サブキャラ令嬢ですが、神竜王陛下を溺愛させて幸せエンドにします! ~ヤンデレ親友と同盟して、悲恋ルートを全部へし折ります~
演戯は真剣に。
ラウエンシュタイン家の広大な屋敷に帰ると、執事のロベルトを筆頭に、使用人さん達が私を迎えてくれた。最初は慣れなかったけど、ここは割り切るしかないと諦めた。
「お帰りなさいませ、お嬢様。奥方様がお待ちでいらっしゃいます」
「お母様が?」
リリーナにコートを預け、私は屋敷の奥に進むロベルトについていく。この先は、確かお母様お気に入りの薔薇園だ。
「薔薇園にいらっしゃるの?」
「はい」
ロベルトは、必要最低限のことしか答えない。執事さんってそういうものなのかしら。
中庭に通じる扉を開けると、夕日が射し込んだ薔薇園は幻想的に美しい。そこに、お母様──ルイーサ・カルロッタ・ルア・ラウエンシュタイン公爵夫人が佇んでいた。
「お母様?」
「アレクシア。お帰りなさい」
私を見て微笑むと、お母様は数本の薔薇を切り取った。
「あなたの部屋に飾ろうと思ったのだけれど。どの色がよいかしら」
「お母様が選んで下さるなら、どんな色でも嬉しいわ」
元々のアレクシアの好きな色がわからないので、私は無難な答えを返す。お母様は嬉しそうに笑って、薄紅の薔薇を選んでくれた。
「バシュラール侯爵令嬢はお元気だった?」
「ええ。……私の迂闊な言葉で、困らせていないかと心配だったの」
「……そうねえ……盗み聞きなどはしたないこととはいえ、あなたも少し注意が足りなかったわね。お父様はバシュラール侯爵に謝罪なさったし」
「はい。ごめんなさい」
「でも、驚いたあなたの気持ちもわからなくはないから、叱れないわ。……皆、薄々は察していたことでもあるし……」
そう溜息をついたお母様に、私はさりげなく切り出した。
「お母様。エージュがとても心配なの。今日……未来視をしてほしいと頼まれたの」
「未来視を? ……エルウィージュ様の、お生まれのこと?」
「ええ。私に視えるのは未来であって過去ではないわ。そう言ったのだけれど……なら、この件がどう決着するのか知りたいと言われて」
ここで俯いて言葉を切るよう、エージュに演技指導を受けている。俯いて黙った私に、お母様は困った声で先を促した。
「アレクシアは、どうお答えしたの?」
「……同じ結果しか視えなかったの。エージュが……陛下の……」
そっと、忍ばせていた目薬を使って涙を溜める。……結構目に沁みてくれるじゃないのよ、この目薬。さすがエージュの愛用品だわ。
「……アレクシア」
「わ、私、どうしていいのかわからない。エージュは気にしていないと言ってくれたけれど、嘘よ。私達は親友だもの、エージュは強がっているだけだとわかるわ。だけど、エージュ自身が何でもないと言うなら、私は何もできない……!」
言っているうちにノッてきて、私はすらすらと台詞を口にした。うん、ちゃんと涙声になっている。
「お母様、私、どうしたらいいの……あ」
「アレクシア、落ち着いて。お母様はあなたの味方よ」
切り取った薔薇をそのまま打ち捨てて、お母様は私を抱き締めた。薔薇の移り香が、お母様からふわりと薫る。
「……お母様……! エージュが、エージュが死んでしまうわ!」
「アレクシア?」
「今、視えたの。真っ暗な部屋で、エージュが倒れている……嫌よ、こんな未来視は嫌!」
本当に、倒れているエージュの姿が見えた。──臨場感ある台詞になるようにと、実際に倒れてみせてくれたエージュの演出のおかげだ。
「エージュが死んでしまう……私のせいだわ、お母様、私、私……!」
「落ち着いて、アレクシア。個人の未来は視えないと言ったのはあなたよ、だから大丈夫」
「エージュは特別だもの! 私の大事な親友だわ!」
「そうね、では、明日の朝一番に、バシュラール侯爵家に使いを出して、エルウィージュ様のご様子を伺いましょう。ね、だから安心して、落ち着いて」
お母様は、私を宥めるようにそう言うと、ぎゅっと抱き締めた。……この優しいお母様を騙しているのは気が引けるんだけど、私とエージュが目指しているのは悪役令嬢ですから、自己嫌悪と申し訳なさには目を瞑るわ。
「お母様……今夜は一緒に休んで下さる? 私……私、怖くて……」
「ええ、もちろんよ、アレクシア。エルウィージュ様に何事もないとわかるまで、あなたが安心できるまで、お母様が傍にいてあげますからね」
……本当にごめんなさい、お母様……。でも、娘が嫁き遅れるよりはマシだと思って下さい。
「さ、もう泣き止んで……温かいミルクを飲んで、気持ちを落ち着かせなさい」
私の涙を拭ってくれながら、お母様は天女のように優しく美しく微笑みかけてくれた。
「アレクシア。夜が明けたらすぐにバシュラール侯に使いを出す。心配することはない」
お母様から説明を受けたお父様も、私を安心させるように請け合ってくれた。……すみません、今夜0時に自らバシュラール侯爵邸に駆け込む予定です……。
「……はい。ありがとう、お父様。ごめんなさい」
「謝ることはない。それほど、令嬢が心配なのだろう? 大切な友人なら、当然のことだ」
「はい」
エージュは私の参謀で仲間で共犯で……何より、友達だ。本当のことを言える、たった一人の相手。そういう意味では、唯一無二の存在だ。
