憧れのセカイへ!
八月一日、約束の日がとうとうやってきた。
約一ヶ月、葵ちゃんと離れてたくさん考えた。わたしはどうしたいのか、何をやるべきなのか、反省点や改善点、全て。
この気持ちを、葵ちゃんにありのままに話そう。きっと葵ちゃんも同じ気持ちでいてくれているから。
「あ……」
約束していた場所、食堂に着いた。すると葵ちゃんはもう席に座っていた。
何でだろう。少し離れていただけなのに、会うのがこんなに気まずいだなんて。
後ろめたさを感じる。でももう逃げないって決めたから。
わたしは一歩ずつ足を前に出した。
「あ……っ、葵ちゃん!」
「……のぞみ。おはよ」
「おはよう」
「ここ、座って」
そう言われ、わたしは葵ちゃんの前の席に座った。
少し沈黙が続いたけれど、葵ちゃんは先に口を開いてくれた。
「わたしね、のぞみと離れた一ヶ月間、いろいろ考えたんだ。Solatioをどうしたいのか、自分が正すべきところはどこなのか」
「うん。わたしも、同じ」
「わたしはねーーやっぱり、のぞみと一緒に頑張りたい。Solatioとして、ふたりで優勝したい」
葵ちゃん……!
葵ちゃんの瞳は、わたしをまっすぐ見てくれていた。そのことがとても嬉しかった。
「わたしも同じ。葵ちゃんと一緒に頑張りたい、チームコンテストで優勝したい!」
「ありがとう。あんなこと言って、ごめんなさい。わたしはのぞみのパートナーなんだから、冷たく突き放すんじゃなくて、一緒に直していけば良かったんだよね」
「ううん、わたしこそごめんね。葵ちゃんはわたしのためにアドバイスしてくれているのに、アイドルとして何もできてなくて……。これからはスケジュール管理も自分でするし、他の仕事と両立してみせるよ」
「無理だけはお互いしないようにしよう。わたしもお互い間違っているところは改善点を探すようにする」
わたしは、葵ちゃんへ手を差し出した。
「葵ちゃん、これからまた、一緒のチームとしてよろしくお願いします」
「……うん! こちらこそ、のぞみ」
グッ、と力強く握ってくれた。わたしたちの手のなかに、もう二度と切れることない絆が生まれた気がした。
「ねぇのぞみ、せっかくだし今日お出かけしない?」
「え、お出かけ?」
「そう、わたし行きたいところがあるの。もちろんのぞみも気に入ると思うよ」
「え……うん、いいけど」
わたしは葵ちゃんの提案に同意し、着いて行くことにした。
行きたいところってどこだろうか。それにわたしも気に入るって……。
「そうだ、わたしが送ったお便り、気づいてくれた?」
「あ、うん、もちろん! MCの方が読んでくれたよ。まさか葵ちゃんが秘密でお便りを送ってくれてると思わなかったから驚いたよー」
「ふふ、だよね。……あ、着いたよ、ここ」
その建物を見ると、ライブ会場だった。
「誰かのライブ?」
「そう。それはね……光里さん」
「えっ!」
うそ、光里さんのライブ!?
まだ生で見たことがないから、嬉しくてたまらない。
でも光里さんのライブは人気すぎて、チケットは十分で完売すると聞いたことがあるけれど、葵ちゃんはそのチケットを取れたのだろうか。
「なんとね、わたしが定期的にゲストとして出ているラジオのスタッフさんがくれたんだ。そのラジオ時々光里さんも出ているんだけど、ぜひ配ってくれって宣伝されたんだって。二枚貰ったからのぞみも誘おうと思って」
「嬉しい……! 本当にありがとう、葵ちゃん。わたし、光里さんのライブ生で見るの初めてなんだ」
「ふふ、実はわたしも。差し入れのドーナツも買ったし、楽屋に行ってみようか」
「うん!」
葵ちゃんは、光里さんが好きなメープル味のドーナツを数個買ったらしい。
さすが葵ちゃん、ちゃんとリサーチしているなんて。
でも光里さんの楽屋となると緊張してしまう……。
「こんにちは、奥谷葵です」
「月川のぞみです!」
「どうぞー」
失礼します、と言ってドアを開けた。
すると真っ青な綺麗なドレスを着た光里さんがいた。
うわぁ、光里さん、すごく綺麗……!
