優秀な後輩で私も嬉しく思うので、どうぞ『先輩離れ』してください
「恋愛って、そんな綺麗なものじゃないと思うの。付き合ったとしても、一ノ瀬君の期待に応えられないかもしれない。あなたの気持ちにちゃんと返せる自信、私にはない」
沈黙が落ちる。
これで諦めてくれる方が、きっと楽だ。
そう思ったのに、
「返してもらおうなんて、思ってません」
静かな声が、夜気を震わせた。複雑な感情が混ざり合った声に、いつの間にか下がっていた顔を上げる。
「無理に僕と同じ熱量にならなくてもいいんですよ」
彼はまっすぐこちらを見ていた。その目は優しさを帯び、慈愛に満ちていた。
「釣り合わなくてもいいんです。平等だけが全てではないと、僕は思っています」
「それは……申し訳ないわよ」
「じゃあ、1つだけお願いがあります」
風の音に紛れて、微かに震えた彼の声が聞こえた。
「今は振らないでください。せめて、1ヵ月は真剣に考えてみてくれませんか?」
息が止まる。
「それでも嫌なら、無理なら、その時はちゃんと振ってください。その時に言われた言葉は、どんなものでもしっかり受け止めます」