トップアイドルは白衣の天使に恋をする
蒼依side

シャドーイング4日目。

だいぶ薬剤師の仕事についても分かってきた

「へぇ〜、ICUって薬こんな細かく管理してるんだ」

俺は薬剤部で説明を受けながら感心したように棚を見回す。

ドラマで使う薬剤知識の勉強。

点滴。

昇圧剤。

鎮静薬。

一般人には聞き慣れない名前ばかりだ。

「ICUは特にミスが許されないですからね」

薬剤師さんが苦笑しながら答える。

「一ノ瀬さんとか、めちゃくちゃ厳しいですよ〜」

「一ノ瀬?」

聞き覚えのある名前に反応する。

「あ、ICUの看護師さんです。すごい美人で有名なんですけど、仕事になると怖いんですよ〜」

「へぇ?」

自然と興味が湧く。

「この前も新人が薬剤投与ミスしかけた時、一瞬で気づいて止めてましたし」

「すげぇな」

「しかもドクターヘリも乗ってるんで。うちの病院じゃかなり有名ですよ」

ヘリ。

ICU。

美人。

情報量が多い。

「……もしかして、その人って黒髪で目おっきいです?」

「あ、そうですそうです!」

薬剤師さんは頷いた。

「え、知ってるんですか?」

「いや〜……ちょっとだけ」

――あぁ、あの人か。

前にちらっと見かけた。

たしか奏がやたらテンション上がってた相手。

「ふーん……」

なんか面白そう。

陽貴さんも何かある感じしたしなぁ〜。

あの人の名前出た時、

一瞬だけ空気変わったんだよな。

まぁ俺以外気づいてなさそうだったけど。

「一ノ瀬さんって、医師からも信頼厚いんですよ」

薬剤師さんが続ける。

「志田先生とか特にですね。あの二人揃うと“今日は荒れる”って言われてます」

「荒れる?」

「急変とか緊急入院とか、なぜかめちゃくちゃ重なるんです」

「あははっ、なにそれおもろ」

でもそうやって名前が出るって、

本当に中心で働いてる人なんだろうな。

ただ綺麗なだけじゃなくて、

ちゃんと実力ある人。

だからみんなあの人の話する時、尊敬混じってるんだ。

「しかも一ノ瀬さん、全然自分が美人って自覚ないんですよね〜」

「え、そうなん?」

「はい。本人めちゃくちゃ天然です」

天然。

あー。

なんか分かるかも。

奏が“無自覚って怖ぇ”ってブツブツ言ってたし。

「でもモテるでしょうね〜。院内でも結構人気ですよ」

「へぇ〜……」

――院内人気No.1看護師って感じか。

そりゃ奏みたいな犬系は秒で懐くわ。

……で。

問題はうちのリーダーだ。

陽貴さん、ああ見えて好きになるタイプかなり分かりやすい。

普段興味ない女にはほんと塩なのに、

気になった相手には無意識に距離詰める。

しかも独占欲強め。

王子様キャラでやってるけど実際はちゃう毒舌腹黒王子だし(笑)

おまけにそこそこの女嫌い。


「蒼依さん?」

「あ、すみません。ちょっと考え事してました」

「疲れました?」

「いや、むしろ元気出ました」

そう言うと薬剤師さんは不思議そうに笑った。

だって。

このドラマ、撮影裏のほうが絶対面白いから。



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