優秀な後輩で私も嬉しく思うので、どうぞ『先輩離れ』してください
 小さく息を吐いて、視線を画面に戻す。その時だった。

「……寒くないですか?」

 不意に声をかけられる。

「え?」
「さっきから、ちょっと震えてる気がしたので」

 言われて初めて、自分の体が少し強張っていることに気づいた。熱のせいか、それとも別の理由かは分からない。

「大丈夫……だと思うけど」
「…ちょっと待っててください」

 そう言って、彼は立ち上がる。映画が流れたままだったので慌ててリモコンで止めれば、一気に現実に戻ってきた気がした。少しして戻ってきた彼の手には、ブランケットがあった。

「どうぞ、使ってください」
「ありがとう」

 受け取って膝にかけると、じんわりと温かさが広がる。彼は相変わらずの格好だったため、畳んで膝にかけていたブランケットを広げる。思った以上の大きさがあり、2人で使っても余裕そうだ。

「先輩?」
「一緒に使わない?」

 そう言えば、小さく笑われた。適度に開けられていた距離は詰められたため、さっきよりも距離が近い。それでも、不思議とさっきまでの落ち着かなさが薄れていった。

 映画の中の静かな会話やゆっくりと流れる時間に身を任せながら、隣にある体温に安心する。気づけば、さっきまでよりもずっと自然に呼吸ができていた。

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