優秀な後輩で私も嬉しく思うので、どうぞ『先輩離れ』してください

「…ったく」

 ふっと、彼の表情が崩れた。次の瞬間、額に柔らかい感触が触れる。

「ぇ」

 思わず瞬きをする。何が起きたのか理解するより先に、ひんやりとした温もりがじんわりと広がった。彼の大きな手が、私の額にそっと当てられている。

「熱は下がったようですが、まだ安静ですね」

 落ちてきた声はさっきまでの熱を帯びたものとは違い、ひどく落ち着いていた。拘束されていた手も、いつの間にか解かれている。

「昨日あれだけしんどそうだったのに、無理をするからですよ」

 少しだけ呆れたように言いながら、彼はゆっくりと体を起こした。さっきまでの空気が、まるで嘘みたいに引いていく。

「……期待してたんですか」
「っ、してない!」

 反射的に否定すると、くすっと小さく笑われた。視線を逸らせば、彼は軽く肩をすくめる。それから、ベッドの端に座り直してこちらを見下ろした。

「でも、念のため今日は安静です」
「え?」
「夜まで外出禁止ですから」
「はい!?」

 ぴしゃりと言い切られる。抗議の声を上げようとしたが、それよりも早く彼は口を開いた。
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