春
1章
桜が降っている。そう直感的に感じたのは急に風が吹いて桜の花弁が降ってきたからだ。大量に。
「もう、春なんだね。」
私はまだ冬のままなのに。心はまだ”春”を受け入れられていないのに…。あれは2020年。中学校生活2年目もそろそろ終わる1月のことだった。
*
中学二年の最後の思い出作り。それに伴い行われる校外学習の班を決める席替えがあった
校外学習なんて大体適当でいい。けれどみんな仲のいい友達と行きたいと心のどこかでは思っている。だから、私の班は少し不安だ。だって、私の班の女子はみんな”仲の良い子と離れてしまった”から。けれど幸いだったのは私の席が教室の一番端の窓側の班。冬は日差しがそこにだけ差し込むから温かい。けれど冬は嫌いだ。寒くて寂しさも雪と一緒に積もっていくから。早く春が私を迎えに来てくれればいいのに。暖かい春が私のもとに。日差しが差し込むという少しの喜びだけを抱いて、社交辞令を始める。
「後ろは…詩で斜め後ろは彩なの!?やったぁ!」
なんて無邪気にバカで何も裏がないように演じる。
「うん、よろしく!!私も嬉しい!」
そう屈託のない笑顔で返す詩、その笑顔はきっと裏表がなく嘘偽りもない。その事実に少し胸が痛くなった。私はこんなに裏表ありますって比べられているみたいで。
「え!二人一緒!やった!」
彩は嬉しそうに言ったあと続けた。
「でも最悪ー!!!夏と離れちゃったし!!」
なんて、ぐちを大きい声で叫ばないでほしい。だって私達じゃないほうが良かったと捉える人もいるから。けれど彩は正直で可愛くてそんな所が良い。私も本当のところ、この班は嫌。一番仲のいいグループの美沙と桃の3人グループだったのに、私だけ離れてしまったから。3人は2と1に別れちゃうのは知っている。でもだからって。
「ま、しょうがないよ!てかてかこの班窓側だしなんかあたりじゃない?」
詩がポジティブに感情を可愛く出す。案外詩と彩は相性がいいのかもしれない。彩の素直さときれいさを持つ。その二人がいるなか私はただのモブだ。美しさも可愛げもましてや素直でもポジティブでもない。最も少女漫画のヒロインからかけ離れている。けれど
「確かに!この時期日差しが入ってくるから嬉しい!」
と私はその少しの幸せに飛びつくことが精一杯だった。本当は一番窓際で外をみてこの現実から逃げたかったけれど。なんて他愛もない話を同じ班になった詩、彩とする。わざと裏を作っているわけじゃない。ただ何事も愛想が大切で私はあまり得意ではないから自分の得意な演じることで隠すしかない。
「でもこの班楽しそうだし!このメンバーでクラス1の思いで作ろ!」
とぱっと表情を変えた。彩は切り替えが早い。それがすごいと思った。私はいつまでも美沙、桃と離れてしまったことを引きずってしまう。
「5人班だし仲良く慣れそうだよね〜」
私はそうつぶやきながら周りを見る。私達は女子だけで小さな世界を作って話をつづける。同じ班になった男子2人は仲が良い二人だったけれど隣の席の崇は机に突っ伏してて寝ているし、私が狙っていた後ろから2番目の窓のすぐとなりに座っている春は文庫本に集中している。わたしたちの班だけではなく他の班も女子はなんとなく会話を交わしていた。けれど男子はあまり会話もしていない。男子たちは女子ほど社交辞令を必要としていないかもしれない。そのドライで生きやすそうな雰囲気が少し羨ましいとも思ってしまった。
班で話してていいですよという先生の声を聞き自己紹介しよう!と彩が提案した。女子三人が終わり男子へと回る。
「えっと〜俺、崇!みんなからしゅうってよばれてる!ここの班はほぼみんなと話したことあるよな!校外学習楽しも!」
なんて陽キャだなぁとどこかで俯瞰しながら私はいつものよろしくね〜と嘘の笑みを浮かべた。
