【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
 冷たい美貌とでもいうのだろうか、短くした銀の髪に長いまつ毛に囲まれた目は湖のような蒼。

 身体をよく鍛えているのが、服の上からでもよくわかる。

 エメリアはそそとベッドから立ち上がって、完璧な淑女の礼をした。

「陛下、ふつつかものですが本日よりよろしくお願いいたします」

 厳しい礼儀作法や妃教育に耐えてきたのだからこれくらいお茶の子さいさいである。

「……」

 エメリアの挨拶にギルフォードは何も返さない。
 それどころか見てわかるくらい嫌そうな顔だ。

 本来のエメリアならここで戸惑って怯えてしまったことだろう。

 だが、社畜として数々の仕事を同時並行させてきた『エメリア』にはなんということも……いや、やっぱり美形に凄まれるのは怖い。

「これは公爵家と王家との政略的な婚姻だ」
「はい、わかっております」
「お前を愛することは、生涯ない」

 わかっている。ギルフォードは大人しい公爵令嬢エメリアを、ただ自分の政治の道具として政略的に娶っただけ。

(でも、それは妻だけじゃなくて、周りにいる全員でしょうけど)

 誰も愛さない、信用しない氷の皇帝。それが彼だ。

 つまりこの婚姻に一切恋愛感情はない。……エメリア本人を除いて。

(そりゃあこんなお方が夫になったら、箱入りお嬢様は恋をしてしまうわよ)

 だが、愛とかそんなことよりも考えなければならないことがあった。



 大きな問題の筆頭。
 
 それはエメリアが、小説ではほとんど登場しない主人公の実母だということ。

(物語が始まった時には、すでに死んでいるのよね……)

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