憧れのセカイへ!
ついに生放送番組、本番の日がやってきた。
わたしは近藤先生に道順を教えてもらい、電車でスタジオまで向かった。それも、原さんと一緒に。
原さんは緊張とかしないのだろうか。きっとしないんだろうな、こんな経験たくさん積んでるんだろうし。
「ねぇ、スタジオの最寄り駅ってどこなのよ」
「えっ、次の駅だけど」
「ふーん」
あれ、もしかして意外と電車慣れしてないのかな。
わたしも電車が得意というわけではないけれど、天美学院に通学していくうちに慣れるようになった。
駅に着き、わたしはマップを見ながらスタジオへ歩いていく。原さんも何も言わずに着いてきた。
「ここだ! 原さん、着いたよ」
声を掛ける前に、原さんはもうスタジオの中へ入ってしまった。
もう、自分勝手な人だなぁ。
「おはようございます!」
「原梨央奈さん、月川のぞみさんおはようございます!」
「お二人はこちらへ」
そう言って案内されたのは、メイクルームだった。
……うわぁ、すごい! コスメがキラキラしてる!
あまりメイクの経験はないし、プロにやってもらうなんて初めてだ。嬉しい。
「月川さん、こちらにお掛けください」
「あっ、よろしくお願いします」
「あら、ここに小さいニキビができちゃってますね。コンシーラーで隠しますのでご安心くださいね」
「ありがとうございます」
すごい、スタッフさんて何でもできるんだ。
そう感心していると、それを見ていた原さんが睨みつけてきた。
「ちょっとあんた、アイドルなのに肌管理もできないの? ニキビだなんて信じられない」
「あっ、そっか。確かに。原さん、注意してくれてありがとう」
「なっ……!」
何か言いたげな顔をしていたけれど、何も言ってこなかった。
確かに嫌な言い方されたけど、でも事実だもん。肌管理もこれから徹底してやっていかないと!
「よし、月川さん終わりましたよ」
目を開けて鏡を見ると、別人みたいに可愛く仕上がっていた。
すごい、これがわたし……?
原さんはもともと自分でメイクをしていたようで、もうとっくに終わっていた。
「原さん、メイク得意なの?」
「はぁ? 当たり前でしょ。できて当然。なに、あんたはできないの?」
「うん、実はやったことあんまりないんだ。でもメイクって魔法みたいに変われるんだね! これから勉強してみる」
「……ふん。どうしてもって言うなら、教えてあげないこともないけどっ」
え……!
原さんの顔や耳まで真っ赤に染まっていた。こんな一面もあるんだ。
もしかして、根は優しいのかも。
「ありがとう、ぜひ教えてください!」
「原さん、月川さん。準備よろしくお願いしまーす」
「ほら、もたもたしてると先行くわよ」
「うん!」
よし、本番がやってくる。
昨日までしてきたことを信じて頑張ろう!
「生放送まで三、二、一……」
「みなさんこんにちは、今週もこの時間がやってきました! さて、では早速ですが、今日のゲストを紹介させていただきましょう。なんとあのトップアイドルの諏訪光里さんを生み出した、学校、天美学院に通う生徒をお呼びしました!」
「こんにちは、月川のぞみです」
「原梨央奈です!」
わっ、原さん、キャラ作りすごい。わたしに対する態度とは全く違う……。
でもそういうのも勉強になるなぁ。
「なんとお二人は中等部の新入生なんですねー。では早速紹介していきましょう。まずは月川のぞみさん、自己紹介をお願いします」
「はい、わたしは歌とダンスが本当に大好きです。天美学院に入学した理由は、ステージで光り輝いている光里さんを見て憧れたからなんです!」
「ほう、月川さんは諏訪さんに憧れて天美学院に入学したんですね。それは素敵なことですね。ではお聞きしたいのですが、自分のチャームポイントはありますか?」
来た、この質問!
