憧れのセカイへ!
 「さて、トップコンテストも残るはあとふたりになりました。次は月川のぞみさんです!」

 わたしは、ステージの上をゆっくり歩いていく。
 スポットライトが、わたしを照らしてくれていた。
 ……でも、この光に負けないくらい、光り輝きたい!

 「月川のぞみです。わたしは、トップアイドルの光里さんに憧れて、この天美学院を受験しました。それからいろいろあったけど、今この場に立てていることが、何よりも嬉しいです! そんなわたしの気持ちをみなさんに届けるために……聴いてください。“ヒカリ”」


 “あの日 運命を感じて
  今すぐ走り出したくなって
  それまで 普通だったわたしだけど
  一歩踏み出せたんだ

  思うように上手く いかないこともあったけど
  それでも楽しくて 仕方なかった
  どこにいても 何をしていても
  いつでも光を 追い続けていたいから

  夜が深ければ 深いほどに
  星は綺麗に 空を泳ぐの
  いつか あのヒカリに届くように
  指で空をなぞったんだ

  あの日 涙を流して
  もう逃げてしまいたいと思って
  それまで 孤独だったわたしだけど
  今は近くに道標があるね

  躓いて(つまずいて)しまったこともあったけど
  それでも足を止めたくなかった
  約束したの あの日の自分と
  何があっても 光を掴むって

  夜が深ければ 深いほどに
  空は真っ暗闇に 包まれる
  いつか そんな空を照らすほどに
  光り輝いてみたいな

  ふと不安になってしまう
  もし走り続けた先に 光を見失ってしまったらって
  そのときは この気持ちを抱きしめよう
  憧れた光は 自分の先で待っているから

  夜が深ければ 深いほどに
  星は綺麗に 空を泳ぐの
  いつか あのヒカリに届くように
  指で空をなぞったんだ”


 歌い終わると、盛大な拍手が会場に響いた。周りを見渡すと、笑顔のお客さんだらけ。
 ……嬉しい。またひとつ、夢を叶えることができたんだ!
 この歌詞は、わたしが書いた。初めてのソロステージのときと同じように。あのときは上手くいかないことだらけだったけれど、今ここで、失敗した経験を活かすことができた。
 ここで歌えて、本当に良かった。

 「月川のぞみさん、ありがとうございました。ラストはトップアイドル、諏訪光里さんです!」

 わたしが舞台裏へ行くと同時に、光里さんが表舞台へやってくる。

 「最高のステージをありがとう。次はわたしの番」

 「はい……!」

 ニッと歯を見せて笑う光里さんは、今までとは違う雰囲気を感じた気がした。

 「諏訪光里です。わたしはこれまで、トップアイドルだからという理由で弱音を吐けていませんでした。でも誰かに頼ることが大切だということを、後輩アイドルから教えてもらいました。わたしが輝けるのは、応援してくれるみなさんのおかげです。だから……わたしと一緒に、光り輝いてください! “愛はそばに”」


“疲れ果てた 目覚ましを止める指
  脱ぎ捨てられた 昨日のドレス
  君が淹れた ほろ苦いコーヒー
  そんな日常が わたしを癒やす

  言葉なんて 必要ないよ
  ただ ただ 笑ってほしい
  わたしが存在する意味になるから

なんてことない この日々が
わたしにとっては 特別なんだ
  この毎日になんて名前をつけようか
  愛はそばに あるんだね

  放課後 落ち込んでいたあの日
  ふと見上げた 蒼い空
 「また一つ思い出になった」
  あぁ 君の笑顔が 移ったみたいね

  目を逸らして 泣かないで
  ただ ただ 笑ってほしい
  この雨も いつかは止むから

  なんてことない この日々が
君にとって 特別になりますように
  いつだって そう願ってるよ
  愛はそばにあること 気づいたから

  愛さえあれば 必ずできる
  願えばきっと 遠くの光を掴める
  今 一緒に手を伸ばして
  輝いてみない?

  なんてことない この日々が
わたしにとっては 特別なんだ
  この毎日に名前をつけよう
  愛はそばに”


 光里さんのステージを見た瞬間、誰もが目を逸らすことはできなかった。
 みんなの瞳には、光り輝く光里さんが映っていた。
 ……ギラギラと輝く太陽みたいに眩しい。それなのに、ずっと見ていたいと思う。これこそが、わたしの憧れた光。

 「みなさん素敵なステージをありがとうございました! では運命の結果発表に参りたいと思います。審査は天美学院の先生方に加え、配信を見ている方やこの場にいるみなさんの投票によって決まります!」

 あと数分で、結果が分かってしまうんだ。
 どうか五位までに入れますように。新入生のわたしがそんな高い順位に入るなんて難しいと思うけど、でも……!