「ルイーサ。アレクシアのお守りをお願いするよ」
「はい」
「お父様、ひどい!」
私の気持ちを解そうと、お父様が下手な冗談を口にしたので、ちゃんと拗ねてあげました。
「お帰りなさいませ、お嬢様。奥方様がお待ちでいらっしゃいます」
「お母様が?」
リリーナにコートを預け、私は屋敷の奥に進むロベルトについていく。この先は、確かお母様お気に入りの薔薇園だ。
「薔薇園にいらっしゃるの?」
「はい」
ロベルトは、必要最低限のことしか答えない。執事さんってそういうものなのかしら。
中庭に通じる扉を開けると、夕日が射し込んだ薔薇園は幻想的に美しい。そこに、お母様──ルイーサ・カルロッタ・ルア・ラウエンシュタイン公爵夫人が佇んでいた。
「お母様?」
「アレクシア。お帰りなさい」
私を見て微笑むと、お母様は数本の薔薇を切り取った。
「あなたの部屋に飾ろうと思ったのだけれど。どの色がよいかしら」
「お母様が選んで下さるなら、どんな色でも嬉しいわ」
元々のアレクシアの好きな色がわからないので、私は無難な答えを返す。お母様は嬉しそうに笑って、薄紅の薔薇を選んでくれた。
「バシュラール侯爵令嬢はお元気だった?」
「ええ。……私の迂闊な言葉で、困らせていないかと心配だったの」
「……そうねえ……盗み聞きなどはしたないこととはいえ、あなたも少し注意が足りなかったわね。お父様はバシュラール侯爵に謝罪なさったし」
「はい。ごめんなさい」
「でも、驚いたあなたの気持ちもわからなくはないから、叱れないわ。……皆、薄々は察していたことでもあるし……」
そう溜息をついたお母様に、私はさりげなく切り出した。
「お母様。エージュがとても心配なの。今日……未来視をしてほしいと頼まれたの」
「未来視を? ……エルウィージュ様の、お生まれのこと?」
「ええ。私に視えるのは未来であって過去ではないわ。そう言ったのだけれど……なら、この件がどう決着するのか知りたいと言われて」
ここで俯いて言葉を切るよう、エージュに演技指導を受けている。俯いて黙った私に、お母様は困った声で先を促した。
「アレクシアは、どうお答えしたの?」
「……同じ結果しか視えなかったの。エージュが……陛下の……」
そっと、忍ばせていた目薬を使って涙を溜める。……結構目に沁みてくれるじゃないのよ、この目薬。さすがエージュの愛用品だわ。
「……アレクシア」
「わ、私、どうしていいのかわからない。エージュは気にしていないと言ってくれたけれど、嘘よ。私達は親友だもの、エージュは強がっているだけだとわかるわ。だけど、エージュ自身が何でもないと言うなら、私は何もできない……!」
言っているうちにノッてきて、私はすらすらと台詞を口にした。うん、ちゃんと涙声になっている。
「お母様、私、どうしたらいいの……あ」
「アレクシア、落ち着いて。お母様はあなたの味方よ」
切り取った薔薇をそのまま打ち捨てて、お母様は私を抱き締めた。薔薇の移り香が、お母様からふわりと薫る。
「……お母様……! エージュが、エージュが死んでしまうわ!」
「アレクシア?」
「今、視えたの。真っ暗な部屋で、エージュが倒れている……嫌よ、こんな未来視は嫌!」
本当に、倒れているエージュの姿が見えた。──臨場感ある台詞になるようにと、実際に倒れてみせてくれたエージュの演出のおかげだ。
「エージュが死んでしまう……私のせいだわ、お母様、私、私……!」
「落ち着いて、アレクシア。個人の未来は視えないと言ったのはあなたよ、だから大丈夫」
「エージュは特別だもの! 私の大事な親友だわ!」
「そうね、では、明日の朝一番に、バシュラール侯爵家に使いを出して、エルウィージュ様のご様子を伺いましょう。ね、だから安心して、落ち着いて」
お母様は、私を宥めるようにそう言うと、ぎゅっと抱き締めた。……この優しいお母様を騙しているのは気が引けるんだけど、私とエージュが目指しているのは悪役令嬢ですから、自己嫌悪と申し訳なさには目を瞑るわ。
「お母様……今夜は一緒に休んで下さる? 私……私、怖くて……」
「ええ、もちろんよ、アレクシア。エルウィージュ様に何事もないとわかるまで、あなたが安心できるまで、お母様が傍にいてあげますからね」
……本当にごめんなさい、お母様……。でも、娘が嫁き遅れるよりはマシだと思って下さい。
「さ、もう泣き止んで……温かいミルクを飲んで、気持ちを落ち着かせなさい」
私の涙を拭ってくれながら、お母様は天女のように優しく美しく微笑みかけてくれた。
「アレクシア。夜が明けたらすぐにバシュラール侯に使いを出す。心配することはない」
お母様から説明を受けたお父様も、私を安心させるように請け合ってくれた。……すみません、今夜0時に自らバシュラール侯爵邸に駆け込む予定です……。
「……はい。ありがとう、お父様。ごめんなさい」
「謝ることはない。それほど、令嬢が心配なのだろう? 大切な友人なら、当然のことだ」
「はい」
エージュは私の参謀で仲間で共犯で……何より、友達だ。本当のことを言える、たった一人の相手。そういう意味では、唯一無二の存在だ。
「ルイーサ。アレクシアのお守りをお願いするよ」
「はい」
「お父様、ひどい!」
私の気持ちを解そうと、お父様が下手な冗談を口にしたので、ちゃんと拗ねてあげました。