優秀な後輩で私も嬉しく思うので、どうぞ『先輩離れ』してください
食後の満足感に満ちた胃と心が少しずつ落ち着いていく。こんなに何もしないのはいつぶりだろうか。テレビもつけず、雨音だけが響くリビングでぼーっとしていると、ガチャリと扉が開いた。現れたのは、お風呂上がりのラフな格好をした一ノ瀬君。
「お風呂あがりました」
タオルを頭に被せた彼は、キッチンをチラッと見てから隣に座った。
「洗い物、ありがとうございました」
「ううん、いいのよ。お風呂も先にいただいたし、ご飯もご馳走になったじゃない。むしろ、洗い物だけで申し訳ないぐらいよ」
食後、洗い物までやってくれようとした彼を言いくるめて、何とか洗い物の権利を獲得した。客人と言えど急に押し掛けた立場だし、何かしらやらないと気が済まない。その気持ちをつらつらと並べた結果、先に折れてくれたのは一ノ瀬君だった。
いよいよやるべきこともなくなり、静かな時間が流れる。不思議なことに、この無音の空間を気まずいと思うことはなかった。むしろ心地よく、肩の力がどんどん抜けていくのを感じた。
ふと、隣から視線を感じる。不思議に思ってそちらを見ると、一ノ瀬君がじっと私の方を見つめていた。
「どうしたの?」
「まだ髪を乾かしてなかったんだなと思ったんです。湯冷めしますよ」
その指摘に目を逸らす。正直髪を乾かすのは面倒なため、いつも自然乾燥で粗方乾かしてからドライヤーを使うようにしていた。そこそこ長い髪は、お風呂上がりすぐのドライヤーではなかなか乾いてくれない。
私の反応で色々察したらしい一ノ瀬君は、おもむろに立ち上がる。そして、私の反応を待たずに後ろへと回り込んできた。
「ちょっ、何…?」
「僕が先輩の髪を乾かしますよ」
抗議する間もなく、彼の大きな手が私の頭にポンと置かれた。分厚いタオル越しに伝わる彼の体温。そのまま背後から丁寧に私の髪を拭き始めた。
「自分でやるからいいわよ」
「じっとしててください。先輩、スウェットのサイズが全然合ってないので大きく動くと肩がはだけますよ」
その指摘に、思わず固まってしまう。確かに彼の服は私には大きすぎて、気を抜くと首元が大きく開いてしまう。動くわけにもいかなくなった私を見て、再び一ノ瀬君は手を動かし始めた。
「熱かったら言ってくださいね」
熱風と共に、髪をサラサラを撫でられる。髪を乾かされているだけのに、頭を撫でられているような感覚になる。懐かしい感覚を密かに堪能していると、程なくして風が止んだ。見上げると、今度は自分の髪を乾かしている一ノ瀬君と目が合った。
「お礼に乾かそうか?」
「いえ。僕はすぐに乾くので大丈夫ですよ」
その言葉は本当だったようで、彼はすぐにドライヤーのスイッチを切った。そのままコードをまとめると、片付けまでしてくれてしまう。テキパキと動き続ける彼に、やはり感心してしまう。
「お風呂あがりました」
タオルを頭に被せた彼は、キッチンをチラッと見てから隣に座った。
「洗い物、ありがとうございました」
「ううん、いいのよ。お風呂も先にいただいたし、ご飯もご馳走になったじゃない。むしろ、洗い物だけで申し訳ないぐらいよ」
食後、洗い物までやってくれようとした彼を言いくるめて、何とか洗い物の権利を獲得した。客人と言えど急に押し掛けた立場だし、何かしらやらないと気が済まない。その気持ちをつらつらと並べた結果、先に折れてくれたのは一ノ瀬君だった。
いよいよやるべきこともなくなり、静かな時間が流れる。不思議なことに、この無音の空間を気まずいと思うことはなかった。むしろ心地よく、肩の力がどんどん抜けていくのを感じた。
ふと、隣から視線を感じる。不思議に思ってそちらを見ると、一ノ瀬君がじっと私の方を見つめていた。
「どうしたの?」
「まだ髪を乾かしてなかったんだなと思ったんです。湯冷めしますよ」
その指摘に目を逸らす。正直髪を乾かすのは面倒なため、いつも自然乾燥で粗方乾かしてからドライヤーを使うようにしていた。そこそこ長い髪は、お風呂上がりすぐのドライヤーではなかなか乾いてくれない。
私の反応で色々察したらしい一ノ瀬君は、おもむろに立ち上がる。そして、私の反応を待たずに後ろへと回り込んできた。
「ちょっ、何…?」
「僕が先輩の髪を乾かしますよ」
抗議する間もなく、彼の大きな手が私の頭にポンと置かれた。分厚いタオル越しに伝わる彼の体温。そのまま背後から丁寧に私の髪を拭き始めた。
「自分でやるからいいわよ」
「じっとしててください。先輩、スウェットのサイズが全然合ってないので大きく動くと肩がはだけますよ」
その指摘に、思わず固まってしまう。確かに彼の服は私には大きすぎて、気を抜くと首元が大きく開いてしまう。動くわけにもいかなくなった私を見て、再び一ノ瀬君は手を動かし始めた。
「熱かったら言ってくださいね」
熱風と共に、髪をサラサラを撫でられる。髪を乾かされているだけのに、頭を撫でられているような感覚になる。懐かしい感覚を密かに堪能していると、程なくして風が止んだ。見上げると、今度は自分の髪を乾かしている一ノ瀬君と目が合った。
「お礼に乾かそうか?」
「いえ。僕はすぐに乾くので大丈夫ですよ」
その言葉は本当だったようで、彼はすぐにドライヤーのスイッチを切った。そのままコードをまとめると、片付けまでしてくれてしまう。テキパキと動き続ける彼に、やはり感心してしまう。