 「集計できました。では、今年のトップコンテストの結果を発表いたします。まず第五位は……原梨央奈!」

 隣に座っていた梨央奈ちゃんは、立ち上がった。
 よく見ると、梨央奈ちゃんは涙を流していた。いつも強気な梨央奈ちゃんだけど、やっぱり嬉しいよね……。

 「梨央奈ちゃん!」

 「本当におめでとう」

 「ありがとう。……あ、あんたたちもランキングに入らなきゃ許さないんだからねっ」

 葵ちゃんとわたしは力強く頷いた。

 「続きまして第四位は……小田凛香!」

 凛香先輩が四位なんだ。知っている先輩がランキングに入ることができて、自分まで嬉しい。
 残る枠は、あと三つ。お願い、お願い、お願い……!

 「第三位は……奥谷葵!」

 「葵ちゃん! 葵ちゃんだよ!」

 「のぞみっ」

 葵ちゃんは勢いよく抱きついてきた。
 手が震えている。相当怖かったに違いない。

 「葵ちゃん、すごい。三位だなんて」

 「そうね。葵、おめでとう」

 「ありがとう、ふたりとも。嬉しい」

 最後は、スクリーンに一位と二位の人の名前が映し出される。
 そのふたりのどちらかが、トップということだ。

 「ではみなさん、スクリーンにご注目ください。第一位と第二位の方は、こちらです!」

 【月川 のぞみ】
 【諏訪 光里】

 えっ、わたし?

 「のぞみ……! のぞみ、おめでとう!」

 「やったじゃない、おめでとう」

 「葵ちゃん、梨央奈ちゃん……! ありがとう、本当に」

 まさか、わたしが一位か二位に選ばれるなんて。
 それ以上に、光里さんの隣に並ぶことができたのが、とても嬉しかった。
 これまでたくさん挫折したけど……頑張ってきて本当に本当に良かった。
 あとは、トップがどちらになるのか、見守るだけ。

 「では最後に、映えあるトップを発表いたします。今年のトップコンテスト、第一位はーー……諏訪光里ー!」

 ものすごい歓声が響く。
 やはり、トップは光里さんだった。

 「では名前を呼ばれた五名の方は登壇してください」

 言われた通り、わたしたちはステージに上がった。
 わたしは光里さんの隣に並ぶ。

 「ではみなさん、ひとことずつお願いします」

 「原梨央奈です。入賞できて本当に嬉しいですが、まだまだ努力して、いつかトップになってみせます。これからも応援よろしくお願いします!」

 「小田凛香です。光里先輩のお手伝い係をしながらも自分もアイドルとして活動し続けてきて良かったと心から思っています。来年、高等部になってからも頑張ります!」

 「奥谷葵です。第三位という素敵な順位をいただけて光栄です。わたしひとりではここまで来れなかったと思います。親友と一緒だったから」

 わたしは葵ちゃんの目を見て、一緒に頷いた。

 「これからも、チームコンテストやトップコンテストで得た経験を活かして頑張ります。ありがとうございました!」

 「月川のぞみです。わたしは……光里さんがトップなんだろうなって、ほんの少し思っていました。だから自分が一位になれなくてもそんな落ち込むことはないかなと思っていたんです。でも、それは違いました。今、ものすごく悔しい……!」

 涙が一粒こぼれた。会場がざわついてしまったけれど、止まらなかった。

 「悔しくて、悲しくてたまらないんです。光里さんが一位なんて喜ばしいことなのに、以前のわたしだったらすごく嬉しかったのに! でも、でも……っ」

 嗚咽が出て、それ以上言葉を発することができなかった。
 そんなわたしが持っているマイクを、光里さんが奪った。

 「みなさん! 彼女は、彼女たちは、すごく立派なアイドルです。自分が負けたから悔しいと思える。それは、全力で今まで頑張ってきた証です。わたしがトップになったのは、この子たちが一緒に光り輝いてくれたから。これからもみんなの道標になれるようなアイドルを目指します! 本当に、本当にありがとう!」

 「光里ちゃんものぞみちゃんも、みんなお疲れ様ー!」

 「大好きだよー!」

 次々にあたたかい声援が贈られてくる。
 光里さん含め、みんなが泣いていた。でもそれは悲し涙ではなく、嬉し涙や悔し涙。
 『悔しいと思える。それは、全力で今まで頑張ってきた証』
 光里さんの言葉が胸に強く刺さる。そっか、わたし頑張ってたから、一位になれなくて悔しかったんだね。

 これまでずっと遠くに感じていた背中が、今は手を伸ばせば届く距離にある。今できることを精一杯やって、結果を出すことができて良かった。
 受け取った銀色の盾は、とても重く感じた。いつか金色のトロフィーを手にできるように……そう思った。
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