「俺、春。よろ」
崇の自己紹介とは裏腹に春はとてつもなく短かった。春は掴み所がない男の子だと何度も思った。その度かかわらないようにしようと思った。優しいし、スポーツも勉強もできる。ただいつもやんわりと言葉を返すから本心を隠しているように見えてあまり話そうとも思わなかった。自己紹介を終えて私と春以外の3人で他愛のない話が進んでいく。私はそんな現状を見て、この班で校外学習にいかないといけないという不安に襲われた。みんなはすぐに切り替えられるのに、私だけいつまでも立ち止まっている。また置いていかれる。そう思ったとき寒さで痛む手のような感覚が胸に走った。その一方で私と仲が良い美沙と桃は同じ班になって班員みんなで仲良さそうに話していてもやりとした。
少し私の中では班替えについて整理できていなくて、けれども時の流れは過ぎていった。
班を変えて一週間。桃と美沙とは一緒に行動するけれど校外学習の話になるとついていけない。けれど今更他の子達と一緒に行動するのは難しい。少しもやもやしながらも一緒に行動している私。私、これでいいんだっけ。我慢してまで一緒にいないとだめ?そう思った時授業のスタートの合図、ウエストミンスターの鐘が校内に響いた。班内で話し合ってと先生に言われ国語のワークシートについて話す。他にも詩、崇が休みだった。私の班は彩と春の三人だった。
「くるみ、プリント見してくんね?」
春にプリントを渡す。
「どーぞ」
私も!と彩が便乗して頼んでくるからいいよと答えた。
「え、彩、ここ絶対違うよwなんでメロスは走りましたか?に対して
走るの好きだから♡はやばいってw」
「え、でもさくるみもメロスはどんな人ですかってやつ俺は悪が嫌いって書いたけど
友達を売る人って書いてんじゃん」
そう春も云い出して、三人で爆笑した。この班、案外楽しいかも。校外学習のパンフレット作成時間、私は琥珀とペアだったけれど一人で勝手に作り終えてしまい、彩、崇ペアと春、詩ペアの手伝いをしていた。
「春、ここ編集いい?」
「あ、まじ助かるわ。」
そんな会話をしながら気がついた。苦手意識が少し薄れていたから。小学校の頃の男子は馬鹿で、やんちゃで優しいなんて人はいなかった。弟もお兄ちゃんもからかってくるから男子=意地悪なんて考えていたのかもしれない。私のクラスの半分以上はうるさかったり、思春期真っ只中で茶化したり冷やかしたりが通常運行だし。残りの半分はおとなしいか喋んないか、嫌われているか。けれど春は優しいし、裏なんてものを考えている雰囲気もない。
私の勝手なイメージで苦手になっていただけだったのかな。
「ちなみに、ここ、フォント目立つのにしたほうがいいかも」
「ありがと」
不意打ちに笑わないで。そんな優しく。びっくりするじゃない。
「じゃ、詩のほう手伝うから、また!」
なんかテンパってるわたしがいる。
「なんかくるみ、顔赤くない?」
彩が心配するかのように言ってきた。
「え、熱ある?」
春まで。
「ないからっ!」
なんて強くいっちゃって。けれど席替えをしてから春とも彩とも崇とも仲良くなることができて嬉しいなぁ。美沙と桃と離れてしまったけれど、最近はみんなが分かる話をしてくれて、我慢してまで一緒にいなきゃだめ?なんて考えていた私を消したいと思った。こんなにも優しい子達と一緒にいたい、そう思う気持ちが強くなった。
校外学習の日。電車に乗るとすっごく混んでいた。隣に春がいて反対には詩がいた。通勤ラッシュの時間には結構な人がいてどんどん春のほうに押されてしまう。あと少しで肩があたってしまいそうだったけれど発車して当たりそうで当たらない距離を保っていた。揺れる度ふらつく私を、さり気なく支えてくれている詩。本人はそんなつもりなさそうだけれど。
