優秀な後輩で私も嬉しく思うので、どうぞ『先輩離れ』してください

「じゃあ、今日から仮恋人ということで」
「はい。よろしくお願いします」

 嬉しそうに笑う彼には申し訳ないが、これだけは言っておかないと。
 そう思って、1本指を立てて示す。彼はきょとんとしながらも、私の言葉を待ってくれた。
 
「…その中で、1つお願いがあるわ」
「何でもどうぞ」

 真面目に耳を傾けてくれる彼を信じて、口を開く。

「職場では、今まで通りにしましょう。公私混同は絶対にせず、この関係も秘密」
「分かりました」
「ありがとう。…私から一方的に言っちゃったけど、一ノ瀬君からは何かある?」

 一瞬きょとんとして、それから彼は少し考えるように唸る。

「あ、じゃあ」
「どうぞ」

 変に固くなってしまったやり取りにクスクス笑いながら、彼は口を開く。

「仮恋人の期間を決めておきませんか?その期間を過ぎたら、『正式に付き合う』か『別れる』か決めましょう」
「確かにそうね。ズルズル引き摺るのは、お互いに望んでいないものね」

 どれぐらいにしようかな、と考えていると、彼はスマホの画面を見ながら呟いた。

「じゃあ、…半年でどうですか?答えが出たら、それより前に結論を提示してもらっても構いません」
「…そうね。そうしましょう」
「ついでに、僕の誕生日が大体半年後なので祝ってください」
「え、そうなの?」

 ちゃっかりしている後輩に、笑いながら頷く。ちょうど覚えるきっかけをくれたし、何かのお返しはしたい。
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