優秀な後輩で私も嬉しく思うので、どうぞ『先輩離れ』してください
 目が覚めた瞬間、頭の奥がずきんと痛んだ。

「…っ」

 思わず顔をしかめて、布団の中で小さく丸くなる。喉も乾いているし、何より頭が重い。完全に飲みすぎた。
 ぼんやりとした意識のまま隣の気配に気づいて視線を向けると、すでに起きていたらしい彼と目が合った。

「おはようございます」

 いつも通りの落ち着いた声に、どことなく安心してしまう。

「おはよ…」

 返事をしたはいいものの、自分の声がひどくかすれていて嫌になる。彼はそんな様子を見て、ふっと苦笑した。

「見事に二日酔いですね」
「うるさい…」

 否定できないのが余計に悔しい。こめかみを押さえながら、のろのろと体を起こす。その動きだけで、またじわっと頭が痛む。

「水、飲みます?」
「ほしい…」

 素直に頷くと、彼はベッドから降りてすぐにペットボトルを持って戻ってきた。差し出されたそれを受け取って、1口飲むと、少しだけ楽になる気がした。

「ありがとう…。本当に飲みすぎちゃった」
「どういたしまして。まあ、飲み直しで結構飲みましたからね」

 そういう彼は、全く引き摺っていない様子。

「一ノ瀬君は二日酔いにならなかったの?」
「はい。昨日ぐらいの量なら、何ともないですよ」

 結構な量を飲んだはずなのにケロッとしている彼を恨めしげに見上げる。すっかり騙されたことが、今更鮮明に思い出された。

「…本当に潰れたとしても介抱してあげないからね」
「そんな寂しいこと言わないでくださいよ」

 どれだけ関係性が変わったとしても、結局のところは煮ても焼いても食えない後輩。
 その事実を改めて突きつけられた私は、呆れを含んだため息を吐いたのだった。
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