「わっ」
あと一駅で降りるって頃にまた沢山の人が乗ってきて、春のブレザーを掴んでしまった。
「あ、ごめん。」
私がそう言うと
「俺は平気、くるみ、大丈夫?」
って笑いながら言う君に少しときめいちゃったよ。千本鳥居を見る横顔。崇と話している笑顔。崇と彩が二人で喋っている姿。崇と彩、春と琥珀が四人で喋る姿。「青春してるねぇ」って詩と二人で言う。長い長い1日もあと1時間で終わり。科学館で疲れたという春と近くのベンチに座る。
「やばい、この机、めちゃ木のにおいする」
「ここでねてー」
という春。
「疲れた?」
「俺、結構楽しい。だからめちゃ楽しんでるからその分疲れてるのかな」
意外と顔に書いてあること。意外と男前なとこ。一人称が俺ってこと。部活が蹴球部ってこと。意外とよく食べるとこ。自分から女子に触らないってなぞに決めているとこ。意外と乗り物酔いすること。意外と、喋ること。
こんなに知ったのは初めてだよ。私が春のことをたくさん知った分、春は私のこと知ってくれているのかな。校外学習終わって一週間。授業で班内で喋る時話しやすくなったこと。朝私一番乗りだけれど二番目が春で、少し喋ること。テスト範囲やばーって話すこと。体育のあと髪の毛がくるくるしててかわいいところ。春って意外と真面目じゃないところ。こんなに知ってるの私くらいじゃないって思っていると
「くるみー!遊ぼー!」
と誘われた。そう言ってくれるのはクラス1かわいい女の子、愛。昼休み桃、美沙と愛の4人で校庭でバレーボールやったりする。めちゃくちゃいい子で優しくて勉強できてコミュ力高い。みんなに人気で、嫌いって子はいない。
「愛ー。今日もバレーやろ!」
「やるやる!私学校で一番昼休みが楽しみなのー!」
そう笑顔で言う愛がかわいい。最近流行りの曲を口ずさむ。自己肯定感が高くて最近はそういう曲が人気になるんだよねぇ。かわいい、それだけじゃだめ?っていう曲を口ずさんでると私が言うとだめって言われるんだよねって愛がいう。そんなことないから!って本音を言うと「ないない!」て否定する。自分に自信を持ってほしい。すっごく可愛いんだよ。愛はすっごくかわいいんだよって教えてあげたい。朝、話しかけに行くと
「くるみ、少女漫画のヒロインみたい!」
って言ってきてくれて嬉しかったなぁ。でも
「それは愛のことだよ!私なんか、そこらへんにいるモブだよ、モブ」
「そんなことないよー」
って言うけれど、そんなことあるよって思っちゃうの。だってクラスの人ほぼ全員と仲いいじゃない。男の子とも喋れるのすごいと思うなぁ。愛は男子とも仲がよくて春ともよく喋っている。それを見ているとモヤモヤする。愛、可愛いからな。ずるいな。性格良くて、優しくて、勉強できるからな。私は可愛くないし、悪口すっごく言っちゃうし、メイクできないし。勉強もできないし。ずるいなぁ。愛、羨ましいなぁ。愛のこと好きなのに。こんなにドロドロしている気持ちが出て来て。ああ、知られたくないなぁ。こんな私。誰にも見せたくないなぁ。
そんなことを思ったけれどそれ以上に愛とバレーやるの楽しくて、話すの楽しくて、だからあんまりこの気持ちをこれ以上思うこともなかった。ただ一度、そう思ってしまったこと、それだけ、いつか謝りたいと思った。もしも、勝手に嫉妬して羨んでいたことを知られて嫌われたらどうしよう。そう思うこともあってずっと謝れずにいた。いつ謝ろう、そう考えていても愛と仲が悪くなるかもしれないのは嫌で、謝ることもないまま毎日のようにバレーボールをやっている。こんなに卑怯な私を、誰にも知られたくない。そう思ってしまう自分が大嫌いだ。
次の日給食に苦手なお魚が出てきた。
「えー」
春、魚好きかなぁ。あげてもいいかなぁ。
「春、魚いる?」