わたしが何度も何度も答えに迷って、彷徨っていたもの。
でも今は自信を持って答えられる。
「はい、それはーー……憧れを追い続けるところです」
「と、言いますと?」
「わたしは、憧れに向かって毎日前進していると思います。少しずつ、小さな一歩だけど、大きな光を目指して頑張り続けることができます。それが自分のチャームポイントだと思っているんです。もちろん、まだまだ光は遠くて見えてないんですけどね」
「……なるほど。それは、誰にも真似することのできない、月川さんだけの光ですね」
わたしだけの、光ーー。
ずっと悩んでいたことを答えることができて、そう言ってもらえて嬉しかった。
わたしのチャームポイントは、憧れに向かって頑張り続けること。それに気づいたのは、その憧れの光里さんがいたから。
これからも少しずつ、光に向かって頑張りたい。
「月川さん、ありがとうございました。では続いて原梨央奈さん、お願いします」
「はい、わたしはドラマで一度主役をやったことがあり、アイドルだけではなく女優の卵としても活動しています」
「いろいろな分野で活動されているんですね。ではご自分のチャームポイントを教えてください」
「はい、それは大切な人を大事にできることだと思います! わたしはファンレターが来たら必ずお返事を書いたり、お仕事ではスタッフさん一人一人に挨拶するようにしたりしているので」
へぇ、すごい……。原さん、やっぱりアイドルしての仕事は好きなんだろうな。
ただ少し照れ屋というか素直になれないだけで、いい子なのかも。
「お二人とも素敵なお話ありがとうございました。では最後に、いくつかコメントを読ませていただきましょう」
コメントを見ると、
“二人とも初めて見たけど可愛い”
“中学一年生だなんて思えないくらい綺麗”
“のぞみちゃん推すねー!”
“梨央奈ちゃんこれからも頑張って!”
というたくさんのメッセージがあった。
目にじわ……と、涙が溢れてくる。わたしにもファンができるなんて。
ソロステージのときの失敗を経験していなかったらきっと強くなれなかった。頑張ってきて良かったと思う。
そんなとき、原さんは画面を見て「え……」と絶句していた。
「おや、原さんどうかいたしましたか?」
「……これ、何?」
わたしとMCの方がコメントを見ると、そこにはありえないことが書かれていた。
“原梨央奈と小学校一緒だったけど、こいつめっちゃ性格も口も悪かったよ。アイドルになって猫被ってるのやばすぎ、みんな騙されないで!”
……なにこれ。いったいどうして?
原さんを見ると、震えていた。何も言えないのだろう、確かに猫を被っているのは事実なのだから。
わたしだってひどいことを言われた。でも!
「みんな、原さんは素敵な子です!」
「え……」
怖い。こんなこと言ったら、“どうして庇うんだ”と炎上するかもしれない。
でも、見過ごせないよ。大切な仲間なんだから。
「確かに口は悪いし、言葉もきついときがあります。でも、原さんは誰よりもアイドルのことを知っている子です、ファンや身近な人を大切にする子です!」
「……っ」
「この番組が始まる前、メイクのことを何も知らないわたしに、今度教えてあげるって言ってくれました。素直になれないだけで、原さんはきっと優しい子なんだろうなって思いました」
ぎゅっと拳を強く握りしめる。
だから……!
「お願いです、原さんを悪く言わないでください! 原さんはアイドルとして、とても素敵な人だから!」
わたしは頭を下げた。
MCの方が何とかいい感じに生放送を切り上げてくれた。
わたしが口出ししてしまったことで、番組に支障がなかったか心配だ。それに原さんも、ずっとひとりで隅っこに座っている。
「あっ、月川さーん」
「はい」
「さっきはありがとうございました。月川さんが言ってくれなければあのまま原さんが炎上していたと思います。これ……見てください」
そう言ってスタッフさんに見せられたのは、ネットの掲示板だった。
“梨央奈ちゃんはわたしたちファンのことを一番に想ってくれてるよね”
“わたしたちは味方だよ、梨央奈ちゃん!”
“のぞみちゃんのおかげで梨央奈ちゃんの素敵な一面を知れたよ”
“ふたりとも、ありがとう!”
「これ、って」
「月川さんがあんなふうに言ってくれたおかげで、原さんは炎上しなかったんです。むしろお二人のファンも増え、番組への感謝のメッセージもたくさん来てるんです」
「感謝……?」
「はい。あんな素敵な新人アイドルの二人をゲストに呼んでくれてありがとう、という感謝です。それは全て月川さんのおかげです」
スタッフさんみんな、わたしに笑顔を向けてくれた。
あのとき、勇気を出したおかげで原さんのことを守ることができたんだ。本当に……良かった。
原さんもこのことを知ったのか元気を取り戻し、二人で学園まで帰ることにした。
「ふー、疲れたね、原さん」
「……ねぇ、あんた、どうしてわたしを庇ったの? わたしはあんたにいろいろ言ったのに」
「え、だって……原さんが本当はいい子だってことに気づいたから。それに大切なライバルだから」
そう言うと、原さんは俯いていた顔をやっと上げてくれた。
その顔は今までよりもずっと穏やかな目をしている気がする。
「素直になれないのも、照れ屋なのも全部原さんのーー梨央奈ちゃんのいいところだってわたしは思うよ」
「っ、もう、何であんたはそんなにお人好しなの。でもそれがわたしにはなくて羨ましい。ありがとう……のぞみ」
「うん!」
本当の梨央奈ちゃんのことを知れた気がして、何だかすごく嬉しい。
大切なライバルと一緒に、これからも憧れに向かって頑張ろう!
