憧れのセカイへ!
第二章 憧れはわたしを強くする
天美学院に入学してから二週間が経った。今日は葵ちゃんのソロステージをここみと見に来ていた。
……一週間前、わたしはここでソロステージをした。だけど、全然上手くいかなくて失敗しちゃったんだ。
後々考えてみると、きっとわたしは歌詞を作るのに時間を掛けすぎて歌やダンスの練習やおろそかになってしまっていたのだと思う。
それに本番で緊張しすぎたせいで、スムーズに動けなかったのだ。
今回、初めて見る歌やダンスの経験がバッチリな葵ちゃんのステージを見て勉強しよう。
「お姉ちゃん、楽屋行ってみたいな」
「うん、いいよ」
わたしはこの前のお返しとして、葵ちゃんが好きと言っていた抹茶味のドーナツを手土産として持っていた。
いざ楽屋の前に着くと少し緊張してしまう。勇気を出して、コンコンとドアをノックした。
「葵ちゃんこんにちは、のぞみです!」
「どうぞー」
ドアを開けて見ると、とても綺麗な葵ちゃんがいた。
水色の衣装と、首に巻いているチョーカーが葵ちゃんの美しさを存分に引き出せている。
「葵ちゃん、すごくかわいい!」
「やめてよ、そんな褒めないで。あっ、それもしかして」
「あ、そうそう、ドーナツ買ってきたよ」
「うわぁ、ありがとう。後でいただくね」
葵ちゃんは鏡を見ながら、出番ギリギリまで歌やダンスの練習をしていた。
わたしは差し入れのドーナツを食べてリラックスしてたのに……すごいな。
「あ、のぞみの妹さん?」
「月川ここみです。葵ちゃん、ステージ頑張ってください!」
「ここみちゃんね、ありがとう。嬉しい」
わたしはふと葵ちゃんのそばにあったたくさんの箱や小さな花束を見て不思議に思う。
「葵ちゃん、それは?」
「あぁ、これはファンからいただいたものだよ」
「えっ、そんなに!?」
「うん、わたし前から一応アイドルとして活動してるから……応援してくれてる人もたくさんいるみたいで。ソロステージをするって知ったファンの人たちが届けてくれたの」
すごい。葵ちゃん……本当にすごい。言葉が出ないよ。
わたしとは大違いだな。あのときの失敗を思い出して、涙が出そうになってしまう。
「奥谷さん、出番です」
「行ってくるね。見てて、のぞみ」
「うん、頑張ってね! 応援してるよ」
わたしとここみは、客席に座った。
いよいよ葵ちゃんのステージが始まる。すごく楽しみ。
「こんにちはー、奥谷葵です」
「わーっ、葵ちゃーん!」
「天美学院合格おめでとうー!」
「みなさんありがとうございます! みなさんの声援があってここまで来ることができました。でも……まだほんの始まりに過ぎません。わたしはこれからもっともっと高く舞い上がっていきますので、よろしくお願いします!」
ソロステージで緊張しているはずなのに、ファンへの気遣いまで忘れない。さすが葵ちゃん。
“あの頃はまだ分からなかった
未来の自分の想像なんて
でもあのとき気づいたんだ
未来は創造するものでしょ
羽が無くたって 翼が無くたって
走り出すことはできるよ いつだって
間違いなんてないんだ 現在に
過去に囚われないで 未来へ進もう
このリズムと歌が 引っ張ってくれるから
新しい明日を描く”
曲が終わって、少しずつ拍手が広がっていった。
わたしは声すら出なかった。葵ちゃんの歌とダンスは完璧で、笑顔も絶やさず、手を振ることなどのファンへのサービスも忘れていなかった。
どうしたらこんなに素敵なパフォーマンスができるんだろう。わたしと同い年とは思えない、葵ちゃんのすごさが改めて分かった気がする。
「お姉ちゃん、葵ちゃんすごかったね」
「うん」
「わたし葵ちゃんのファンになっちゃった!」
ここみや観客の瞳には、葵ちゃんしか映っていなかった。
わたしが今階段の下段にいるとしたら、葵ちゃんはもうその先をいっている。
「あっ、のぞみ、ここみちゃん」
「葵ちゃん、わたしファンになっちゃいましたー!」
「えっ、そうなの? ありがとう、これからも応援よろしくね」
「はい! ね、お姉ちゃん」
小さく頷いた。
まだ葵ちゃんのステージが頭のなかでグルグルしていて……頭が真っ白だった。
「のぞみ、大丈夫? どうかしたの?」
「葵ちゃんのステージが、あまりにもすごくて……わたし、葵ちゃんのすごさを今まで知らなかったんだと思う。びっくりして言葉が出ないよ」
「ありがと、それはすごく嬉しい。でもそんな浮かない顔してるのぞみなんて見たくないよ。笑顔がチャームポイントだって、わたし言ったでしょ?」
葵ちゃん……。
そうだよね、わたし何でこんなに暗い気持ちになってるんだろう。
友達があんなに素敵なステージをしたのに、いつまでも自分の失敗を引きずって落ち込んでるのは失礼だよね。
「ありがとう。わたし、やっぱりまだまだアイドルには程遠いよね」
「そんなことない、のぞみは入学したての頃より確実に上手くなってるもん。実際、あんなに早くソロステージに駆けつけたのは光里さん以来だったんでしょ。もっと自信持たないとダメだよ」
「そうだね……本当にありがとう」
わたしは気がついた。ライバルがいないと、友達がいないと、ひとりでは光に追いつけないということに。