というとあざすといい、少し嬉しそうにもらってくれて。優しいなぁって思う。
「ありがと。くるみ」
名前を呼んでくれただけで凄くキラキラしてブワーってなる。なんか私、最近変だ。何かあるとすぐ春のこと考えちゃうこと。隣の席の琥珀が休んだ時盗み見れるなんて思ってしまうこと。愛に嫉妬してしまうこと。春ともっと仲良くなりたいって思うこと。
シンガーソングライターの曲を聞く。最近顔出しをして愛とかと喋ったりする。”笑っちゃうくらい貴方が頭から離れてくれないの”その歌詞を見た時、少し共感してしまった。何処かで否定していた。ああ、恋なんだって。気がついてどんどん好きになっていく。
「あのね、少し相談があって、」
そう愛に言う。
「え、なになに。いきなり・・もしかして恋愛?」
春のこと、を愛に伝えると
「えーっ!頑張って!応援してる」
と言われた。
「ごめんっ。私、どっかで愛に嫉妬してて」
ちゃんと謝ることもできた。愛は私を嫌うどころか、「え、ソンナニ仲良くないよ?」とあっけらかんといった。そして放課後。「あのね、少し相談があって、」
そう愛に言う。
「え、なになに。いきなり・・もしかして恋愛?」
春のこと、を愛に伝えると
「えーっ!頑張って!応援してる」
と言われた。
「ごめんっ。私、どっかで愛に嫉妬してて」
ちゃんと謝ることもできた。愛は私を嫌うどころか、「え、ソンナニ仲良くないよ?」とあっけらかんといった。そして放課後。
「バレンタイン、渡したいんだけどどーしよ・・・」
「直接、バレンタイン渡したいんだけど、いつ空いてる?って聞けばいいじゃん!」
けど、そんな簡単に言えないよ。話せるだけですっごく嬉しいのに。なのに。
「素直に言わないと、他の子に取られちゃうよ!ほらモテそうだし!」
ええぇ。そうかな。でもかっこいいからモテるのもわかるけど。
「そうかなぁ・・・」
桜が降っている。そう直感的に感じたのは急に風が吹いて桜の花弁が降ってきたからだ。大量に。
「もう、春なんだね。」
私はまだ冬のままなのに。心はまだ”春”を受け入れられていないのに…。あれは2020年。中学校生活2年目もそろそろ終わる1月のことだった。
*
中学二年の最後の思い出作り。それに伴い行われる校外学習の班を決める席替えがあった
校外学習なんて大体適当でいい。けれどみんな仲のいい友達と行きたいと心のどこかでは思っている。だから、私の班は少し不安だ。だって、私の班の女子はみんな”仲の良い子と離れてしまった”から。けれど幸いだったのは私の席が教室の一番端の窓側の班。冬は日差しがそこにだけ差し込むから温かい。けれど冬は嫌いだ。寒くて寂しさも雪と一緒に積もっていくから。早く春が私を迎えに来てくれればいいのに。暖かい春が私のもとに。日差しが差し込むという少しの喜びだけを抱いて、社交辞令を始める。
「後ろは…詩で斜め後ろは彩なの!?やったぁ!」
なんて無邪気にバカで何も裏がないように演じる。
「うん、よろしく!!私も嬉しい!」
そう屈託のない笑顔で返す詩、その笑顔はきっと裏表がなく嘘偽りもない。その事実に少し胸が痛くなった。私はこんなに裏表ありますって比べられているみたいで。
「え!二人一緒!やった!」
彩は嬉しそうに言ったあと続けた。
「でも最悪ー!!!夏と離れちゃったし!!」
なんて、ぐちを大きい声で叫ばないでほしい。だって私達じゃないほうが良かったと捉える人もいるから。けれど彩は正直で可愛くてそんな所が良い。私も本当のところ、この班は嫌。一番仲のいいグループの美沙と桃の3人グループだったのに、私だけ離れてしまったから。3人は2と1に別れちゃうのは知っている。でもだからって。
「ま、しょうがないよ!てかてかこの班窓側だしなんかあたりじゃない?」
