憧れのセカイへ!
第三章 絆で結ばれた憧れの光
 もう季節は梅雨が終わって制服も衣替えをし、半袖になった。
 天美学院に入学してから、約三ヶ月が経ったんだ。時はあっという間に過ぎていってしまう。その短い時間のなかで、自分のできる最大限の努力をしなければいけない。
 もうすぐ夏休みが始まるから、最近あまり休めてなかった分、思いきり休めたらいいな。

 「おはよう、みんな」

 「おはようございます!」

 いつもより近藤先生がワクワクしているような気がする。
 もしかして、何かイベントが!?

 「今日は九月に開催される、とびきりのイベントを紹介する」

 「何だろう……?」

 「あっ、もうすぐ開催される天美学院のイベントといえば確かあれじゃない?」

 そういえば、天美学院のことが詳しく書かれているパンフレットを読んだとき、あのコンテストが開催されると書いてあった気がする。

 「その名は……チームコンテスト」

 チームコンテスト……!
 胸が高鳴っている。名前だけは知っていたけれど内容は全く知らないから、初めて参加するコンテストだけにすごく楽しみ。

 「チームコンテストとは、二人から三人のチームを組んで、そのチームで参加するんだ。もちろん歌やダンスのレッスンもチームごと。仲間と友情を深めることや、二月に開催されるトップコンテストの練習として、毎年開催しているコンテストだ」

 仲間と友情を深める。とても素敵なテーマだと思う。
 今までは歌やダンスのレッスンはひとりですることが多かったけれど、これからはチームでできるんだ。

 「チームの相手は同い年の友達でも、中等部や高等部の先輩でも構わない。それは自分の好きなように組みなさい」

 「はい!」

 「夏休み中も校舎は空いてるから、好きに使えるんだ。では今日から仲間とチームを組み、決まったら先生のところへ言いに来て。以上、解散!」

 どうしよう。わたしは誰とチームを組もう……?
 欲を言えば、葵ちゃんと組みたい。長年の付き合いだし、一番近くにいてくれる友達だから。
 でも葵ちゃんはわたしよりもずっと高みにいるし、釣り合わないよね。

 「ちょっと、のぞみ、何してんのよ」

 「あっ、梨央奈ちゃん。ちょっと誰と組むか考え込んじゃって」

 生放送の番組の日から、わたしは時々梨央奈ちゃんと会話するようになった。

 「のぞみらしくないじゃない。あんたは自分が組みたいと思った相手を誘いに行くタイプでしょ?」

 「そう、なのかなぁ? 梨央奈ちゃんはもう決まってるんだよね?」

 「当然! わたしは中等部の三年生の先輩と組むの。お仕事で一緒にやっていくうちに仲良くなったのよ」

 へぇ、すごい……!
 さすが梨央奈ちゃん、誰とでも仲良くなる才能があるのかも。

 「ちなみになんて言う人?」

 「凛香先輩」

 「えっ、凛香先輩!? って、光里さんのお手伝い係の?」

 驚いた。まさか凛香先輩と梨央奈ちゃんがチームを組むなんて。想像もできない。

 「そうよ、すごいでしょ。あの光里さんのお手伝い係をしている先輩とチームを組むなんて。ていうか光里さん付近の方々と話すことなんてとっても珍しいことなんだから!」

 「わたしもね、入学した日に話したことあるよ。少しだけ光里さんのお手伝いを任されて。そのときに凛香先輩と話したの、すごく優しいよね」

 「なっ……! あんた、凛香先輩と話したこと、あるの」

 「うん、少しだけどね」

 梨央奈ちゃんは啞然としていた。
 わたしみたいな新人アイドルが光里さんのお手伝い係の凛香先輩と話したことがあるなんて、全くもって思わなかったらしい。

 「でもそんな凛香先輩とチームを組むなんて、梨央奈ちゃんさすがだね!」

 「ふ、ふん、当然でしょ。まぁ、あんたも少しは良い人と組めるんじゃない? 最近お仕事たくさん来てるみたいだし。わたしほどではないけどね?」

 これは、梨央奈ちゃんが遠回しに褒めてくれたということだ。
 全く、いつになっても素直になれないのは変わらないんだから……。
 そういうところが可愛いんだけどね。

 「うん、そうだね、ありがとう。頑張って誘ってみるよ。梨央奈ちゃんも行ってらっしゃい」

 「のぞみ、共に闘いましょう。今度こそ負けないんだからねっ」

 「わたしも負けないよ!」

 そう言うと、梨央奈ちゃんは笑みを浮かべた。
 梨央奈ちゃんも凛香先輩を誘いに行ったことだし、わたしも勇気を出して誘わなきゃ。

 「……葵ちゃん!」

 「のぞみ」

 「わたしと、チームを組んでください」

 そう言うと、葵ちゃんは差し出したわたしの手をぎゅっと握りしめてくれた。

 「こちらこそ、よろしくお願いします」

 「えっ……! 葵ちゃん、わたしでいいの?」

 「もちろん。何でそんなこと言うのよ」

 「だって葵ちゃんはわたしよりずっとプロの世界にいるから、釣り合わないんじゃないかなって」

 素直に胸に抱えていた不安を口にすると、葵ちゃんはおかしそうにふっ、と噴き出した。

 「何それ、そんなの関係ないでしょ。わたしはのぞみと組みたかった。のぞみもわたしと組みたかった。その気持ちがあればいいんじゃない」

 「そっか、そうだよね。えへへ、嬉しいな」

 「……わたしも偉そうに言えないんだけどね。のぞみは原さんと組むのかと思って、声を掛けられなかったの。最近ふたり仲良いから」

 葵ちゃんは見たことない表情をしていた。これは……ちょっぴり、ヤキモチ?

 「梨央奈ちゃんとは仲良くなったけど、葵ちゃんとチームを組みたいって思いは変わらないよ。まさか葵ちゃんにもそんな気持ちがあるなんてー」

 「ちょっ、恥ずかしいから忘れてよね!」

 「うーん、どうしようかなぁ」

 「もう、のぞみ、からかわないでっ」

 初めて葵ちゃんの本音を見れたような気がして、本当に嬉しい。
 これからひとりではなく、隣に葵ちゃんがいる。それだけで安心して頑張ることができそう。

 「と、おふざけは置いておいて。チーム名どうする?」

 「え、チーム名?」

 「決まってるでしょ、チーム名考えないと」

 あ、そっか。チーム名も考えないといけないの、すっかり忘れてた。
 でもわたしはネーミングセンスなんてないし、良いアイデアが全く浮かばない。

 「……思いついたんだけど、Solatio(ソラティオ)ってどうかな?」

 「そらてぃお?」

 「うん、意味は陽だまり。わたしの名前の“葵”と、のぞみのチャームポイントの笑顔が合わさってぴったりだと思うの。どう、かな」

 Solatio……!
 すごくかっこよくてオシャレな名前。そしてわたしたちにぴったりだと思う。

 「いいね、そうしよう!」

 「ありがとう! わたしたちは今日から……Solatio」

 先生から配られた紙に、名前とチーム名を書いた。
 本当にわたしたちにぴったりで、もう馴染んでいる。
 Solatioとして、葵ちゃんと一緒にチームコンテストで優勝を目指そう!
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