「こんにちは、光里さん。ラジオのスタッフさんからチケットをいただいて来ました。お招きいただき、誠にありがとうございます。こちらほんのお気持ちですが、ぜひ受け取ってください」
「ご丁寧にありがとう。葵ちゃんのこと知ってるわよ、アイドルを目指して小学生の頃から活動していて、ステージがとても魅力的だった」
「本当ですか……! 覚えていただき光栄です」
葵ちゃんの瞳はキラキラしていた。
まるで光里さんの輝きが映し出されているみたいに。
「のぞみちゃんも来てくれてありがとう。久しぶりだね」
「こちらこそっ、また光里さんにお会いできて嬉しいです!」
「ありがとう。最近ふたりのことよくテレビやラジオで見かけるから、すごいなって思ってるよ。チームコンテストにもふたりで出場するんだよね?」
「はい! 光里さんは出場されないんですか?」
そう聞いてみると、光里さんは頷いた。
「わたしは二月に開催されるトップコンテストで優勝しているから、チームコンテストには出られないの。そういう決まりになっているから……。だから頑張ってね、Solatio」
「えっ、わたしたちのチーム名」
「素敵な名前だから、もちろん覚えたよ。葵ちゃんとのぞみちゃんにとてもぴったりだと思う。そろそろ開演時間だから、また後でね。今日は楽しんでいって」
「はい、ありがとうございました!」
わたしたちは頭を下げ、客席に着いた。
まさか光里さんがSolatioのことを覚えて褒めてくれるなんて……!
今日は葵ちゃんのおかげで、嬉しいことがいっぱいだ。
「みなさん、こんにちは。本日は諏訪光里のライブに来ていただき、ありがとうございます。最後まで楽しんでいってくださいね!」
「光里ちゃーん」
「光里ちゃん頑張ってー!」
「ありがとう。曲は、“近くにある憧れ”」
“気がつくことができなかった
すぐ隣にあったのに
その存在が当たり前と
思っていたんだ
失ってから分かったよ
それは大切なものなんだって
憧れは自分を強くする力に 変わるから
いつも照らしてくれてありがとう
時には別々になるかもしれないけど
いつでも どこでも 憧れに手をかざしているから
これからもよろしくね my shine”
光里さんが歌い終わった瞬間、驚くほど大きな拍手が会場全体に響いた。
すごい、これが光里さんの実力……!
大きく細かいところを踊っていても、歌は一切ブレない。そして笑顔を絶やしていない。
隣に座っている葵ちゃんを見ると、光里さんに夢中になっていた。
わたしは、歌詞と自分を重ねてしまった。
まるでわたしと葵ちゃんのこの一ヶ月間を表しているようだったから。
「のぞみ、光里さんやっぱりすごいね」
「うん、本当に」
「でも、わたしのぞみとなら、いつかあの光に追いつく気がするの。だってのぞみはわたしの光だから」
「うん……! わたしも同じ、葵ちゃんは憧れで、わたしの光」
お互いに目を見つめ合って、強く頷いた。
きっと考えていることは同じだ。
「絶対、チームコンテストで優勝しよう!」
「うん!」
わたしにとって葵ちゃんは、自分を照らしてくれる憧れの光。
その憧れと一緒に、叶えよう、この目標を。
約一ヶ月、葵ちゃんと離れてたくさん考えた。わたしはどうしたいのか、何をやるべきなのか、反省点や改善点、全て。
この気持ちを、葵ちゃんにありのままに話そう。きっと葵ちゃんも同じ気持ちでいてくれているから。
「あ……」
約束していた場所、食堂に着いた。すると葵ちゃんはもう席に座っていた。
何でだろう。少し離れていただけなのに、会うのがこんなに気まずいだなんて。
後ろめたさを感じる。でももう逃げないって決めたから。
わたしは一歩ずつ足を前に出した。
「あ……っ、葵ちゃん!」
「……のぞみ。おはよ」
「おはよう」
「ここ、座って」
そう言われ、わたしは葵ちゃんの前の席に座った。
少し沈黙が続いたけれど、葵ちゃんは先に口を開いてくれた。
「わたしね、のぞみと離れた一ヶ月間、いろいろ考えたんだ。Solatioをどうしたいのか、自分が正すべきところはどこなのか」
「うん。わたしも、同じ」
「わたしはねーーやっぱり、のぞみと一緒に頑張りたい。Solatioとして、ふたりで優勝したい」
葵ちゃん……!
葵ちゃんの瞳は、わたしをまっすぐ見てくれていた。そのことがとても嬉しかった。
「わたしも同じ。葵ちゃんと一緒に頑張りたい、チームコンテストで優勝したい!」
「ありがとう。あんなこと言って、ごめんなさい。わたしはのぞみのパートナーなんだから、冷たく突き放すんじゃなくて、一緒に直していけば良かったんだよね」
「ううん、わたしこそごめんね。葵ちゃんはわたしのためにアドバイスしてくれているのに、アイドルとして何もできてなくて……。これからはスケジュール管理も自分でするし、他の仕事と両立してみせるよ」
「無理だけはお互いしないようにしよう。わたしもお互い間違っているところは改善点を探すようにする」
わたしは、葵ちゃんへ手を差し出した。
「葵ちゃん、これからまた、一緒のチームとしてよろしくお願いします」
「……うん! こちらこそ、のぞみ」
グッ、と力強く握ってくれた。わたしたちの手のなかに、もう二度と切れることない絆が生まれた気がした。
「ねぇのぞみ、せっかくだし今日お出かけしない?」
「え、お出かけ?」
「そう、わたし行きたいところがあるの。もちろんのぞみも気に入ると思うよ」
「え……うん、いいけど」
わたしは葵ちゃんの提案に同意し、着いて行くことにした。
行きたいところってどこだろうか。それにわたしも気に入るって……。
「そうだ、わたしが送ったお便り、気づいてくれた?」
「あ、うん、もちろん! MCの方が読んでくれたよ。まさか葵ちゃんが秘密でお便りを送ってくれてると思わなかったから驚いたよー」
「ふふ、だよね。……あ、着いたよ、ここ」
その建物を見ると、ライブ会場だった。
「誰かのライブ?」
「そう。それはね……光里さん」
「えっ!」
うそ、光里さんのライブ!?
