憧れのセカイへ!
ついに、待ちに待ったトップコンテストがやってきた。年に一度の大行事、みんな気合が入っている。
だけどわたしは、あの日からずっと悩んでいた。光里さんと話す機会がなく、今日を迎えてしまったのだ。
あのとき何か言えば良かったと後悔している。
「のぞみ、おはよう。今日頑張ろうね」
「葵ちゃん、おはよ。頑張ろうね」
「のぞみ……やっぱり元気ないよね。どうしたの? 友達なのに話してくれないと寂しいよ」
葵ちゃんはずっとわたしのことを心配してくれていた。
それでも、光里さんのことを勝手に話すわけにはいかなかった。
でももう、ひとりで悩んでばかりなのは辛かった。
「あのね……光里さん、天美学院を辞めるか迷ってるみたいなんだ」
「えっ!? どうして!?」
「病気で倒れたお母さんのそばにいてあげたいみたいで。それでわたし、何も言えなかったの。光里さんのために何かしてあげたいって思うだけで、何もできなかった。本当に情けないよね」
そう言うと、葵ちゃんは「そんなことない」と首を横に振った。
「のぞみは十分頑張ってる。前から悩んでいたことはこのことだったんだね。話してくれてありがとう、苦しかったよね」
「でもわたしより光里さんが苦しんでると思うの、だからっ」
「落ち着いて! 大丈夫、大丈夫だよ。のぞみの気持ち分かるから。ねぇのぞみ、光里さんの好きなものって何か知ってる?」
「え……確か、オムライスが好きって」
こんなときに、どうしてそんなことを聞くんだろう?
素直に答えると、すぐさま葵ちゃんはわたしを家庭科室へ連れて行った。
「一緒に作ろう、オムライス」
「へ……?」
「プログラム見たでしょ、光里さんはラスト。その一つ前がのぞみだったよね」
言われて思い出した。今日のプログラムは光里さんが最後で、その前がわたしだった。
でもそれとオムライスに何が関係しているのだろう。
「のぞみ、本番前に光里さんにオムライス渡して。そして……言いたいこと、全部言おう。のぞみの気持ちを話したらいい」
「……でも、なんて声を掛けてあげたらいいか、分からないよ」
「だから、そんなの気にしなくていいの! のぞみが思っていることを伝えたらいいんだよ。大丈夫、だって光里さんに憧れたのぞみの気持ちは本物でしょ?」
まだ少し怖いと思う気持ちはあったけれど渋々頷き、オムライスを作った。
初めてであまり上手くはできなかったけれど、これを渡して、光里さんともう一度話をしてみよう。
でも……わたしにできるのかな。
「みなさん、トップコンテスト開催まであと五分です。生徒たちは集まってください」
「急ごう、のぞみ。わたしの出番はすぐだから、見てて。わたしのステージでのぞみに勇気をあげるから」
「ありがとう。絶対見る」
ついに始まるんだ。トップコンテストが。
今日、新たにトップが決まってしまうんだ。
「みなさん、こんにちは。もう二月という真冬なのにあたたかい日差しが出ていてとても気分が良いですね。きっとわたしたちを見守ってくれているのでしょう。さぁ、一年に一度の大行事、天美学院第十回トップコンテストがついに開幕です!」
皆、次々にステージを披露していった。
新入生も入学したときから驚くほど育っているし、先輩方もそれを越えるパフォーマンスをしていて、すごいなと思った。
……次が葵ちゃんだ。ちゃんとステージを目に焼き付けよう。
「奥谷葵です。わたしは……憧れで、常に隣にいてくれる親友に勇気をあげるため、歌います。聴いてください。“Lonely”」
“教えて キミはなぜ そんな顔をしているの?
