凪渡くん、このままじゃ溶けてしまいます【完全版】
「私は凪渡の幸せが莉帆ちゃんの隣にあるというのなら、応援するわ。……ただ、私でも夫を説得する力はないと思う。夫には夫の正義があるから」

「私たちを応援するということは、凪渡くんが……」

「家を出ることになると?」

私が言い切れない言葉を佳織さんははっきりと言った。


「幸いウチには家を継ぐつもりで頑張っている次男の恒星もいる。夫は凪渡に家を継がせたい気持ちはあるみたいだけど、私はどちらに任せても大丈夫だと思っているわ。それに一番は、家を出て莉帆ちゃんのお父さんを選んだ莉帆ちゃんのお母さんは、いま幸せそうでしょう?」


確かにお母さんは実家での暮らしに慣れていて、今も多くは働けない。

でも、それでもお母さんなりに頑張っていて私を愛してくれている。

お父さんが亡くなってからも、お母さんなりに毎日笑顔で過ごしている。

だから私もお母さんに心配をかけたくないし、バイトがどれだけ忙しくても頑張れるのだ。

そんな私の気持ちを察して、佳織さんは微笑んだ。




「凪渡が幸せだと自信を持って言える場所で頑張って欲しいの」




私の隣で佳織さんの話を聞いている凪渡くんは、何も言わなかった。

何も言わないまま、佳織さんの言葉を一言一言噛み締めるように聞いていた。
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