詩がポジティブに感情を可愛く出す。案外詩と彩は相性がいいのかもしれない。彩の素直さときれいさを持つ。その二人がいるなか私はただのモブだ。美しさも可愛げもましてや素直でもポジティブでもない。最も少女漫画のヒロインからかけ離れている。けれど
「確かに!この時期日差しが入ってくるから嬉しい!」
と私はその少しの幸せに飛びつくことが精一杯だった。本当は一番窓際で外をみてこの現実から逃げたかったけれど。なんて他愛もない話を同じ班になった詩、彩とする。わざと裏を作っているわけじゃない。ただ何事も愛想が大切で私はあまり得意ではないから自分の得意な演じることで隠すしかない。
「でもこの班楽しそうだし!このメンバーでクラス1の思いで作ろ!」
とぱっと表情を変えた。彩は切り替えが早い。それがすごいと思った。私はいつまでも美沙、桃と離れてしまったことを引きずってしまう。
「5人班だし仲良く慣れそうだよね〜」
私はそうつぶやきながら周りを見る。私達は女子だけで小さな世界を作って話をつづける。同じ班になった男子2人は仲が良い二人だったけれど隣の席の崇は机に突っ伏してて寝ているし、私が狙っていた後ろから2番目の窓のすぐとなりに座っている春は文庫本に集中している。わたしたちの班だけではなく他の班も女子はなんとなく会話を交わしていた。けれど男子はあまり会話もしていない。男子たちは女子ほど社交辞令を必要としていないかもしれない。そのドライで生きやすそうな雰囲気が少し羨ましいとも思ってしまった。
班で話してていいですよという先生の声を聞き自己紹介しよう!と彩が提案した。女子三人が終わり男子へと回る。
「えっと〜俺、崇!みんなからしゅうってよばれてる!ここの班はほぼみんなと話したことあるよな!校外学習楽しも!」
なんて陽キャだなぁとどこかで俯瞰しながら私はいつものよろしくね〜と嘘の笑みを浮かべた。
「俺、春。よろ」
崇の自己紹介とは裏腹に春はとてつもなく短かった。春は掴み所がない男の子だと何度も思った。その度かかわらないようにしようと思った。優しいし、スポーツも勉強もできる。ただいつもやんわりと言葉を返すから本心を隠しているように見えてあまり話そうとも思わなかった。自己紹介を終えて私と春以外の3人で他愛のない話が進んでいく。私はそんな現状を見て、この班で校外学習にいかないといけないという不安に襲われた。みんなはすぐに切り替えられるのに、私だけいつまでも立ち止まっている。また置いていかれる。そう思ったとき寒さで痛む手のような感覚が胸に走った。その一方で私と仲が良い美沙と桃は同じ班になって班員みんなで仲良さそうに話していてもやりとした。
少し私の中では班替えについて整理できていなくて、けれども時の流れは過ぎていった。
班を変えて一週間。桃と美沙とは一緒に行動するけれど校外学習の話になるとついていけない。けれど今更他の子達と一緒に行動するのは難しい。少しもやもやしながらも一緒に行動している私。私、これでいいんだっけ。我慢してまで一緒にいないとだめ?そう思った時授業のスタートの合図、ウエストミンスターの鐘が校内に響いた。班内で話し合ってと先生に言われ国語のワークシートについて話す。他にも詩、崇が休みだった。私の班は彩と春の三人だった。
「くるみ、プリント見してくんね?」
春にプリントを渡す。
「どーぞ」
私も!と彩が便乗して頼んでくるからいいよと答えた。
「え、彩、ここ絶対違うよwなんでメロスは走りましたか?に対して
走るの好きだから♡はやばいってw」
「え、でもさくるみもメロスはどんな人ですかってやつ俺は悪が嫌いって書いたけど
友達を売る人って書いてんじゃん」