どうして わたしは 見ているだけで何もできないんだろう
いつも一緒にいたのに 隣で笑い合っていたのに
キミが泣いているときだけ
目を背けてしまう自分が嫌だよ
だから
約束をしよう ここで伝えよう
涙は見せないでよ 憧れた笑顔でいてよ
もう離れないって誓うから
はい、受け取って
キミに勇気のバトン渡すから”
葵ちゃんはいつもかっこよくてクールな感じなのに、この曲を歌う葵ちゃんは、とても儚かった。
でも、わたしには心の奥まで伝わってきた。貰ったよ、葵ちゃんの勇気。
「こんにちはー、原梨央奈です!」
あっ、葵ちゃんの次の出番、梨央奈ちゃんなんだ。
「わたしはここに来るまでいろいろありました。みなさんを心配させてしまうようなこともあったと思います。でもわたしは、何よりも大切なファンのみなさんへ向けて歌います! “一番星”」
“それぞれ夢は違うけれど
目指す場所はみんな同じでしょ
あの高い高い星へ
ゴールインすることだから
ひとりじゃできないだろう
でも 仲間となら届くはず
大切だと思う気持ちを胸に
今日もわたしは 誰よりも輝くよ
星空の下じゃ ちっぽけだけど
いつか一番星に なってみせるから!”
何度見ても、梨央奈ちゃんのパフォーマンスはみんながあっと驚くような凄さがある。
胸の奥からぽかぽかしてきて、元気が出るんだ。
わたしもステージの準備をしないと。そう思い楽屋へ向かっていたとき、葵ちゃんと梨央奈ちゃんに会った。
「ふたりともお疲れ様! すごく良かったよ。勇気と元気、もらっちゃった」
「のぞみ……良かった。いつもののぞみだね」
「本当よ。わたしにこんな心配させたからには、もう平気なんでしょうねー?」
「ふふっ、うん、大丈夫! わたしはもう逃げない。挫折しても、また立ち上がればいいんだって分かったから。本当にありがとう、ふたりのおかげだよ」
本当に、ふたりにはいつも支えられていた。
葵ちゃんとは一度喧嘩したけれど、ふたりでチームコンテストで優勝することができた。
梨央奈ちゃんは最初苦手だったけれど、その後お仕事を一緒にする機会が多くて、どんどん梨央奈ちゃんの良さを知っていった。
「お礼はいらないよ。わたしたちもいつものぞみの笑顔に励まされてるから」
「えっ、そうなの?」
「うん、ね、梨央奈」
「なっ……! もう、そういうことにしておいてあげる。だから早く行きなさいよ、のぞみ」
ふたりはとん、と背中を押してくれた。
……涙が出そう。でも、ここはグッと堪えなきゃ。
「うん、行ってきます!」
わたしは走り出した。遠く感じるけれど、意外と近くにある光に向かって。
だけどわたしは、あの日からずっと悩んでいた。光里さんと話す機会がなく、今日を迎えてしまったのだ。
あのとき何か言えば良かったと後悔している。
「のぞみ、おはよう。今日頑張ろうね」
「葵ちゃん、おはよ。頑張ろうね」
「のぞみ……やっぱり元気ないよね。どうしたの? 友達なのに話してくれないと寂しいよ」
葵ちゃんはずっとわたしのことを心配してくれていた。
それでも、光里さんのことを勝手に話すわけにはいかなかった。
でももう、ひとりで悩んでばかりなのは辛かった。
「あのね……光里さん、天美学院を辞めるか迷ってるみたいなんだ」
「えっ!? どうして!?」
「病気で倒れたお母さんのそばにいてあげたいみたいで。それでわたし、何も言えなかったの。光里さんのために何かしてあげたいって思うだけで、何もできなかった。本当に情けないよね」
そう言うと、葵ちゃんは「そんなことない」と首を横に振った。
「のぞみは十分頑張ってる。前から悩んでいたことはこのことだったんだね。話してくれてありがとう、苦しかったよね」
「でもわたしより光里さんが苦しんでると思うの、だからっ」
「落ち着いて! 大丈夫、大丈夫だよ。のぞみの気持ち分かるから。ねぇのぞみ、光里さんの好きなものって何か知ってる?」
「え……確か、オムライスが好きって」
こんなときに、どうしてそんなことを聞くんだろう?
