優秀な後輩で私も嬉しく思うので、どうぞ『先輩離れ』してください

「恋愛って、そんな綺麗なものじゃないと思うの。付き合ったとしても、一ノ瀬君の期待に応えられないかもしれない。あなたの気持ちにちゃんと返せる自信、私にはない」

 沈黙が落ちる。

 これで諦めてくれる方が、きっと楽だ。

 そう思ったのに、

「返してもらおうなんて、思ってません」

 静かな声が、夜気を震わせた。複雑な感情が混ざり合った声に、いつの間にか下がっていた顔を上げる。

「無理に僕と同じ熱量にならなくてもいいんですよ」

 彼はまっすぐこちらを見ていた。その目は優しさを帯び、慈愛に満ちていた。

「釣り合わなくてもいいんです。平等だけが全てではないと、僕は思っています」
「それは……申し訳ないわよ」
「じゃあ、1つだけお願いがあります」

 風の音に紛れて、微かに震えた彼の声が聞こえた。

「今は振らないでください。せめて、1ヵ月は真剣に考えてみてくれませんか?」

 息が止まる。

「それでも嫌なら、無理なら、その時はちゃんと振ってください。その時に言われた言葉は、どんなものでもしっかり受け止めます」

< 46 / 67 >

この作品をシェア

pagetop