そう春も云い出して、三人で爆笑した。この班、案外楽しいかも。校外学習のパンフレット作成時間、私は琥珀とペアだったけれど一人で勝手に作り終えてしまい、彩、崇ペアと春、詩ペアの手伝いをしていた。
「春、ここ編集いい?」
「あ、まじ助かるわ。」
そんな会話をしながら気がついた。苦手意識が少し薄れていたから。小学校の頃の男子は馬鹿で、やんちゃで優しいなんて人はいなかった。弟もお兄ちゃんもからかってくるから男子=意地悪なんて考えていたのかもしれない。私のクラスの半分以上はうるさかったり、思春期真っ只中で茶化したり冷やかしたりが通常運行だし。残りの半分はおとなしいか喋んないか、嫌われているか。けれど春は優しいし、裏なんてものを考えている雰囲気もない。
私の勝手なイメージで苦手になっていただけだったのかな。
「ちなみに、ここ、フォント目立つのにしたほうがいいかも」
「ありがと」
不意打ちに笑わないで。そんな優しく。びっくりするじゃない。
「じゃ、詩のほう手伝うから、また!」
なんかテンパってるわたしがいる。
「なんかくるみ、顔赤くない?」
彩が心配するかのように言ってきた。
「え、熱ある?」
春まで。
「ないからっ!」
なんて強くいっちゃって。けれど席替えをしてから春とも彩とも崇とも仲良くなることができて嬉しいなぁ。美沙と桃と離れてしまったけれど、最近はみんなが分かる話をしてくれて、我慢してまで一緒にいなきゃだめ?なんて考えていた私を消したいと思った。こんなにも優しい子達と一緒にいたい、そう思う気持ちが強くなった。
校外学習の日。電車に乗るとすっごく混んでいた。隣に春がいて反対には詩がいた。通勤ラッシュの時間には結構な人がいてどんどん春のほうに押されてしまう。あと少しで肩があたってしまいそうだったけれど発車して当たりそうで当たらない距離を保っていた。揺れる度ふらつく私を、さり気なく支えてくれている詩。本人はそんなつもりなさそうだけれど。
「わっ」
あと一駅で降りるって頃にまた沢山の人が乗ってきて、春のブレザーを掴んでしまった。
「あ、ごめん。」
私がそう言うと
「俺は平気、くるみ、大丈夫?」
って笑いながら言う君に少しときめいちゃったよ。千本鳥居を見る横顔。崇と話している笑顔。崇と彩が二人で喋っている姿。崇と彩、春と琥珀が四人で喋る姿。「青春してるねぇ」って詩と二人で言う。長い長い1日もあと1時間で終わり。科学館で疲れたという春と近くのベンチに座る。
「やばい、この机、めちゃ木のにおいする」
「ここでねてー」
という春。
「疲れた?」
「俺、結構楽しい。だからめちゃ楽しんでるからその分疲れてるのかな」
意外と顔に書いてあること。意外と男前なとこ。一人称が俺ってこと。部活が蹴球部ってこと。意外とよく食べるとこ。自分から女子に触らないってなぞに決めているとこ。意外と乗り物酔いすること。意外と、喋ること。
こんなに知ったのは初めてだよ。私が春のことをたくさん知った分、春は私のこと知ってくれているのかな。校外学習終わって一週間。授業で班内で喋る時話しやすくなったこと。朝私一番乗りだけれど二番目が春で、少し喋ること。テスト範囲やばーって話すこと。体育のあと髪の毛がくるくるしててかわいいところ。春って意外と真面目じゃないところ。こんなに知ってるの私くらいじゃないって思っていると
「くるみー!遊ぼー!」
と誘われた。そう言ってくれるのはクラス1かわいい女の子、愛。昼休み桃、美沙と愛の4人で校庭でバレーボールやったりする。めちゃくちゃいい子で優しくて勉強できてコミュ力高い。みんなに人気で、嫌いって子はいない。
「愛ー。今日もバレーやろ!」
「やるやる!私学校で一番昼休みが楽しみなのー!」