まだ生で見たことがないから、嬉しくてたまらない。
でも光里さんのライブは人気すぎて、チケットは十分で完売すると聞いたことがあるけれど、葵ちゃんはそのチケットを取れたのだろうか。
「なんとね、わたしが定期的にゲストとして出ているラジオのスタッフさんがくれたんだ。そのラジオ時々光里さんも出ているんだけど、ぜひ配ってくれって宣伝されたんだって。二枚貰ったからのぞみも誘おうと思って」
「嬉しい……! 本当にありがとう、葵ちゃん。わたし、光里さんのライブ生で見るの初めてなんだ」
「ふふ、実はわたしも。差し入れのドーナツも買ったし、楽屋に行ってみようか」
「うん!」
葵ちゃんは、光里さんが好きなメープル味のドーナツを数個買ったらしい。
さすが葵ちゃん、ちゃんとリサーチしているなんて。
でも光里さんの楽屋となると緊張してしまう……。
「こんにちは、奥谷葵です」
「月川のぞみです!」
「どうぞー」
失礼します、と言ってドアを開けた。
すると真っ青な綺麗なドレスを着た光里さんがいた。
うわぁ、光里さん、すごく綺麗……!
「こんにちは、光里さん。ラジオのスタッフさんからチケットをいただいて来ました。お招きいただき、誠にありがとうございます。こちらほんのお気持ちですが、ぜひ受け取ってください」
「ご丁寧にありがとう。葵ちゃんのこと知ってるわよ、アイドルを目指して小学生の頃から活動していて、ステージがとても魅力的だった」
「本当ですか……! 覚えていただき光栄です」
葵ちゃんの瞳はキラキラしていた。
まるで光里さんの輝きが映し出されているみたいに。
「のぞみちゃんも来てくれてありがとう。久しぶりだね」
「こちらこそっ、また光里さんにお会いできて嬉しいです!」
「ありがとう。最近ふたりのことよくテレビやラジオで見かけるから、すごいなって思ってるよ。チームコンテストにもふたりで出場するんだよね?」
「はい! 光里さんは出場されないんですか?」
そう聞いてみると、光里さんは頷いた。
「わたしは二月に開催されるトップコンテストで優勝しているから、チームコンテストには出られないの。そういう決まりになっているから……。だから頑張ってね、Solatio」
「えっ、わたしたちのチーム名」
「素敵な名前だから、もちろん覚えたよ。葵ちゃんとのぞみちゃんにとてもぴったりだと思う。そろそろ開演時間だから、また後でね。今日は楽しんでいって」
「はい、ありがとうございました!」
わたしたちは頭を下げ、客席に着いた。
まさか光里さんがSolatioのことを覚えて褒めてくれるなんて……!
今日は葵ちゃんのおかげで、嬉しいことがいっぱいだ。
「みなさん、こんにちは。本日は諏訪光里のライブに来ていただき、ありがとうございます。最後まで楽しんでいってくださいね!」
「光里ちゃーん」
「光里ちゃん頑張ってー!」
「ありがとう。曲は、“近くにある憧れ”」
“気がつくことができなかった
すぐ隣にあったのに
その存在が当たり前と
思っていたんだ
失ってから分かったよ
それは大切なものなんだって
憧れは自分を強くする力に 変わるから
いつも照らしてくれてありがとう
時には別々になるかもしれないけど
いつでも どこでも 憧れに手をかざしているから
これからもよろしくね my shine”
光里さんが歌い終わった瞬間、驚くほど大きな拍手が会場全体に響いた。
すごい、これが光里さんの実力……!
大きく細かいところを踊っていても、歌は一切ブレない。そして笑顔を絶やしていない。
隣に座っている葵ちゃんを見ると、光里さんに夢中になっていた。
わたしは、歌詞と自分を重ねてしまった。
まるでわたしと葵ちゃんのこの一ヶ月間を表しているようだったから。
「のぞみ、光里さんやっぱりすごいね」
「うん、本当に」
「でも、わたしのぞみとなら、いつかあの光に追いつく気がするの。だってのぞみはわたしの光だから」
「うん……! わたしも同じ、葵ちゃんは憧れで、わたしの光」
お互いに目を見つめ合って、強く頷いた。
きっと考えていることは同じだ。
「絶対、チームコンテストで優勝しよう!」
「うん!」
わたしにとって葵ちゃんは、自分を照らしてくれる憧れの光。
その憧れと一緒に、叶えよう、この目標を。