素直に答えると、すぐさま葵ちゃんはわたしを家庭科室へ連れて行った。
「一緒に作ろう、オムライス」
「へ……?」
「プログラム見たでしょ、光里さんはラスト。その一つ前がのぞみだったよね」
言われて思い出した。今日のプログラムは光里さんが最後で、その前がわたしだった。
でもそれとオムライスに何が関係しているのだろう。
「のぞみ、本番前に光里さんにオムライス渡して。そして……言いたいこと、全部言おう。のぞみの気持ちを話したらいい」
「……でも、なんて声を掛けてあげたらいいか、分からないよ」
「だから、そんなの気にしなくていいの! のぞみが思っていることを伝えたらいいんだよ。大丈夫、だって光里さんに憧れたのぞみの気持ちは本物でしょ?」
まだ少し怖いと思う気持ちはあったけれど渋々頷き、オムライスを作った。
初めてであまり上手くはできなかったけれど、これを渡して、光里さんともう一度話をしてみよう。
でも……わたしにできるのかな。
「みなさん、トップコンテスト開催まであと五分です。生徒たちは集まってください」
「急ごう、のぞみ。わたしの出番はすぐだから、見てて。わたしのステージでのぞみに勇気をあげるから」
「ありがとう。絶対見る」
ついに始まるんだ。トップコンテストが。
今日、新たにトップが決まってしまうんだ。
「みなさん、こんにちは。もう二月という真冬なのにあたたかい日差しが出ていてとても気分が良いですね。きっとわたしたちを見守ってくれているのでしょう。さぁ、一年に一度の大行事、天美学院第十回トップコンテストがついに開幕です!」
皆、次々にステージを披露していった。
新入生も入学したときから驚くほど育っているし、先輩方もそれを越えるパフォーマンスをしていて、すごいなと思った。
……次が葵ちゃんだ。ちゃんとステージを目に焼き付けよう。
「奥谷葵です。わたしは……憧れで、常に隣にいてくれる親友に勇気をあげるため、歌います。聴いてください。“Lonely”」
“教えて キミはなぜ そんな顔をしているの?
どうして わたしは 見ているだけで何もできないんだろう
いつも一緒にいたのに 隣で笑い合っていたのに
キミが泣いているときだけ
目を背けてしまう自分が嫌だよ
だから
約束をしよう ここで伝えよう
涙は見せないでよ 憧れた笑顔でいてよ
もう離れないって誓うから
はい、受け取って
キミに勇気のバトン渡すから”
葵ちゃんはいつもかっこよくてクールな感じなのに、この曲を歌う葵ちゃんは、とても儚かった。
でも、わたしには心の奥まで伝わってきた。貰ったよ、葵ちゃんの勇気。
「こんにちはー、原梨央奈です!」
あっ、葵ちゃんの次の出番、梨央奈ちゃんなんだ。
「わたしはここに来るまでいろいろありました。みなさんを心配させてしまうようなこともあったと思います。でもわたしは、何よりも大切なファンのみなさんへ向けて歌います! “一番星”」
“それぞれ夢は違うけれど
目指す場所はみんな同じでしょ
あの高い高い星へ
ゴールインすることだから
ひとりじゃできないだろう
でも 仲間となら届くはず
大切だと思う気持ちを胸に
今日もわたしは 誰よりも輝くよ
星空の下じゃ ちっぽけだけど
いつか一番星に なってみせるから!”
何度見ても、梨央奈ちゃんのパフォーマンスはみんながあっと驚くような凄さがある。
胸の奥からぽかぽかしてきて、元気が出るんだ。
わたしもステージの準備をしないと。そう思い楽屋へ向かっていたとき、葵ちゃんと梨央奈ちゃんに会った。
「ふたりともお疲れ様! すごく良かったよ。勇気と元気、もらっちゃった」
「のぞみ……良かった。いつもののぞみだね」
「本当よ。わたしにこんな心配させたからには、もう平気なんでしょうねー?」
「ふふっ、うん、大丈夫! わたしはもう逃げない。挫折しても、また立ち上がればいいんだって分かったから。本当にありがとう、ふたりのおかげだよ」
本当に、ふたりにはいつも支えられていた。
葵ちゃんとは一度喧嘩したけれど、ふたりでチームコンテストで優勝することができた。
梨央奈ちゃんは最初苦手だったけれど、その後お仕事を一緒にする機会が多くて、どんどん梨央奈ちゃんの良さを知っていった。
「お礼はいらないよ。わたしたちもいつものぞみの笑顔に励まされてるから」
「えっ、そうなの?」
「うん、ね、梨央奈」
「なっ……! もう、そういうことにしておいてあげる。だから早く行きなさいよ、のぞみ」
ふたりはとん、と背中を押してくれた。
……涙が出そう。でも、ここはグッと堪えなきゃ。
「うん、行ってきます!」
わたしは走り出した。遠く感じるけれど、意外と近くにある光に向かって。