優秀な後輩で私も嬉しく思うので、どうぞ『先輩離れ』してください

「え?」
「え?じゃないでしょ!」

 私が真っ赤になって抗議すると、彼は肩をすくめる。

「いや、病人を1人にするのが不安なだけなんですけど…。転んだりする可能性も否定しきれないじゃないですか」
「……」

 真面目な顔だった。あまりにも平然としているので、思わずじっと見つめてしまう。

(……本当に?)

 疑うような視線を向けても、彼はいたって落ち着いた様子だ。

 そのまま数秒、沈黙が流れる。

 もしかして、本当にそういう意味じゃないのだろうか。
 私が勝手に意識しすぎているだけで__

「きーきーかーん」
「え?」

 急に低い声で言われて、思わず目を瞬かせる。一ノ瀬くんは、呆れたように額に手を当てた。

「今、流されて許可出しかけましたよね?」
「…うん」
「先輩のことを好きな男に、下心がないはずないでしょう?もっと危機感持ってください。僕じゃなかったら、とっくに食われてますからね??」

 そう言いながら、彼は立ち上がった。
 文句の1つでも言ってやろうとした時、慣れたように手を取られてしまう。

「ほら、お風呂入りますよ」
「え、ちょ、」

 支えられながらゆっくり立たせられ、そのまま廊下へと連れていかれる。口では怒っているものの、歩く速度は合わせてくれている。何だかんだ優しさが抜けきれない彼に、小さく笑ってしまった。
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