憧れのセカイへ!
「光里さんっ」
光里さんは、衣装室にいた。
わたしは急いで走ってきたので、ハァ、ハァと息が切れてしまう。
「のぞみちゃん! どうしたの、大丈夫?」
「す、すみません。わたしは、大丈夫です。っ、あの、お話があって来ました!」
「……ごめんなさい、今少し衣装を手直ししてるから、それが終わってからでもいいかな」
「はい、もちろん。突然来ちゃってすみません」
光里さんが手にしているドレスは、まるでウェディングドレスみたいで、見惚れてしまうほど美しかった。
「この衣装、今日光里さんが着るんですか? 初めて見ました」
「そう。この日のために、マネージャーさんが新しいドレスを作ってくれたの。わたしが依頼したんだけどね。ホワイトに思い入れがあるから」
「わたしも、光里さんといえばホワイトのイメージです!」
「ふふ、ありがとう。ホワイトはね、お母さまがよく着ていた色なんだ」
だから光里さんのお気に入りの色なんだ……。
仕上げのリボンを付けて、「できた!」と嬉しそうに光里さんは笑った。
「ここにリボンとフリルを足したかったの。上手くアレンジできて良かった」
「とっても素敵です。光里さんがこのドレスを着ているステージを見るの楽しみです」
「ありがとう。それで、のぞみちゃんのお話って?」
「はい……その、えっと」
緊張して、上手く声が出ない。早く言わなきゃいけないのに。
その緊張が伝わったのか、光里さんは優しく笑みを浮かべた。
「大丈夫だよ、ゆっくりで。前はわたしの話を聞いてくれたから、今度はわたしがのぞみちゃんの話聞くよ」
「はい……! わたし、あれから考えたんです。光里さんのためにできることはないかなって。でもよく考えたら、トップアイドルに光里さんに新人のわたしができることなんかないなと思いました。それでも少しでも光里さんに笑顔になってもらいたくて、作ってきました」
「……オムライス?」
「はい。前に光里さんがスタッフさんへ手作りクッキーを渡している姿を見て、かっこいいなと思って」
光里さんはオムライスを一口すくったスプーンを、口に運んだ。
「うん、すごく美味しい。料理上手なのね。本当にありがとう」
「良かったです。それで、話の続きなんですけど。光里さん、お母さんと同じようにしなくて、いいんですよ!」
「え……?」
「違ってたら本当にすみません。……もしかして光里さん、“お母さんのようなアイドルにならなきゃ”って、無理してるんじゃないですか? お母さんのようにトップであり続けなければいけない、って」
諏訪天音さんは、中学一年生から高校三年生まで、ずっとトップコンテストで優勝し続けていた。
だから光里さんも、そうしなければいけないと思い詰めているのではないかと思った。
「わたしは、ただお母さまみたいになりたいだけ。確かに少し無理することはあったけど、わたしがやりたくてやってるだけなの」
「でも、少なくともわたしは、光里さんは自分に嘘を吐いているように感じました。本当は……天美学院を辞めたくないんですよね」
「……のぞみちゃんの言う通り、できるなら辞めたくないよ。でも、それと同じくらいお母さまが大切なの。お母さまに憧れて、わたしはアイドルになったから。そのお母さまがアイドルじゃないのなら、もうわたしはアイドルでいる意味がないの……!」
「意味なんて、きっと必要ないです。わたしも同じように、光里さんに憧れてアイドルになりました。その憧れの先輩には、ずっと前を向いて突っ走ってほしいです。だからわたしは、ううん光里さんのファンのみんなは、光里さんにアイドルでいてほしい。天美学院の生徒でいてほしい!」
そう言うと、光里さんは涙を流した。
初めて見る光里さんの涙……。
きっと、本当は泣きたかったんだ。でもトップだからってたくさんのことを我慢して、ここまでひとりで頑張ってきたんだ。
すごいな、光里さんは。やっぱりいつまでもわたしの憧れだと思う。
「わたしは……アイドルでいていいの?」
「もちろん。光里さんがアイドルでいたいという気持ちがある限り、必ずできます。だって、愛があるから」
「愛が、あれば……。ふふ、その通りね。ありがとう、のぞみちゃん。本当に……ありがとう」
「いやいや、全然お礼言われることなんてしてません。むしろ生意気なことたくさん言っちゃって、すみませんでした」
勢いよく頭を下げる。
いろいろ自分の意見言っちゃったけど、後輩の分際で変なこと言ってないかな……!?
「ふふっ、やっぱりのぞみちゃん、かわいい」
「えっ?」
前もそう言われたけど、それは素直に褒められているのだろうか。
何だか恥ずかしい。
「ね、のぞみちゃん。何でトップアイドルは誰よりも光り輝けるか知ってる?」
「え……誰よりも努力しているから、ですか?」
「それはね、いつでもどこでも、誰しもみんなが光り輝いているから。スタッフやファンのみなさんはもちろん、家族や友達、先輩や後輩も。だからわたしは負けないようにもっともっと上を目指せる。そして、みんなを照らす光になることができる」
トップアイドルはどうして誰よりも光り輝けるかなんて、考えたこともなかった。
それは、周りの人たちみんなが光り輝いているから。そして自分もその上を目指して頑張ることができるからなんだ……。
「教えてくれてありがとうございます。トップアイドル、やっぱり憧れちゃいます」
「なら、いつかのぞみちゃんも叶えないとだね。その一歩を今日、踏み出せるよ。行こう!」
「はい!」
行こう。光り輝くステージにーー……!