わたしは近藤先生に道順を教えてもらい、電車でスタジオまで向かった。それも、原さんと一緒に。
原さんは緊張とかしないのだろうか。きっとしないんだろうな、こんな経験たくさん積んでるんだろうし。
「ねぇ、スタジオの最寄り駅ってどこなのよ」
「えっ、次の駅だけど」
「ふーん」
あれ、もしかして意外と電車慣れしてないのかな。
わたしも電車が得意というわけではないけれど、天美学院に通学していくうちに慣れるようになった。
駅に着き、わたしはマップを見ながらスタジオへ歩いていく。原さんも何も言わずに着いてきた。
「ここだ! 原さん、着いたよ」
声を掛ける前に、原さんはもうスタジオの中へ入ってしまった。
もう、自分勝手な人だなぁ。
「おはようございます!」
「原梨央奈さん、月川のぞみさんおはようございます!」
「お二人はこちらへ」
そう言って案内されたのは、メイクルームだった。
……うわぁ、すごい! コスメがキラキラしてる!
あまりメイクの経験はないし、プロにやってもらうなんて初めてだ。嬉しい。
「月川さん、こちらにお掛けください」
「あっ、よろしくお願いします」
「あら、ここに小さいニキビができちゃってますね。コンシーラーで隠しますのでご安心くださいね」
「ありがとうございます」
すごい、スタッフさんて何でもできるんだ。
そう感心していると、それを見ていた原さんが睨みつけてきた。
「ちょっとあんた、アイドルなのに肌管理もできないの? ニキビだなんて信じられない」
「あっ、そっか。確かに。原さん、注意してくれてありがとう」
「なっ……!」
何か言いたげな顔をしていたけれど、何も言ってこなかった。
確かに嫌な言い方されたけど、でも事実だもん。肌管理もこれから徹底してやっていかないと!
「よし、月川さん終わりましたよ」
目を開けて鏡を見ると、別人みたいに可愛く仕上がっていた。
すごい、これがわたし……?
原さんはもともと自分でメイクをしていたようで、もうとっくに終わっていた。
「原さん、メイク得意なの?」
「はぁ? 当たり前でしょ。できて当然。なに、あんたはできないの?」
「うん、実はやったことあんまりないんだ。でもメイクって魔法みたいに変われるんだね! これから勉強してみる」
「……ふん。どうしてもって言うなら、教えてあげないこともないけどっ」
え……!
原さんの顔や耳まで真っ赤に染まっていた。こんな一面もあるんだ。
もしかして、根は優しいのかも。
「ありがとう、ぜひ教えてください!」
「原さん、月川さん。準備よろしくお願いしまーす」
「ほら、もたもたしてると先行くわよ」
「うん!」
よし、本番がやってくる。
昨日までしてきたことを信じて頑張ろう!
「生放送まで三、二、一……」
「みなさんこんにちは、今週もこの時間がやってきました! さて、では早速ですが、今日のゲストを紹介させていただきましょう。なんとあのトップアイドルの諏訪光里さんを生み出した、学校、天美学院に通う生徒をお呼びしました!」
「こんにちは、月川のぞみです」
「原梨央奈です!」
わっ、原さん、キャラ作りすごい。わたしに対する態度とは全く違う……。
でもそういうのも勉強になるなぁ。
「なんとお二人は中等部の新入生なんですねー。では早速紹介していきましょう。まずは月川のぞみさん、自己紹介をお願いします」
「はい、わたしは歌とダンスが本当に大好きです。天美学院に入学した理由は、ステージで光り輝いている光里さんを見て憧れたからなんです!」
「ほう、月川さんは諏訪さんに憧れて天美学院に入学したんですね。それは素敵なことですね。ではお聞きしたいのですが、自分のチャームポイントはありますか?」
来た、この質問!
わたしが何度も何度も答えに迷って、彷徨っていたもの。
でも今は自信を持って答えられる。
「はい、それはーー……憧れを追い続けるところです」
「と、言いますと?」
「わたしは、憧れに向かって毎日前進していると思います。少しずつ、小さな一歩だけど、大きな光を目指して頑張り続けることができます。それが自分のチャームポイントだと思っているんです。もちろん、まだまだ光は遠くて見えてないんですけどね」
「……なるほど。それは、誰にも真似することのできない、月川さんだけの光ですね」
わたしだけの、光ーー。
ずっと悩んでいたことを答えることができて、そう言ってもらえて嬉しかった。
わたしのチャームポイントは、憧れに向かって頑張り続けること。それに気づいたのは、その憧れの光里さんがいたから。
これからも少しずつ、光に向かって頑張りたい。
「月川さん、ありがとうございました。では続いて原梨央奈さん、お願いします」
「はい、わたしはドラマで一度主役をやったことがあり、アイドルだけではなく女優の卵としても活動しています」
「いろいろな分野で活動されているんですね。ではご自分のチャームポイントを教えてください」
「はい、それは大切な人を大事にできることだと思います! わたしはファンレターが来たら必ずお返事を書いたり、お仕事ではスタッフさん一人一人に挨拶するようにしたりしているので」
へぇ、すごい……。原さん、やっぱりアイドルしての仕事は好きなんだろうな。
ただ少し照れ屋というか素直になれないだけで、いい子なのかも。
「お二人とも素敵なお話ありがとうございました。では最後に、いくつかコメントを読ませていただきましょう」
コメントを見ると、
“二人とも初めて見たけど可愛い”
“中学一年生だなんて思えないくらい綺麗”
“のぞみちゃん推すねー!”
