憧れのセカイへ!
 朝早く起きてランニングするのも、日課になってきた。
 最初の頃は筋肉痛がすごくて歩くのも大変だったけれど、今はもう身体が慣れてきて、清々しい気分になれるくらいだ。
 アイドルにとっては、体力づくりは基本。わたしはまだまだ基礎が足りないから、最近は体力づくりの運動を熱心に取り入れることにしている。

 「のぞみ、おはよー」

 「おはよう、葵ちゃん!」

 「えっ、体操服? もしかして朝早くから今までトレーニングしてたの?」

 「うん、と言ってもランニングだけどね。今日は一駅分早く降りて走って学校まで来たんだ」

 そう言うと、葵ちゃんはとても驚いた顔をする。

 「すごいね、のぞみ。最近すごく熱心に頑張ってるじゃん」

 「うーん、そうかな、嬉しい。葵ちゃんは今日もファッションショー?」

 「うん、昨日はちょっと上手くいかなかったから、今日は絶対成功させたいんだ。あっちでリハーサルもするから、もうそろそろ行かないと」

 葵ちゃんは昨日と今日、二日間行われるファッションショーに出演している。
 モデルの経験もしてみないかと声を掛けられたみたいで、新人モデルとしても活動する予定みたい。
 わたしはまだあの日のソロステージしかお仕事をもらっていない。それに比べて葵ちゃんはたくさんのお仕事をこなしているから、本当に尊敬する。

 「頑張ってね、葵ちゃんなら絶対大丈夫。できるよ!」

 「ありがとう、行ってくるね。のぞみもトレーニング頑張って」

 「うん! 行ってらっしゃい」

 葵ちゃんを見送って、わたしは今から何をするか考えた。
 授業までまだ時間があるし、ランニングをもう少しするか、それとも歌やダンスのレッスンをするか、勉強するか……。
 そんなとき、近藤先生がわたしの席にやってきた。

 「先生、おはようございます」

 「おはよう、月川。月川にいいお知らせがある」

 「えっ?」

 「これ、見てみて」

 そう言って差し出してきたのは、一枚の紙だった。
 “新人アイドルのデビューを応援”?
 よく見ると、テレビ番組のチラシだった。

 「その事務局からオファーが入ったんだ。なんと月川、きみへのオファーがね」

 「えっ、本当ですか!?」

 「本当だよ。あの日、新入生お披露目ステージやったの覚えてるか? そのときの月川を見て、気にかけていたらしいんだ」

 あのときのわたしを見て……?
 テレビ番組に出られるなんて。嬉しい、本当に嬉しい!

 「ぜひやらせてください」

 「うん、分かった。そこでは自分のことをいろいろ聞かれるらしいから、ちゃんと自己アピールができるように勉強しておいて。これは月川の知名度を上げるチャンスなんだ。しっかりやれよ」

 「はい!」

 そっか、わたしの知名度を上げるチャンス……。
 素直に喜んでしまったけど、これは絶対失敗できないお仕事だ。
 それにチラシには“生放送でインタビュー”と書いてある。生放送だなんて余計緊張してしまうから、対策していかないと。
 もうソロステージのときみたいに、失敗したくないから。

 「よし、自己アピールを勉強しよう」

 図書室へ行こうと席を立ったとき、丁度前を歩いていた子にぶつかってしまった。
 わたしは、その子が落とした本を慌てて拾う。

 「ご、ごめんなさい、前見てなくて。大丈夫?」

 「大丈夫だと思う!? もう、あんたのせいで時間がもったいないんだけどっ」

 この子はーー原 梨央奈(はら りおな)さんだ。
 今有名な新人アイドルで、確か女優デビューも果たしていると聞いた気がする。
 ツインテールが似合っていて、とてもオシャレな子だ。

 「本当にごめんね、原さん」

 「まぁいいけど。って、何であんたがそのチラシ持ってるのよ」

 「え、これ? 今度この番組に出ることになったんだ。さっき近藤先生から貰って」

 「はぁ!?」

 えっ、わたしまた何か変なことしちゃったかな?
 そう不安に思っていると、原さんは持っていたバッグの中から同じチラシを見せてきた。
 どうして原さんが同じものを持っているんだろう。

 「わたしも出るんだけど」

 「えっ……えぇっ、原さんも!?」

 「何よ、わたしが出ちゃ文句あるの?」

 「な、ないよ!」

 ふん、と鼻を鳴らす原さん。
 ……つまり、わたしたちは番組で共演するということだ。
 全然知らない原さんと共演だなんて。しかも何故か敵対視されてるし、少し怖いんだけど……。

 「あんた、名前なに?」

 「月川のぞみです」

 「月川のぞみ、覚えてらっしゃい。わたしはあんたよりすっごくいい自己アピールをしてみせるんだから!」

 わたしのことを指差し、原さんはそう言った。

 「望むところだよ。わたしだって負けないよ、原さん!」

 共演するのに、勝負になってしまったわたしたち。
 原さんのことは何も知らないけど、わたしだって何もしないままでは終われない。
 有名アイドルの原さんに認めてもらえるように頑張る!
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