バッドエンド後の死に戻り転生悪役令嬢は、ヤンデレ皇帝の狂愛を受ける 私が救済の歌姫なんて、聞いてませんわ!
「瑠璃色の瞳があなたを射抜く。物欲しそうな目で私を見てる。この心が壊れる前に、伝えられると信じてる――」

 ルリミカは小さな劇場で、素性を隠して歌を奏でていた。
 全身黒で統一された扇情的なエンパイアドレスを纏い、ヴェールで顔を隠す姿から、彼女は黒の歌姫としてちょっとした有名人になっている。

 ――なぜ、誰も彼女の歌声に特殊能力が秘められていると気づかないんだ?

 あの子の歌は、世界で一番美しいのに――。

「君の歌は、本当に素晴らしい」

 俺は一般客を装い、彼女に接触を試みた。
 ルリミカはその直後、頭を押さえて蹲る。

「あ、悪役令嬢の名前じゃん……!」

 意味不明な言葉をポツリと呟いたあとに見せた彼女の反応は、今まで一度も見たことがない。
 普段ならば「ありがとう」と笑顔で微笑み、さっさとこの劇場を立ち去ってしまうからだ。

 ――何が違うんだ……?

 俺はその答えにたどり着けぬまま、全力で彼女を絡め取りにかかる。
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