バレンタイン

「バレンタイン、渡したいんだけどどーしよ・・・」
「直接、バレンタイン渡したいんだけど、いつ空いてる?って聞けばいいじゃん!」
けど、そんな簡単に言えないよ。話せるだけですっごく嬉しいのに。なのに。
「素直に言わないと、他の子に取られちゃうよ!ほらモテそうだし!」
ええぇ。そうかな。でもかっこいいからモテるのもわかるけど。
「そうかなぁ・・・」
校庭を見るけれど春はもう帰っていて、部活一緒の結(ゆう)だった。
「やっぱいないや・・・」
と呟いていて、愛が結と話していた。結も誰かにバレンタインあげるそうで、私は
「誰にあげるの?」
聞いてみたけど、くるみが言ってくれたら言うと言われた。クラスの人かな、応援したいな。そう思って、
「私の隣の隣の席の人。」
というと、結は
「え、春?うちも。」

その一言を理解するのができなかった。でもすっと頭に入ってきて、私は不安な気持ちをかき消すかのように笑った。
「こんなにたくさん人いるのにまさかかぶる!?」
「w」
そう二人で笑いあった。
「私、結のこと応援してる!
 お互い頑張ろう!」
「うん。」
心のなかでは、正直混乱していた。


その後、私は通学路で聞く!と愛に宣言し、帰った。次の日は祝日で休みで、一人考えていた。結もチョコを渡す。私も渡す。私達は同じ人に渡す。けれどそれはどちらか、もしくは両方の恋が叶わないということを示している。もし、私が振られたら、いや告白するつもりはないけれど。チョコを渡す=好きとそう繋がっているこの世界は。天然で、優しくて鈍感な君でも、流石に気がついてしまうよね。結はメッセージで渡したいんだけど、いつ空いてる?と聞くって言ってたな。ずるい。メッセージは簡単に送れる。勇気を出さなくても、さり気なく言える。ずるいよ。結。メッセージは顔見れないから、勇気を出さなくていいし。本当に好きなら、直接言えばいいのに。私のほうが好きなのに。私のほうが・・・。私がクラスの女子に、友達に春が好きって伝えたら、協力してくれる流れを作ったら、結は諦めてくれるかな。
「っ。」
ああ、まただ。また、嫌な自分がいる。人のせいにして、人のこと悪く言って、自分のほうがって。自分が有利になる流れを作ろうとか。そういうのやめにしたいと思ってるのに。””結だったら勝てるかもしれない””そう思ってる私がいて。私は、私はっ。その時点で、私は・・・だめなのに。結は、きっとそんな事考えていないのに。なのに。結も春が好き。その事実が重くて。苦しくて。どんどん視界がぼやけていった。涙が止まらなくて、家族に心配かけたくなくて家を出た。家の近くの公園のブランコに乗って。そういえばここで結と遊んだなって思い出して。結と会ったのは幼稚園の頃で、仲良くなって。小学生の時も毎年、年賀状を送り合っていた。中学で再会した時、嬉しかった。推しの話をしてくれて。話を聞いてくれて。頼ってくれて。挨拶してくれて。私にとってはあたり前のことがすっごく嬉しくて。友達の好きな人と、私の好きな人がかぶるなんてそんなこと漫画の中でしかないと思っていた。けど、でも。私、春のことが好きだ。でも結もおんなじ気持ちだった。どうしたらいいか。答えなんて一つしかない。うん。大丈夫。全部、なかったことにする。涙を拭いて顔を上げる。春が私のことを好きになったり、付き合うなんて想像できない。それに、私の恋は、結を傷つけてまで叶えたいものじゃない。春のことが好きだよ。でもそれと同じくらい、結や愛、美沙、桃。全員が大切で。”友情”と”恋”は同じくらい大切なの。結のこと、私は心の底から好きで、結は違うかもしれないけど。かけがえのない大切な人で。だから、バレンタインのチョコは、渡さない。それでいい。チョコを渡して、結と気まずくなるくらいなら。渡さないほうが、ましだ。だから。私は、チョコを渡さないことを選ぶ。結に聞かなきゃよかった。そう思うけど、それでも結は同じ人でも教えてくれた。「春だよ」って私が言ったあとに「私はね、違う人」って言うこともできたのに。正直に教えてくれた。明日、学校であったら気まずいけど、
「おはよ」そう言えればいいな。愛に相談したり、隣のクラスのみっちゃんにも相談した。バレンタインの材料を買いに行く時、美沙にも相談した。相談に乗ってくれた人たちになんて言えばいいかな。


もし学校で結と春が話していたら、普通に笑っていられるかな。結がチョコ渡して、春とうまく言っても、私は笑っていられるかな。もし、バレンタインをあげたら喜んでくれたのかな。あげたい。あげられない。あげたい。コロコロ変わる私の心。春と結、両方大切だから。春も同じクラスの女子から二人もバレンタインもらったら気まずいじゃん。困ってしまうでしょ?
私は春を困らせたくない。いつもの笑顔が好きなんだよ。いつも優しく声をかけてくれるところが好きなの。その関係を崩したくない。ああ、この恋心を、消してしまえたら。そしたらどんなに楽なんだろうっ。ああ、結はいいなぁ。頑張れて。
”中学は彼女とかはいらない”
彼女欲しいの?とか聞いたらそう返ってくるのに。失恋したのとおんなじくらい辛いはずなのに。まだまだ頑張れて、いいなぁ。ずるいなぁ。今更、”私はずっと好きだった。”なんて、”応援できない”なんて、言えるわけない。このまま応援するしかないのに。先に私が言えば、私が、春のこと相談できたのかなって。春のこと好きなのに。結のこと好きなのに。結のことを考えることすら苦しくなる。台所で友チョコを作る。無意識で1人分多くなってしまって、春にあげたい、そう思ってる。残った一人分は、他の子にあげよう。ベッドに飛び込む。
「春のこと好きっ!大、好きっなのに、なんで、おんなじ人をっ!」
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