優秀な後輩で私も嬉しく思うので、どうぞ『先輩離れ』してください
 温かいはずのお湯が、今はひどく心許ない。
 目を閉じて、膝を抱える。一ノ瀬くんの優しさも情熱的な言葉も、今の私には鋭い刃のように感じられてしまう。

 彼と向き合いたい気持ちと、自分を守るために彼を拒絶したい気持ち。

 ぐちゃぐちゃに混ざり合った感情が、鼻の奥をツンと刺激した。
 こんなことで泣きそうになっている自分さえも嫌に感じる。何なんだ、どうしてこんなにも脆くなってしまったんだ。

(こんな気持ちになるなら、)

 __いや。
 どれだけ時間を戻したとしても、きっと結果は同じことだろう。


 浴室に響くのは、ポタポタと落ちる蛇口からの水音だけだった。



< 56 / 68 >

この作品をシェア

pagetop