憧れのセカイへ!
第四章 運命のチームコンテスト
ーー……ついにやってきた。チームコンテスト。
いろいろあったけど、葵ちゃんと一緒に頑張るのはとてつもなく楽しかった。歌やダンスの練習もやれることは全部頑張ったと思う。
あとはいつも通り、全力で頑張るだけ。
「みんな、おはよう」
「おはようございます!」
「ついにやってきたな、チームコンテスト。先生はこの約二ヶ月半、みんなの練習を見てきた。そして言えることはただひとつ。それは笑顔で楽しむこと」
笑顔で、楽しむこと……!
「まだ新入生なのに、みんなはもう立派な“アイドル”だ。自分を誇っていい。相手は高等部の先輩方や、強力なライバルがたくさんいる。でもステージを笑顔で楽しめば、それだけで勝利だと思って」
「はい!」
「緊張すると思うが、絶対に大丈夫。みんな、今日は頑張るぞー!」
「おー!」
わたしたちは、ステージの飾りつけをすることになった。
開演まであと三時間。このチームコンテストは生徒の保護者だけでなく、一般のお客さんも見に来られる。
だから念を入れて、素敵なステージを作らなければいけない。
「ここ、もう少し花飾ったほうがいいよね」
「そうだね。誰か持ってこれる人いるー?」
「あ、わたし持ってくるよ!」
丁度手が空いていたので、準備室へ行くことにした。
ステージの飾りつけをみんなでやるのはすごく楽しいけど、不思議な感じがする。
今日はお互いがライバルのはずなのに、一緒になって飾りつけをやっているのだから。
でもライバルなんて関係なしに協力できるなんて、素敵な関係性だと思う。このクラスで良かったと思った。
そんなことを考えながら準備室へ向かうと、光里さんの姿が見えた。
「近藤先生と話してる……どうしたんだろう」
ふたりとも真剣だ。今日のチームコンテストについて何か話しているのかな。
光里さんはチームコンテストには出場しないから、審査員をやるらしい。そのことについて相談しているのだろうか。
少し気になってしまい、わたしはふたりの様子を隠れて伺うことにした。
「諏訪、本当にいいの? もう一度よく考えて決断を出しなさい。それに今日はチームコンテスト本番だよ。審査員としての自覚をもう少し持て」
「すみません。でも……こんな中途半端な気持ちでコンテストの審査員だなんてしたくなかったんです」
「その気持ちは分かるし、わたしに相談してくれたことは嬉しいよ。でもいきなり驚いたよ。まさか、天美学院を辞めたいだなんて」
頭のなかが、真っ白になった。
飾りの花が大量に入った箱を、思わず落としてしまう。
……近藤先生、いまなんて。
聞き間違いじゃない、よね。
「本当にすみませんでした。コンテストの直前に、こんなことを相談してしまって」
「いや、謝ることはない。ただもう一度深く考え直しなさい。諏訪が本当はどうしたいのか、気持ちを落ち着いて整理したほうがいい」
「はい。ありがとうございました」
わたしは呆然と立ち尽くし、しばらくその場を動けずにいた。
どうやってみんなのもとに戻ってきたかは覚えていない。ただ気づけば時間だけが経ち、あと一時間で開演する時刻になっていた。
「……ぞみ。のぞみ!」
「え、あ……梨央奈ちゃん」
「ちょっと、さっきから何度も何度も呼んでるのに、何で気づいてくれないのよ。で、いまの話聞いてた?」
「ごめん……考え事してて」
素直にそう言うと、梨央奈ちゃんはわざとらしくため息をついた。
「だーかーらー、順番の話! あんたたちの出番は最後になったの。トリよ、トリ! 逆にわたしたちは一番目にやることになったから。分かった?」
「うん、分かった」
「なっ……! あんた、何でそんな冷静なの! 一番最後なのよ? もっとリアクションすると思ったのに……」
くじ引きの結果、わたしたちSolatioは一番最後の出番になったらしい。逆に梨央奈ちゃんたちユニークは一番最初とのこと。
頭には入ってきたけれど、そんなことよりも光里さんのことが気になって気になって仕方なかった。
その様子を見て心配そうに梨央奈ちゃんが顔を覗き込んできた。
「のぞみ、あんた本当にどうしちゃったの。熱でもあるんじゃないの?」
「ううん、熱はないよ、大丈夫。ちょっと、その……コンテストが緊張しちゃって。へへ」
「うそ、そんなので誤魔化されないわよ。何を考えているのか全部話しなさい」
どうしよう、梨央奈ちゃんに話すべき? でも、光里さんは内緒にしているみたいだったし……。
どうすれば良いか考えていると、梨央奈ちゃんのもとに凛香先輩がやってきた。
「原さん、おはよう。あら、月川さん、久しぶりね」
「凛香先輩、おはようございます!」
「お久しぶりです」
「飾りつけの最中にお邪魔してごめんね。原さん、わたしたちの出番もうすぐだから、楽屋で待機しましょう」
わたしは梨央奈ちゃんに視線を送った。
わたしなら大丈夫。梨央奈ちゃんに迷惑掛けたくないし……。
そんな気持ちが通じたのか、梨央奈ちゃんは凛香先輩のほうを向いて頷いた。
「分かりました、行きます。のぞみ、わたしたちのステージを見ててよね。そんな考え事できないくらいすごいパフォーマンスしてみせるから!」
「うん、ありがとう。頑張ってね」
そうだ。今はチームコンテスト本番直前……ちゃんと準備しないと。
そう思っても、光里さんの悲しそうな表情が忘れられず、集中できなかった。
いろいろあったけど、葵ちゃんと一緒に頑張るのはとてつもなく楽しかった。歌やダンスの練習もやれることは全部頑張ったと思う。
あとはいつも通り、全力で頑張るだけ。
「みんな、おはよう」
「おはようございます!」
「ついにやってきたな、チームコンテスト。先生はこの約二ヶ月半、みんなの練習を見てきた。そして言えることはただひとつ。それは笑顔で楽しむこと」
笑顔で、楽しむこと……!