そう笑顔で言う愛がかわいい。最近流行りの曲を口ずさむ。自己肯定感が高くて最近はそういう曲が人気になるんだよねぇ。かわいい、それだけじゃだめ?っていう曲を口ずさんでると私が言うとだめって言われるんだよねって愛がいう。そんなことないから!って本音を言うと「ないない!」て否定する。自分に自信を持ってほしい。すっごく可愛いんだよ。愛はすっごくかわいいんだよって教えてあげたい。朝、話しかけに行くと
「くるみ、少女漫画のヒロインみたい!」
って言ってきてくれて嬉しかったなぁ。でも
「それは愛のことだよ!私なんか、そこらへんにいるモブだよ、モブ」
「そんなことないよー」
って言うけれど、そんなことあるよって思っちゃうの。だってクラスの人ほぼ全員と仲いいじゃない。男の子とも喋れるのすごいと思うなぁ。愛は男子とも仲がよくて春ともよく喋っている。それを見ているとモヤモヤする。愛、可愛いからな。ずるいな。性格良くて、優しくて、勉強できるからな。私は可愛くないし、悪口すっごく言っちゃうし、メイクできないし。勉強もできないし。ずるいなぁ。愛、羨ましいなぁ。愛のこと好きなのに。こんなにドロドロしている気持ちが出て来て。ああ、知られたくないなぁ。こんな私。誰にも見せたくないなぁ。
そんなことを思ったけれどそれ以上に愛とバレーやるの楽しくて、話すの楽しくて、だからあんまりこの気持ちをこれ以上思うこともなかった。ただ一度、そう思ってしまったこと、それだけ、いつか謝りたいと思った。もしも、勝手に嫉妬して羨んでいたことを知られて嫌われたらどうしよう。そう思うこともあってずっと謝れずにいた。いつ謝ろう、そう考えていても愛と仲が悪くなるかもしれないのは嫌で、謝ることもないまま毎日のようにバレーボールをやっている。こんなに卑怯な私を、誰にも知られたくない。そう思ってしまう自分が大嫌いだ。
次の日給食に苦手なお魚が出てきた。
「えー」
春、魚好きかなぁ。あげてもいいかなぁ。
「春、魚いる?」
というとあざすといい、少し嬉しそうにもらってくれて。優しいなぁって思う。
「ありがと。くるみ」
名前を呼んでくれただけで凄くキラキラしてブワーってなる。なんか私、最近変だ。何かあるとすぐ春のこと考えちゃうこと。隣の席の琥珀が休んだ時盗み見れるなんて思ってしまうこと。愛に嫉妬してしまうこと。春ともっと仲良くなりたいって思うこと。
シンガーソングライターの曲を聞く。最近顔出しをして愛とかと喋ったりする。”笑っちゃうくらい貴方が頭から離れてくれないの”その歌詞を見た時、少し共感してしまった。何処かで否定していた。ああ、恋なんだって。気がついてどんどん好きになっていく。
「あのね、少し相談があって、」
そう愛に言う。
「え、なになに。いきなり・・もしかして恋愛?」
春のこと、を愛に伝えると
「えーっ!頑張って!応援してる」
と言われた。
「ごめんっ。私、どっかで愛に嫉妬してて」
ちゃんと謝ることもできた。愛は私を嫌うどころか、「え、ソンナニ仲良くないよ?」とあっけらかんといった。そして放課後。「あのね、少し相談があって、」
そう愛に言う。
「え、なになに。いきなり・・もしかして恋愛?」
春のこと、を愛に伝えると
「えーっ!頑張って!応援してる」
と言われた。
「ごめんっ。私、どっかで愛に嫉妬してて」
ちゃんと謝ることもできた。愛は私を嫌うどころか、「え、ソンナニ仲良くないよ?」とあっけらかんといった。そして放課後。
「バレンタイン、渡したいんだけどどーしよ・・・」
「直接、バレンタイン渡したいんだけど、いつ空いてる?って聞けばいいじゃん!」
けど、そんな簡単に言えないよ。話せるだけですっごく嬉しいのに。なのに。
「素直に言わないと、他の子に取られちゃうよ!ほらモテそうだし!」
ええぇ。そうかな。でもかっこいいからモテるのもわかるけど。
「そうかなぁ・・・」