きっと、夏のこと

「なぁ、」


急に声をかけられて、ビクッとする。


ヤスはそんな私に怪訝そうな顔をする。


「まっきーさん、知り合い?」

「なんで?」

「いやなんか、知り合いっぽいから」

「まぁ」

「何繋がり?」

「いろいろ」


イベントでただ出会っただけなんてそんな薄い関係だなんて言えなかった。


まるで過去になんかあったみたいな含みのある表現で誤魔化した。


「あっそ、」


私たちが話したのは初めてなのに、彼はなんだか不機嫌そうだった。


その後どれくらいの練習したかは分からないけど、私たちはお互い無言で練習していた。


むしろ、お互いのギターの音がうるさいみたいな険悪さがあった。


ガラって教室の扉が開いてわたしは、急いで顔を作った。


「まだ練習してたんだ、えらいね」


嬉しそうな牧田さんの顔を見て、私も嬉しくなった。


牧田さんが戻ってきてくれて、私たちのことを覚えてくれたのが嬉しかった。


「あの、明日も教えてもらいたいです」

「いいよ、練習しよっか」


後輩の面倒見が悪いって本当なのかなって思った。


私にだけ優しい牧田さんを少し信じてみたくなった。




そして、その優しさを分け合ってるヤスが気に食わなかった。

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