優秀な後輩で私も嬉しく思うので、どうぞ『先輩離れ』してください
 会議が終了し、役員たちが部屋を出ていく。
 私は忘れ物がないか確認するついでに、1人会議室に残って片付けをしていた。

 その時、廊下から数人の役員たちの話し声が漏れ聞こえてきた。本当は聞かないふりをするつもりだった。それでも、「白石」という名前が聞こえた気がして、つい聞き耳を立ててしまった。

 それが、間違いだった。

「今回の企画、白石くんも頑張っているが……やはり一ノ瀬くんの力が大きいな」
「ああ。あの市場分析の緻密さは、彼女1人では無理だったろう。実質、一ノ瀬くんがリーダーでも良かったくらいだ」
「全くだ。彼がいれば、このプロジェクトは安泰だな」

 手に持っていた資料が、バサリと音を立ててデスクに落ちた。

 嬉しいはずの成功に、冷たい泥を投げつけられたような感覚。
 彼の実力を誰よりも認めているのは、私だ。彼のサポートがなければ、ここまで来られなかったのも事実。

 分かっている。
 自分に実力がないことも、一ノ瀬君が有能なことも。

 けれど、どうにも「白石はいらなかった」と言われているような気がしてならなかった。
 これは嫉妬ではなく、…虚しさ。いや、一言で表せるような感情ではない。もっと複雑で、薄汚い感情だ。

 (……彼が私よりずっと先を行っていることなんて、分かってたはずなのに)

 唇を噛み締め、しばらく俯いたまま動けなかった。
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