バッドエンド後の死に戻り転生悪役令嬢は、ヤンデレ皇帝の狂愛を受ける 私が救済の歌姫なんて、聞いてませんわ!
 薄暗い小劇場のステージでスポットライトを浴びて、歌うのは好きだ。
 自分がアイドルや歌手になったような、特別な気分を味わえるから。

 だけど――。
 あの男と出会い、自分が「救済の歌姫」と呼ばれる存在なのだと自覚したあとは、本気で歌うのが怖くなった。

 1ミリでも不愉快な気持ちを胸にいだいて歌声を響かせれば、聞いている人達の心身を乱してしまう。

 ――私の歌を聞いてくださる領民達には、心が洗われるような気持ちをいだいて帰路についてほしい……。

 そう思うからこそ、最後尾で壁に寄りかかって全体を見渡すダグラスは絶対に視界へ入れなかった。

 ――あの人は言葉を発すると残念感が拭えないが、黙っていればかっこいいんだよね……。

 さすがは、創作キャラクターとして生み出されただけのことはある。
 原作通りに私に対する愛を内に秘め続け、一切関わりなく過ごし――。
 一周目のようにジェラルドから婚約破棄を提案されてそれを呑んだあと、颯爽と現れたダグラスに告白された場合、素直に彼を受け入れられていたのだろうか?

 ――それは、なんとも言えないかな……。
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