
「十分です、わざわざありがとうございます。」
なんていいながら、タイムリミットの砂時計が落ち始めたのを感じた。
牧田さんとは本当に受験とか進路の話ばっかりした。
いつのまにか時間が過ぎていた。
「門まで送ってあげられなくてごめんね」
なんていう牧田さんは優しくて、
私の頬は重力を知らないみたいに上がり続けた。
「いえいえ、むしろわざわざ時間作ってくださってありがとうございました!」
「また大学おいでよ、勉強のこととか教えるよ」
力強く頷く私に、牧田さんはふにゃって感じで笑った。
何度も手元のスマホを見ながら急いで去っていく牧田さんの言葉を
私は馬鹿みたいに、信じていた。