そばにいてくれる存在が、自分のことを大きく支えてくれるのだと分かった。
……一週間前、わたしはここでソロステージをした。だけど、全然上手くいかなくて失敗しちゃったんだ。
後々考えてみると、きっとわたしは歌詞を作るのに時間を掛けすぎて歌やダンスの練習やおろそかになってしまっていたのだと思う。
それに本番で緊張しすぎたせいで、スムーズに動けなかったのだ。
今回、初めて見る歌やダンスの経験がバッチリな葵ちゃんのステージを見て勉強しよう。
「お姉ちゃん、楽屋行ってみたいな」
「うん、いいよ」
わたしはこの前のお返しとして、葵ちゃんが好きと言っていた抹茶味のドーナツを手土産として持っていた。
いざ楽屋の前に着くと少し緊張してしまう。勇気を出して、コンコンとドアをノックした。
「葵ちゃんこんにちは、のぞみです!」
「どうぞー」
ドアを開けて見ると、とても綺麗な葵ちゃんがいた。
水色の衣装と、首に巻いているチョーカーが葵ちゃんの美しさを存分に引き出せている。
「葵ちゃん、すごくかわいい!」
「やめてよ、そんな褒めないで。あっ、それもしかして」
「あ、そうそう、ドーナツ買ってきたよ」
「うわぁ、ありがとう。後でいただくね」
葵ちゃんは鏡を見ながら、出番ギリギリまで歌やダンスの練習をしていた。
わたしは差し入れのドーナツを食べてリラックスしてたのに……すごいな。
「あ、のぞみの妹さん?」
「月川ここみです。葵ちゃん、ステージ頑張ってください!」
「ここみちゃんね、ありがとう。嬉しい」
わたしはふと葵ちゃんのそばにあったたくさんの箱や小さな花束を見て不思議に思う。
「葵ちゃん、それは?」
「あぁ、これはファンからいただいたものだよ」
「えっ、そんなに!?」
「うん、わたし前から一応アイドルとして活動してるから……応援してくれてる人もたくさんいるみたいで。ソロステージをするって知ったファンの人たちが届けてくれたの」
すごい。葵ちゃん……本当にすごい。言葉が出ないよ。
わたしとは大違いだな。あのときの失敗を思い出して、涙が出そうになってしまう。
「奥谷さん、出番です」
「行ってくるね。見てて、のぞみ」
「うん、頑張ってね! 応援してるよ」
わたしとここみは、客席に座った。
いよいよ葵ちゃんのステージが始まる。すごく楽しみ。
「こんにちはー、奥谷葵です」
「わーっ、葵ちゃーん!」
「天美学院合格おめでとうー!」
「みなさんありがとうございます! みなさんの声援があってここまで来ることができました。でも……まだほんの始まりに過ぎません。わたしはこれからもっともっと高く舞い上がっていきますので、よろしくお願いします!」
ソロステージで緊張しているはずなのに、ファンへの気遣いまで忘れない。さすが葵ちゃん。
“あの頃はまだ分からなかった
未来の自分の想像なんて
でもあのとき気づいたんだ
未来は創造するものでしょ
羽が無くたって 翼が無くたって
走り出すことはできるよ いつだって
間違いなんてないんだ 現在に
過去に囚われないで 未来へ進もう
このリズムと歌が 引っ張ってくれるから
新しい明日を描く”
曲が終わって、少しずつ拍手が広がっていった。
わたしは声すら出なかった。葵ちゃんの歌とダンスは完璧で、笑顔も絶やさず、手を振ることなどのファンへのサービスも忘れていなかった。
どうしたらこんなに素敵なパフォーマンスができるんだろう。わたしと同い年とは思えない、葵ちゃんのすごさが改めて分かった気がする。
「お姉ちゃん、葵ちゃんすごかったね」
「うん」
「わたし葵ちゃんのファンになっちゃった!」
ここみや観客の瞳には、葵ちゃんしか映っていなかった。
わたしが今階段の下段にいるとしたら、葵ちゃんはもうその先をいっている。
「あっ、のぞみ、ここみちゃん」
「葵ちゃん、わたしファンになっちゃいましたー!」
「えっ、そうなの? ありがとう、これからも応援よろしくね」
「はい! ね、お姉ちゃん」
小さく頷いた。
まだ葵ちゃんのステージが頭のなかでグルグルしていて……頭が真っ白だった。
「のぞみ、大丈夫? どうかしたの?」
「葵ちゃんのステージが、あまりにもすごくて……わたし、葵ちゃんのすごさを今まで知らなかったんだと思う。びっくりして言葉が出ないよ」
「ありがと、それはすごく嬉しい。でもそんな浮かない顔してるのぞみなんて見たくないよ。笑顔がチャームポイントだって、わたし言ったでしょ?」
葵ちゃん……。
そうだよね、わたし何でこんなに暗い気持ちになってるんだろう。
友達があんなに素敵なステージをしたのに、いつまでも自分の失敗を引きずって落ち込んでるのは失礼だよね。
「ありがとう。わたし、やっぱりまだまだアイドルには程遠いよね」
「そんなことない、のぞみは入学したての頃より確実に上手くなってるもん。実際、あんなに早くソロステージに駆けつけたのは光里さん以来だったんでしょ。もっと自信持たないとダメだよ」
「そうだね……本当にありがとう」
わたしは気がついた。ライバルがいないと、友達がいないと、ひとりでは光に追いつけないということに。
そばにいてくれる存在が、自分のことを大きく支えてくれるのだと分かった。