光里さんは、衣装室にいた。
わたしは急いで走ってきたので、ハァ、ハァと息が切れてしまう。
「のぞみちゃん! どうしたの、大丈夫?」
「す、すみません。わたしは、大丈夫です。っ、あの、お話があって来ました!」
「……ごめんなさい、今少し衣装を手直ししてるから、それが終わってからでもいいかな」
「はい、もちろん。突然来ちゃってすみません」
光里さんが手にしているドレスは、まるでウェディングドレスみたいで、見惚れてしまうほど美しかった。
「この衣装、今日光里さんが着るんですか? 初めて見ました」
「そう。この日のために、マネージャーさんが新しいドレスを作ってくれたの。わたしが依頼したんだけどね。ホワイトに思い入れがあるから」
「わたしも、光里さんといえばホワイトのイメージです!」
「ふふ、ありがとう。ホワイトはね、お母さまがよく着ていた色なんだ」
だから光里さんのお気に入りの色なんだ……。
仕上げのリボンを付けて、「できた!」と嬉しそうに光里さんは笑った。
「ここにリボンとフリルを足したかったの。上手くアレンジできて良かった」
「とっても素敵です。光里さんがこのドレスを着ているステージを見るの楽しみです」
「ありがとう。それで、のぞみちゃんのお話って?」
「はい……その、えっと」
緊張して、上手く声が出ない。早く言わなきゃいけないのに。
その緊張が伝わったのか、光里さんは優しく笑みを浮かべた。
「大丈夫だよ、ゆっくりで。前はわたしの話を聞いてくれたから、今度はわたしがのぞみちゃんの話聞くよ」
「はい……! わたし、あれから考えたんです。光里さんのためにできることはないかなって。でもよく考えたら、トップアイドルに光里さんに新人のわたしができることなんかないなと思いました。それでも少しでも光里さんに笑顔になってもらいたくて、作ってきました」
「……オムライス?」
「はい。前に光里さんがスタッフさんへ手作りクッキーを渡している姿を見て、かっこいいなと思って」
光里さんはオムライスを一口すくったスプーンを、口に運んだ。
「うん、すごく美味しい。料理上手なのね。本当にありがとう」
「良かったです。それで、話の続きなんですけど。光里さん、お母さんと同じようにしなくて、いいんですよ!」
「え……?」
「違ってたら本当にすみません。……もしかして光里さん、“お母さんのようなアイドルにならなきゃ”って、無理してるんじゃないですか? お母さんのようにトップであり続けなければいけない、って」
諏訪天音さんは、中学一年生から高校三年生まで、ずっとトップコンテストで優勝し続けていた。
だから光里さんも、そうしなければいけないと思い詰めているのではないかと思った。
「わたしは、ただお母さまみたいになりたいだけ。確かに少し無理することはあったけど、わたしがやりたくてやってるだけなの」
「でも、少なくともわたしは、光里さんは自分に嘘を吐いているように感じました。本当は……天美学院を辞めたくないんですよね」
「……のぞみちゃんの言う通り、できるなら辞めたくないよ。でも、それと同じくらいお母さまが大切なの。お母さまに憧れて、わたしはアイドルになったから。そのお母さまがアイドルじゃないのなら、もうわたしはアイドルでいる意味がないの……!」
「意味なんて、きっと必要ないです。わたしも同じように、光里さんに憧れてアイドルになりました。その憧れの先輩には、ずっと前を向いて突っ走ってほしいです。だからわたしは、ううん光里さんのファンのみんなは、光里さんにアイドルでいてほしい。天美学院の生徒でいてほしい!」
そう言うと、光里さんは涙を流した。
初めて見る光里さんの涙……。
きっと、本当は泣きたかったんだ。でもトップだからってたくさんのことを我慢して、ここまでひとりで頑張ってきたんだ。
すごいな、光里さんは。やっぱりいつまでもわたしの憧れだと思う。
「わたしは……アイドルでいていいの?」
「もちろん。光里さんがアイドルでいたいという気持ちがある限り、必ずできます。だって、愛があるから」
「愛が、あれば……。ふふ、その通りね。ありがとう、のぞみちゃん。本当に……ありがとう」
「いやいや、全然お礼言われることなんてしてません。むしろ生意気なことたくさん言っちゃって、すみませんでした」
勢いよく頭を下げる。
いろいろ自分の意見言っちゃったけど、後輩の分際で変なこと言ってないかな……!?
「ふふっ、やっぱりのぞみちゃん、かわいい」
「えっ?」
前もそう言われたけど、それは素直に褒められているのだろうか。
何だか恥ずかしい。
「ね、のぞみちゃん。何でトップアイドルは誰よりも光り輝けるか知ってる?」
「え……誰よりも努力しているから、ですか?」
「それはね、いつでもどこでも、誰しもみんなが光り輝いているから。スタッフやファンのみなさんはもちろん、家族や友達、先輩や後輩も。だからわたしは負けないようにもっともっと上を目指せる。そして、みんなを照らす光になることができる」
トップアイドルはどうして誰よりも光り輝けるかなんて、考えたこともなかった。
それは、周りの人たちみんなが光り輝いているから。そして自分もその上を目指して頑張ることができるからなんだ……。
「教えてくれてありがとうございます。トップアイドル、やっぱり憧れちゃいます」
「なら、いつかのぞみちゃんも叶えないとだね。その一歩を今日、踏み出せるよ。行こう!」
「はい!」
行こう。光り輝くステージにーー……!