“梨央奈ちゃんこれからも頑張って!”
というたくさんのメッセージがあった。
目にじわ……と、涙が溢れてくる。わたしにもファンができるなんて。
ソロステージのときの失敗を経験していなかったらきっと強くなれなかった。頑張ってきて良かったと思う。
そんなとき、原さんは画面を見て「え……」と絶句していた。
「おや、原さんどうかいたしましたか?」
「……これ、何?」
わたしとMCの方がコメントを見ると、そこにはありえないことが書かれていた。
“原梨央奈と小学校一緒だったけど、こいつめっちゃ性格も口も悪かったよ。アイドルになって猫被ってるのやばすぎ、みんな騙されないで!”
……なにこれ。いったいどうして?
原さんを見ると、震えていた。何も言えないのだろう、確かに猫を被っているのは事実なのだから。
わたしだってひどいことを言われた。でも!
「みんな、原さんは素敵な子です!」
「え……」
怖い。こんなこと言ったら、“どうして庇うんだ”と炎上するかもしれない。
でも、見過ごせないよ。大切な仲間なんだから。
「確かに口は悪いし、言葉もきついときがあります。でも、原さんは誰よりもアイドルのことを知っている子です、ファンや身近な人を大切にする子です!」
「……っ」
「この番組が始まる前、メイクのことを何も知らないわたしに、今度教えてあげるって言ってくれました。素直になれないだけで、原さんはきっと優しい子なんだろうなって思いました」
ぎゅっと拳を強く握りしめる。
だから……!
「お願いです、原さんを悪く言わないでください! 原さんはアイドルとして、とても素敵な人だから!」
わたしは頭を下げた。
MCの方が何とかいい感じに生放送を切り上げてくれた。
わたしが口出ししてしまったことで、番組に支障がなかったか心配だ。それに原さんも、ずっとひとりで隅っこに座っている。
「あっ、月川さーん」
「はい」
「さっきはありがとうございました。月川さんが言ってくれなければあのまま原さんが炎上していたと思います。これ……見てください」
そう言ってスタッフさんに見せられたのは、ネットの掲示板だった。
“梨央奈ちゃんはわたしたちファンのことを一番に想ってくれてるよね”
“わたしたちは味方だよ、梨央奈ちゃん!”
“のぞみちゃんのおかげで梨央奈ちゃんの素敵な一面を知れたよ”
“ふたりとも、ありがとう!”
「これ、って」
「月川さんがあんなふうに言ってくれたおかげで、原さんは炎上しなかったんです。むしろお二人のファンも増え、番組への感謝のメッセージもたくさん来てるんです」
「感謝……?」
「はい。あんな素敵な新人アイドルの二人をゲストに呼んでくれてありがとう、という感謝です。それは全て月川さんのおかげです」
スタッフさんみんな、わたしに笑顔を向けてくれた。
あのとき、勇気を出したおかげで原さんのことを守ることができたんだ。本当に……良かった。
原さんもこのことを知ったのか元気を取り戻し、二人で学園まで帰ることにした。
「ふー、疲れたね、原さん」
「……ねぇ、あんた、どうしてわたしを庇ったの? わたしはあんたにいろいろ言ったのに」
「え、だって……原さんが本当はいい子だってことに気づいたから。それに大切なライバルだから」
そう言うと、原さんは俯いていた顔をやっと上げてくれた。
その顔は今までよりもずっと穏やかな目をしている気がする。
「素直になれないのも、照れ屋なのも全部原さんのーー梨央奈ちゃんのいいところだってわたしは思うよ」
「っ、もう、何であんたはそんなにお人好しなの。でもそれがわたしにはなくて羨ましい。ありがとう……のぞみ」
「うん!」
本当の梨央奈ちゃんのことを知れた気がして、何だかすごく嬉しい。
大切なライバルと一緒に、これからも憧れに向かって頑張ろう!