優秀な後輩で私も嬉しく思うので、どうぞ『先輩離れ』してください
「え?」

 驚いて隣を見るも視線は交わらない。一ノ瀬君は画面を見つめたまま、再び口を開いた。

「分かりやすさがいいですね。だからこそ、ちゃんと言葉にしないと伝わらないもどかしさがいい味を出してます」

 映画の中では、ようやく想いが通じて、少しだけ照れたように笑い合う2人が映っている。その空気が、ほんの少しだけこちらにも流れ込んできた気がした。

「先輩」
「なに?」

 自然と声が小さくなる。意味がないのは分かりつつ、登場人物たちの空気を邪魔しないような配慮を無意識の内にしてしまう。

「こういう映画、また教えてください」
「……いいけど」

 なんとかそれだけ返すと、一ノ瀬君は小さく笑った。

「また一緒に観ましょうよ」

 その一言が、思った以上に胸に残った。

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