優秀な後輩で私も嬉しく思うので、どうぞ『先輩離れ』してください
 軽やかな音楽とともに、明るい映像が広がる。さっきまでとは空気がまるで違う。色もテンポも、全部が賑やかだ。

「…なるほど」

 隣で一ノ瀬君が小さく呟いた。

「何、その反応」
「いえ。こういうのはあまり観ないので、新鮮だなと思ったんです。これはこれで面白いですね」

 そう言って、彼は視線を画面に戻した。けれどどこか、さっきよりも少しだけ柔らかい表情に見える。

 物語が進むにつれて、登場人物たちの距離が近づいていく。すれ違ったり、素直になれなかったり、それでも少しずつ関係が変わっていく様子に、胸の奥がくすぐったくなる。

(…やばいかも)

 こういう作品を一ノ瀬君と一緒に観るのは気まずいわけじゃない。でも、妙に意識してしまう。登場人物たちの色々が、今の自分と妙に重なってしまう。

 逃げるように横を見る。一ノ瀬君は相変わらず静かに観ているけれど、さっきとは違って、時々ほんのわずかに表情が動いているのが分かった。驚いたり、少しだけ困ったように眉を寄せたり。

(ちゃんと観てくれてるじゃん)

 それがなんとも嬉しかった。
 そんなことを思った時、映画の中で印象的なシーンが流れた。想いを伝える場面。少しだけ不器用で、でも真っ直ぐな言葉。思わず息を止めて見入ってしまう。

 その瞬間__

「…こういうの、いいですね」

 ぽつりと、隣から声が落ちた。
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