憧れのセカイへ!
 翌日、わたしはいつもより一時間早く起き、ランニングをした。
 少しでも早く光里さんに追いつくために、アイドルとして成長するために!
 できる限り、努力したい。

 「お嬢ちゃん、おはよう」

 「あっ、おはようございます!」

 「こんな朝早くから運動?」

 「はい、アイドルとして頑張りたいんです」

 近所の方や、動物の散歩をしている高齢の方に挨拶を交わした。

 「すごいねぇ、お嬢ちゃんアイドルなの?」

 「まだまだ始めたばかりですけど……でも、夢は憧れの先輩に追いつくこと。だから頑張っていきたいんです!」

 「いいねぇ、頑張ってね、お嬢ちゃん」

 「応援してるよ」

 あたたかい声援に、思わず涙が出そうになった。
 わたしはひとりじゃない、たくさんの人がいるから頑張ることができる。

 「はい、ありがとうございます!」

 ランニングを終え、すっきりした気分で学校へ向かった。
 朝早くから走るのはすごく気持ちよかった。

 「おはよう、のぞみ」

 「あっ、葵ちゃんおはよう」

 「聞いたよ、昨日光里さんのお手伝いをしたんだって? いいなぁ、わたしも行きたかった」 

 「ふふ、そうなの、光里さんのオムライスまで食べれたんだよ!」

 そう言うと、クラスの子たちの視線が一気にわたしのほうへ向いた。

 「月川さん、光里さんの手作り料理を食べたの!?」

 「ていうか月川さんって何者? 昨日咄嗟にアレンジしてトラブルを回避しててすごかった!」

 「もしかしてもうアイドルデビューしてる?」

 「光里さんと仲良いの? いろいろ教えて!」

 グイグイ押し寄せてくるクラスメイトたち。
 でも気持ちは分かる、光里さんは誰だって一番の憧れだもん。

 「たまたま光里さんのお手伝い係になっただけだよ。それにわたしはまだまだアイドルには程遠いよ」

 「いやー、でも月川さんってなんかオーラを感じるよ」

 「分かる! なんか惹かれるよね」

 「わたしも光里さんに近づけるように頑張らないとなぁ」

 わたし今日、たくさんの人から褒められるなぁ。
 ちょっぴり恥ずかしいけど、でも嬉しい。

 「月川、月川いるー?」

 「あれ、月川さん呼ばれてるよ」

 「近藤先生だ」

 なんだろう、近藤先生に呼ばれるなんて。わたし何かしちゃったかな。
 急いで近藤先生のもとに向かった。

 「先生、おはようございます」

 「おぉ、月川おはよう。ビッグニュースがある」

 「えっ?」

 「月川、きみの小さなソロステージが決まった。場所は市民会館だけど、入学して二日目でソロステージが決まるなんて者は諏訪以来だ、喜べ」

 驚きのあまり、声が出なかった。
 わたしのソロステージ!?
 それに入学して二日目でそれが決まるのは、光里さん以来!?
 嬉しくて……どうしよう、飛び跳ねたい気分!

 「今週末、休みだけどいいな?」

 「はい、やらせてください、ソロステージ!」

 「おっけー。その意気だね」

 わたしは葵ちゃんのもとへ戻った。

 「どうだったの、のぞみ」

 「あのね、ソロステージが決まったの! 小さな市民会館だけど」

 「え……おめでとう、のぞみ。すごいね」

 「ありがとう葵ちゃん!」

 メールで近藤先生から衣装は好きなものを選んでいいとのことだった。
 どうしよう、何にしようかな。考えるだけで胸のドキドキが止まらない。
 早くやってみたい、ソロステージ!

 「のぞみ、わたしも見に行っていい?」

 「もちろん! 来てくれるの?」

 「うん、だってレッスンとか今までしてこなかったのぞみに、入学早々ソロステージが決まったんだもの。どんな実力があるのか気になるし。勉強になると思ってね」

 「あ……ごめんね」

 そっか、葵ちゃんはまだソロステージが決まってない。
 それなのにわたしはひとりで浮かれて、葵ちゃんの気持ちも考えずに……!
 なんて最低なんだろう。友達なのに。

 「のぞみは謝らなくていいんだよ。わたしに何が足りないのか、のぞみを見て研究させて」

 「ありがとう、もちろんだよ」

 「あっ、わたしこれからダンスレッスンなんだ。のぞみは?」

 「わたしは衣装を選ぼうかな」

 「そっか。じゃあまたお昼にね」

 そう言って葵ちゃんは、ダンスレッスンに向かった。
 わたしは衣装室へ足を運び、数々の衣装を見ていった。
 やっぱり最初のステージということで、インパクトをつけたいなぁ。

 「あれ……のぞみちゃん?」

 「光里さん!」

 振り返ると、光里さんが衣装室に来ていた。
 光里さんが手に持っているその衣装……よく光里さんが着ているドレスだ!
 やわらかいレッドで、小さなダイヤモンドが散りばめられた豪華だけど儚げなドレス。

 「のぞみちゃん、聞いたよ。ソロステージが決まったんだって? おめでとう」

 「ありがとうございます。その衣装を選びにここへ来ました」

 「そうなのね。わたしは借りてたこの衣装を返しに来たの」

 そう言って光里さんはハンガーにドレスを掛け、この部屋を去ろうとしていた。

 「光里さん!」

 「ん?」

 「あの……」

 こんなこと、言っていいか分からない。断られたらどうしよう。
 不安で手が震えるけれど、でも言うチャンスは今しかない!

 「そのドレス、わたしが着てもいいですか?」

 そのドレスは、光里さんしか着ているのを見たことがない。
 だからわたしが着ていいのか分からないけど…、でも、初めてのソロステージにふさわしいと思った。

 「……ふふ、いいライバルが現れたみたいね」

 「え?」

 「いいよ、使って。頑張ってね」

 「え、あ、ありがとうございます!」

 光里さんに精一杯頭を下げた。うそ、やったぁ、あのドレスが着れるんだ……!
 嬉しくてたまらない。わたしはドレスをぎゅっと優しく抱きしめる。
 このドレスで、わたしを輝かせて。
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