きっと、夏のこと
牧田さんの本は新品かというばかりに綺麗だった。
どこかに『牧田』って署名してあって、私と噂になればいいのにとか一瞬思った。
いや、って首を振って、牧田さんの迷惑だけは嫌だって思って冷静を保つ。
「これ、牧田さんに貸してもらったんだ、ギターの本」
いつのまにかヤスに自慢していた。
「へー」
目を細めるヤスに私が何を考えているかわかってしまいそうで少し後悔する。
「まっきーさんのこと好きなの?」
そう聞かれないように、私と牧田さんの関係を私が壊さないように。
一生懸命だった。
「俺もその本もってる」
意外とまっすぐなヤスの言葉に、えって拍子抜けした。
スタスタと遠ざかっていくヤスの後ろ姿を私は追いかけなかった。