優秀な後輩で私も嬉しく思うので、どうぞ『先輩離れ』してください
そんなやり取りをしているうちに、気づけば見慣れた家の前にたどり着いていた。さっきまで続いていた会話が途切れたことで、急に現実に引き戻されたような気がする。
「ここで大丈夫」
足を止めてそう言うと、彼も同じように立ち止まった。
「はい」
短い返事。どうやら線引きはしっかりしているようで、彼がこれ以上無理に送ろうとすることはない。
ほんの少しの沈黙が落ちる。夜の静けさが、そのまま私たちの間に流れ込んできたみたいだった。街灯の明かりがぼんやりと足元を照らして、離れているはずの距離をどこか曖昧にする。
このまま何も言わずに別れるのが、少しだけ惜しいと思った。
だから、ほとんど衝動みたいに口を開く。
「…また、明日」
言ってから、ほんの少しだけ後悔する。いつもならこんなこと、わざわざ言わないのに。変に思われたら嫌だな、と思ってしまう。しかし、当の一ノ瀬君は目を丸くした。そして、すぐにその表情がやわらぐ。
「ええ」
小さく、静かに頷く。
「また明日」
その声は、思っていたよりも優しかった。胸の奥が、じんわりと温かくなる。
それ以上は何も言わずに、彼はくるりと背を向けた。迷いのない足取りで、ゆっくりと夜の中へと離れていく。その背中を、少しだけ目で追う。さっきまで隣にいたはずなのに、距離が開いていくのがやけに早く感じる。完全に見えなってから、ようやく視線を外した。
小さく息を吐いてから、鍵を取り出す。いつもと同じはずの玄関の前なのに、どこか少しだけ違って見えた。扉を開けて中に入る。静かな自分の部屋の空気に包まれて、ようやく1人になった実感が戻ってくる。
それでも、さっきまでの会話も隣にあった体温も、まだちゃんと残っていた。
「……また明日、か」
小さく呟いてみる。たったそれだけの約束なのに、不思議と心が軽くなる。
靴を脱ぎながら、ふっと笑みがこぼれた。
「ここで大丈夫」
足を止めてそう言うと、彼も同じように立ち止まった。
「はい」
短い返事。どうやら線引きはしっかりしているようで、彼がこれ以上無理に送ろうとすることはない。
ほんの少しの沈黙が落ちる。夜の静けさが、そのまま私たちの間に流れ込んできたみたいだった。街灯の明かりがぼんやりと足元を照らして、離れているはずの距離をどこか曖昧にする。
このまま何も言わずに別れるのが、少しだけ惜しいと思った。
だから、ほとんど衝動みたいに口を開く。
「…また、明日」
言ってから、ほんの少しだけ後悔する。いつもならこんなこと、わざわざ言わないのに。変に思われたら嫌だな、と思ってしまう。しかし、当の一ノ瀬君は目を丸くした。そして、すぐにその表情がやわらぐ。
「ええ」
小さく、静かに頷く。
「また明日」
その声は、思っていたよりも優しかった。胸の奥が、じんわりと温かくなる。
それ以上は何も言わずに、彼はくるりと背を向けた。迷いのない足取りで、ゆっくりと夜の中へと離れていく。その背中を、少しだけ目で追う。さっきまで隣にいたはずなのに、距離が開いていくのがやけに早く感じる。完全に見えなってから、ようやく視線を外した。
小さく息を吐いてから、鍵を取り出す。いつもと同じはずの玄関の前なのに、どこか少しだけ違って見えた。扉を開けて中に入る。静かな自分の部屋の空気に包まれて、ようやく1人になった実感が戻ってくる。
それでも、さっきまでの会話も隣にあった体温も、まだちゃんと残っていた。
「……また明日、か」
小さく呟いてみる。たったそれだけの約束なのに、不思議と心が軽くなる。
靴を脱ぎながら、ふっと笑みがこぼれた。