トップアイドルは白衣の天使に恋をする
それからの数日は、いつも以上に慌ただしかった

ICUの通常業務に加えて、ドラマ撮影の打ち合わせまで入ってきたからだ

「一ノ瀬さん、このシーンなんですけど、
除細動のタイミングって実際こんな感じですか?」

会議室では台本を片手にスタッフ達が次々と質問を投げかけてくる

「もう少しテンポ早いかもしれません
実際の急変って、みんなもっと同時に動くので」

「なるほど……!」

監督や脚本家さん達は熱心にメモを取っていた

隣では林くんが医療物品を並べながら説明している

「これはCV挿入の時に使うセットですね〜
ドラマだと省略されがちなんですけど、リアル感出すなら置いといた方が絶対いいっす」

「おぉ〜!」

スタッフさん達が感心したように声を上げる

……すごいなぁ

普段はおちゃらけてるのに、こういう時の林くんは本当に頼りになる

知識量も多いし、説明も上手い

しかも相手に合わせて言葉を変えられるから、スタッフさん達にもすごく分かりやすいみたいだ

「林くん、こういうの向いてるね」

思わずそう言うと

「え、まじですか?!」

パァッと顔が明るくなる

「うん、すごく分かりやすい」

「……っしゃあ!」

ガッツポーズ

すると後ろで見ていた師長さんがボソッと呟いた

「ほんと単純なんだから……」

「師長なんか言いました?!」

「別に〜?」

そんなやり取りに周囲がクスクス笑う

撮影準備は想像以上に細かかった

医療用語の発音

点滴ルートの位置

モニター波形

カルテの持ち方

一つでも違和感があると、医療者が見た時にすぐ分かってしまう

だから監督達もかなり本気だった

「やっぱプロってすごいねぇ……」

休憩中、林くんがペットボトル片手に呟く

「ん?」

「いや、ドラマってもっと適当に作ってるんかと思ってました」

「あ〜、でも今回かなりリアル重視みたいだもんね」

「ドラマに俺の名前乗るかな〜」

なんて、楽しそうにしている林くんをみて思わず頬が緩んだ



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