「まだ新入生なのに、みんなはもう立派な“アイドル”だ。自分を誇っていい。相手は高等部の先輩方や、強力なライバルがたくさんいる。でもステージを笑顔で楽しめば、それだけで勝利だと思って」
「はい!」
「緊張すると思うが、絶対に大丈夫。みんな、今日は頑張るぞー!」
「おー!」
わたしたちは、ステージの飾りつけをすることになった。
開演まであと三時間。このチームコンテストは生徒の保護者だけでなく、一般のお客さんも見に来られる。
だから念を入れて、素敵なステージを作らなければいけない。
「ここ、もう少し花飾ったほうがいいよね」
「そうだね。誰か持ってこれる人いるー?」
「あ、わたし持ってくるよ!」
丁度手が空いていたので、準備室へ行くことにした。
ステージの飾りつけをみんなでやるのはすごく楽しいけど、不思議な感じがする。
今日はお互いがライバルのはずなのに、一緒になって飾りつけをやっているのだから。
でもライバルなんて関係なしに協力できるなんて、素敵な関係性だと思う。このクラスで良かったと思った。
そんなことを考えながら準備室へ向かうと、光里さんの姿が見えた。
「近藤先生と話してる……どうしたんだろう」
ふたりとも真剣だ。今日のチームコンテストについて何か話しているのかな。
光里さんはチームコンテストには出場しないから、審査員をやるらしい。そのことについて相談しているのだろうか。
少し気になってしまい、わたしはふたりの様子を隠れて伺うことにした。
「諏訪、本当にいいの? もう一度よく考えて決断を出しなさい。それに今日はチームコンテスト本番だよ。審査員としての自覚をもう少し持て」
「すみません。でも……こんな中途半端な気持ちでコンテストの審査員だなんてしたくなかったんです」
「その気持ちは分かるし、わたしに相談してくれたことは嬉しいよ。でもいきなり驚いたよ。まさか、天美学院を辞めたいだなんて」
頭のなかが、真っ白になった。
飾りの花が大量に入った箱を、思わず落としてしまう。
……近藤先生、いまなんて。
聞き間違いじゃない、よね。
「本当にすみませんでした。コンテストの直前に、こんなことを相談してしまって」
「いや、謝ることはない。ただもう一度深く考え直しなさい。諏訪が本当はどうしたいのか、気持ちを落ち着いて整理したほうがいい」
「はい。ありがとうございました」
わたしは呆然と立ち尽くし、しばらくその場を動けずにいた。
どうやってみんなのもとに戻ってきたかは覚えていない。ただ気づけば時間だけが経ち、あと一時間で開演する時刻になっていた。
「……ぞみ。のぞみ!」
「え、あ……梨央奈ちゃん」
「ちょっと、さっきから何度も何度も呼んでるのに、何で気づいてくれないのよ。で、いまの話聞いてた?」
「ごめん……考え事してて」
素直にそう言うと、梨央奈ちゃんはわざとらしくため息をついた。
「だーかーらー、順番の話! あんたたちの出番は最後になったの。トリよ、トリ! 逆にわたしたちは一番目にやることになったから。分かった?」
「うん、分かった」
「なっ……! あんた、何でそんな冷静なの! 一番最後なのよ? もっとリアクションすると思ったのに……」
くじ引きの結果、わたしたちSolatioは一番最後の出番になったらしい。逆に梨央奈ちゃんたちユニークは一番最初とのこと。
頭には入ってきたけれど、そんなことよりも光里さんのことが気になって気になって仕方なかった。
その様子を見て心配そうに梨央奈ちゃんが顔を覗き込んできた。
「のぞみ、あんた本当にどうしちゃったの。熱でもあるんじゃないの?」
「ううん、熱はないよ、大丈夫。ちょっと、その……コンテストが緊張しちゃって。へへ」
「うそ、そんなので誤魔化されないわよ。何を考えているのか全部話しなさい」
どうしよう、梨央奈ちゃんに話すべき? でも、光里さんは内緒にしているみたいだったし……。
どうすれば良いか考えていると、梨央奈ちゃんのもとに凛香先輩がやってきた。
「原さん、おはよう。あら、月川さん、久しぶりね」
「凛香先輩、おはようございます!」
「お久しぶりです」
「飾りつけの最中にお邪魔してごめんね。原さん、わたしたちの出番もうすぐだから、楽屋で待機しましょう」
わたしは梨央奈ちゃんに視線を送った。
わたしなら大丈夫。梨央奈ちゃんに迷惑掛けたくないし……。
そんな気持ちが通じたのか、梨央奈ちゃんは凛香先輩のほうを向いて頷いた。
「分かりました、行きます。のぞみ、わたしたちのステージを見ててよね。そんな考え事できないくらいすごいパフォーマンスしてみせるから!」
「うん、ありがとう。頑張ってね」
そうだ。今はチームコンテスト本番直前……ちゃんと準備しないと。
そう思っても、光里さんの悲しそうな表情が忘れられず、集中できなかった。